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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第8章 礎となりて

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第11話 魔王領④



「静かだね」

「ええ、少し不気味よ」

「まあ、ガルムスもホートも、特に何も無かったしな。静かなのは楽で良い」

「でも……」

「どうせまた魔獣は来る。そんなに固くなるな」


森の中を3人は歩いていく。元街道は雑草だらけで歩きにくいため、獣道のある森の中の方が良い。だがこの獣道を作るのが……まあそういうことで、襲撃は多かった。

なおソラが話した町は、3人が既に訪れた場所のことだ。獣都ガルムスとは、元々は獣人達が好んで住んでいた地域にできた町で、魔王に対して頑強に抵抗していたらしい。

また、坂都ホートは旧王都を含め主要4都市、他にもいくつかの町と街道が繋がった交易都市だった。

どちらももう廃墟と化していたが。


「……私を初心者みたいに言わないでくれる?警戒してるだけよ」

「魔力探知は俺とフリスも共有してる。口で伝える必要は無い」

「来たら分かるから、大丈夫だよ」

「……悪かったわね」


常にレーダーが頭の中にあるようなものだ。それに自身の感覚の一部となっていたのだから、注意を払わなくても気付く。今のように。


「まあ、最初はそうなっても……お?」

「あ、来ちゃったね」

「……私のせいじゃないわよ?」

「分かってる。数は27、それでこのサイズ……雷竜か」

「雷のドラゴン?」

「違うわよ?」

「ああ、そういう意味じゃない。前の世界では恐竜系の中で、特に大きなものを雷竜と呼んでたからな。ついそう言っただけだ」

「そう。それで、種類は分かる?」

「この魔力量ならCランクかな?でも……あ、後ろにまた出たよ」

「前はバウルザウルスだろうな。確か、背中の(とげ)を飛ばしてくるぞ。後ろの6体は……このサイズ、Aランクの二ブルザウルスだ」

「もう1体来たわね。この大きさだと……」

「Sランク、ヘルザウルスだよ」


全長30mの巨体を持つバウルザウルス、それを超える全長70mの二ブルザウルス。さらにそれすら圧倒する全長120mのヘルザウルス。これらの魔獣が現れたら、町などひとたまりも無いだろう。

だが……


「でも、大きいなら遅いわ」

「その通りだ」

「援護は任せてね」


この3人には関係無い。簡単に狩れる獲物でしかなかった。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「あったわね」

「ああ。案外近かったな」

「山を挟んで反対側だから、結構遠いよ」

「国内を考えればそうだな。つい3国も加えて考えてた」

「広すぎよ」


丘都バーティク。坂都ホートから東へ進んだ場所にあるこの町は、小高い丘の上にある館を中心に作られた町だった。領主は武人の家系だったらしく、館や城壁は特に実戦的で今なお崩れてはいない。

そしてここの近くで、シェーアと同じ種類の神殿を見つけた。


「こっちにもデーモンと結界はあるか……ただ、神気の雰囲気が少し違うか」

「そう?ここからだと分からないわ」

「わたしも。ソラ君は分かるの?」

薄刃陽炎(これ)があるからかもしれないが、何となくでは分かる。結界そのものはシェーアのものと同じみたいだからな」

「でも、入れば分かるわよね?」

「恐らくは」

「じゃあ……あれ?」

「フリス?」

「今何か……何だったのかな?」

「どうかしたのか?」

「ううん。ただ……」

「……漠然としていて言葉にできないのか?」

「そんな感じ。何だか、音が一気に大きくなったっていうか……」

「音が……波……三角波か?」

「さんかくなみ?」

「聞いたこと無いわね」

「海が身近じゃないからな。波が複数の方向から来た時、特定の条件を満たすと波の高さが大きくなる現象のことだ。それに近いんじゃないか?」

「う〜んと……そうかも」


現象の理由を考えることはできる。だが発生原因は分からない。そして問題は、それをフリスだけが感じたということだ。

結界を抜けつつ、話を進める。


「だが、その原因が分からないな。音と魔力では波は感じなかったから、考えられるのは神気だが……どこから来たのか……」

「あの神殿からじゃないの?」

「その方が考えやすそうね」

「だが……いや、証拠も無い今、考えても仕方ないか」

「何が?」

「進むぞ。結界を通り抜ける」

「ソラ?」

「……嫌な予感がする。2つの神殿と魔王城……何かありそうだ」

「え?」

「何か?」

「それが分からない。だが……」


推論すらできないことを考え込んでも仕方が無い。ソラはそう結論付けていた。


「さてと、手早く破壊するとするか」

「ねえソラ、私達にやらせてくれる?」

「まあ良いが……どうした?」

「試してみたいもん。どこまで効くか気になるから」

「なら任せる。やってみろ」

「ありがと」

「頑張るね」


2人は全力で神術を放ち、石柱を削っていく。途中から親の仇を討つかのような目になっていたが……神気を振り絞り、最後の最後に石柱を破壊した。


「はぁ、はぁ……ソラ、凄い、わね……」

「う、ん……疲れた……」

「まったく。そんな風になるなら早く俺と変われ」


打撃じゃないと簡単には壊せないぞ、という言葉は口には出さない。だがソラは疲労困憊のミリアとフリスに微笑しつつ、神殿から少し離れた所まで運ぶ。そして時間も経っていたので、その場所で夜営することとなった。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













「はあ、まさかここにも来るなんてな」

「結構削ったはずよね?」

「500は超えてるよね?」

「1000に届く可能性もあるが……まさか無尽蔵なんて言わないよな?」

「流石にそれはありえないわ」


砂都ルイーダ。砂漠と言うほどでは無いが周囲を砂に囲まれたこの町は、中央のオアシスを利用することで発展していた。位置的にも魔王城の予想地点よりは遠いため、元王国の中でもかなり遅い時期に陥落した場所だ。

だがここに、再び魔獣の大群が来る事態となっていた。


「それで、ダウリザードが約340、リザードが約210か」

「ドラゴンもいるよ。25頭と……あとエルダードラゴンも8頭だね」

「ドラゴンは土属性だけとはいえ、厄介ね」

「ああ。いくら滅んだ町とはいえ、完全に消し去るのはマズい」

「少しずつ倒すしかないよね?」

「俺達は建物に潜み、近くを通りかかった集団に奇襲をする。時間はかかるがこれしかないだろう。それに、これだけの規模と統率なら、指揮官として魔人がいてもおかしくない」


理由は分からないが、大規模な魔獣の群れにはほぼ必ず魔人がいる。そして魔人を討てばほぼ確実に勝てるのだ。


「それで、何処に行けば良いのよ?」

「そうだな……ミリアはここから前に2ブロック先の3階建の建物の3階に、フリスは右3ブロック先の劇場の屋根裏だ。俺の合図に合わせろよ」

「うん、任せて」

「ソラ、指揮も上手になってるもの」

「御託は要らない。やるぞ」


やはり指示を受けているのか、リザード達は半分を門の所にに残し、もう半数を2〜4匹のグループに分けて町の中に入ってきた。

数を生かすつもりのようだが……ソラ達にとっては逆に対処しやすい。


「ミリア、目の前のグループを殲滅したら2軒後ろに移動しろ。3匹のグループが2つ来る」

『分かったわ』

「フリス、2ブロック先のグループを魔法で殲滅、その後1ブロック左だ」

『はーい』


自身も狩りつつ、適切な指示を出す。それに(よど)みは無く、無駄も無い。門に残った集団が動く前に、別れた集団の半数以上が殲滅された。


『それにしてもソラ君、上手になったよね』

「何がだ?」

『指揮よ。最初はその場その場だったじゃない』

「確かに……ただ、俺が慣れたからとは思えないな」

『どういうこと?』

「確定では無いが……神気が関わっている気がする」

『え?』

「まだ漠然としてるけどな。ただ、何となく分かる」


そんな風に話していても、効率は落ちない。すぐに町中の残りも殲滅し終えた。


「次は積極的に仕掛けるぞ。フリス、領主の館から魔法を撃て。ミリア、隣の建物の大通りに面する部屋で待機、通った瞬間に通り魔的に殺していけ」

『分かったわ』

『うん。それで、ソラ君は?』

「俺はエルダードラゴンをやる。奇襲で殲滅するつもりだ」

『なら良いわね。頼むわよ』

「任せろ」


ソラの指示通り、2人は配置につく。そして合図と同時に始めた。


「狙って……撃ち抜いて!」


フリスは水魔法で1頭ずつ貫く。その精度は高く、反撃も受けない距離だが、撃っている場所は分かりやすい。罠なので良いのだが。

そんなフリスに引きつけられたドラゴン5頭、エルダードラゴン1頭を含む100近い群れは、ミリアの歓迎を受けていた。


「やぁ!」


横合いから飛び出した影によってエルダードラゴンが撃ち落とされ、リザードがぶつ切りになる。またダウリザードやドラゴンも同様だ。

門近くに残った魔獣も、別の場所を心配していられる状況では無い。


「数だけは多いな。だが……数だけだ」


ソラは右手に炎、左手に光を宿し、その密度を増やしていく。そして……


「消し飛べ!」


両手を合わせた。そうやって放たれた神術、解放された超圧縮プラズマ奔流は、門の外にいた群れの半分をかき消した。


「残りは約100、問題無いな」


そして残り半分へ向けて突入する。ドラゴンは8頭、エルダードラゴンが2頭残っているが、問題無い。


「はっ!」


大きく飛び上がり、頭上からエルダードラゴンを強襲する。1頭の首を斬り裂くとさらに跳び、ドラゴンの翼を割いた。

また魔弾を大量に降らせ、リザードやダウリザードを撃ち抜いていく。戦闘時間は短かったが……その跡地は死屍累々だ。


「流石ね」

「褒められるほどのことじゃない。それより、気付いてるな?」

「うん。隠れてるみたいだけど、外にいるよね」

「これね。斥候みたいだけど……」

「恐らく、本隊が後ろにいるんだろう。もう少しで報告に行くはずだ。それを追う」

「分かったわ」

「はーい」


ちょうどソラの神術に巻き込まれない位置にいたようで、魔人らしき反応が1人分ある。もしかしたら、ドラゴン達を引き連れてきたのはこいつなのかもしれない。

そしてその当人は監視されているとも知らず、動き出した。


「動いた。追うぞ」

「ええ。それにしても、何処に本隊はいるのかしら?」

「さあな。ただ、相当離れているのは事実だ」

「魔力探知に入ってないもんね」

「これだけ見晴らしが良いと、魔力探知より先に見つけられるかもしれないわね」

「それは無い、と言いたいが、巨大な魔獣がいるなら否定できないな」

「でも、先に見つけたよ」

「小さい奴らばかりだな。これなら簡単だ」


魔力探知に反応が出て、その後視界にもそれが入る。それは無数の鬼とそれを引き連れた何人かの魔人、そしてそれすら率いる2体の魔獣だ。このまま放置するわけにもいかない。

そう考えつつ3人が近づいていくと、片方が大きな声で叫んできた。


「はっはっは!オレは十二闘将のムサシ様だぁ!テメェが入り込んだ人間(ヒューマン)か!」

「ムサシ、ここに人間(ヒューマン)がいる時点で確定だろう。(それがし)は十二闘将が1人、コジロウ。恨みはないが貴殿らの命、貰い受ける」

「アシュラと鬼将軍か。厄介なのが出てきたな」


アシュラと鬼将軍、ともにSSランクの魔獣だ。SSSランク魔獣よりは弱いはずだが、十二闘将の名は伊達では無かった。実力はそれ相応のものがあるはず。


「どうだコジロウ!どっちが何人殺せるか競争しようぜ!」

「まあ、良いでしょう。人間(ヒューマン)狩りも悪くない」

「はぁ……その言葉、そっくりそのまま返してやる。ミリア、フリス、本気でやるぞ」

「ええ」

「うん」

「なーに、がぁ⁉︎」


だが、相手が悪い。アシュラはミリアによって6本の腕全てを切り落とされ、3つの顔もスイカかトマトのように切り裂かれる。また、鬼将軍もソラによって真っ二つにされた。


「消え去って!」


さらに鬼と魔人の群れへ向け、フリスの神術が狙う。風と雷を混合させた嵐によって、その集団は綺麗さっぱり消し飛んだ。


「フリスの神術、かなりの威力だな」

「時間を貰ったんだもん。これくらいはできるよ」

「頼もしいわね。でも、私はそういう派手なことができないから、羨ましいわ」

「そんなことは無い。ミリアだって……」

「他人の芝は青く見えるものよ。私も分かってるわ」

「そうか。なら良い」


羨む気持ちは誰にでもある。それを本人が自覚しているのなら、気にすることでは無い。それに、ソラはミリアのことを信じているのだ。


「それでソラ君、もう行く?」

「ああ。このままここに残っていたら、また来る可能性が高い。ここは待ち伏せには適さない地形だしな」

「そう。なら、早く行きましょう」

「そうだな」


なおこの戦いの余波で周囲の地形が滅茶苦茶になっているのだが、誰も気にしなかった。











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