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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第8章 礎となりて

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第9話 闇宮①



「暗いな」

「真っ暗だね」

「ここにいるのは闇の精霊王よ。当然と言えば当然ね」

「確かにそうか」


ソラ達が勇んで突入した先、真っ暗闇だった。光魔法を使っても、明かりは灯らない。

とはいえ封じられているのは視界だけなので、この3人にはあまり意味は無かった。


「さて、警戒しつつ行くぞ」

「でも、この中だと私は役に立たないわね。お願いするわ」

「いや、ミリアも活躍できる」

「どういうこと?」

「こういうことだ」


ソラの魔力探知と気配察知、ミリアの気配察知、フリスの魔力探知。ソラはこの3人の感覚をリンクさせ、知覚の共通化を成し遂げていた。

ここを凌ぐだけなら、ソラの魔力探知をミリアに送るだけでも良いかもしれない。だがこの神術は、若干の差異がある各人の感覚を上手く繋げることで、1人の時よりも高精度な探知を可能としている。


「凄いわね、これ」

「俺達だからこそできるものだがな。神気に繋がりがあるからこそ、こんな無茶苦茶なこともできる」

「じゃあ、わたし達には無理?」

「俺が親みたいなものだからってことか?」

「うん」

「そんなことは無いと思うぞ。繋がりは一方的なものじゃなくて、双方向のものだからな」

「なら、頑張れば私もできそうね」

「ああ」


難しいかもしれないが、不可能では無い。そう考えていなければ、ソラは別の答えを言っていただろう。

ただまあ、この場所でゆっくりする時間なんて無い。


「っと、来たな」

「本当だね」

「ええと……この感覚ね。覚えたわ」

「早く慣れてくれよ。それでこれは……シャドウ系か?」

「でも、大きいよね。ビックシャドウかな?」

「いや、7割は動きが遅い。それはシャドウゴーレムだろう」

「……ついていけないわね」


まあ、魔力探知での魔獣の判別は慣れが必要だから、仕方ない。ソラとフリスが先導し、魔獣のいる方へ向かっていく。


「残り100m、曲がってはいるが一本道か」

「ミリちゃん、分かる?」

「道は分かるけど……足下がどうなってるかは分からないわね。戦うには辛いわ」

「慣れてないなら、見ているだけでも良いぞ?」

「それは嫌ね。場所は分かるんだから、残りは私の問題なのよ?」

「そうか。なら、無理はするな」

「ええ」


ここはかなり足場が悪く、しっかり知覚していないと走るのも難しい。そんな中で出てきたシャドウ系の魔獣は、その名の通り体が影でできており、普通の物理攻撃は効かない。この暗闇も含め、普通なら厄介な相手だ。

だが魔法の攻撃は効くので、3人は気にしていなかったりする。


「しっ!はぁ!」


付加をかけた刀と魔法で、蹴散らしていった。BランクのシャドウゴーレムやAランクのビックシャドウ程度、ソラの敵ではない。


「行くよ〜!」


また、フリスは光らないながらも雷魔法を放ち、シャドウ達を貫いていく。速く動くことはできないシャドウ達は、ただの的でしかない。


「ここ、ね!」


ミリアもおっかなびっくりではあるが、双剣に神術で付加をかけ、シャドウを切り裂いていく。ソラとフリスは心配しながら見ていたが、問題は無さそうだ。


「何とかなりそうだな」

「ええ、どうにかできそうよ」

「じゃあ、一気に行っちゃう?」

「ああ。そのうちミリアも慣れるだろうからな」

「早く慣れるわ。置いていかれたくなんて無いもの」

「俺達が置いていくことなんて無いけどな」

「物の例えよ」

「分かってる。言ってみただけだ」

「ソラ君、ミリちゃんを怒らせないでね?」

「そうだな」

「ちょっと?」

「さて、続けるぞ」


ふざけた言い合いをしつつも、3人は順調に魔獣の数を減らしていった。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「しっ!」

「はぁ!」

「やって!」


暗闇の中を3人は駆け抜ける。魔獣が目の前から迫ってくるが、誰も気にしない。蹴散らすだけだ。


「フリス、右を頼む」

「分かった。前はお願いね」

「ああ、ミリア」

「ええ」


ソラの一閃がリーパーを斬り裂き、ミリアの双刃がムーンゼブラを切り刻み、フリスの魔弾が右の通路から来ていたダークセンチピードの群れを吹き飛ばす。


「ソラ君、アンデットだよ」

「結構な数だな……ミリア、大丈夫か?」

「ええ、あの時が変だっただけよ」

「なら良い。だが、俺がやるぞ」

「ソラ君の方が早いもんね」


アンデットはソラの光魔法によって消し飛んだ。Bランクのスケルトンライダーやメイジスケルトンにファントム、その2ランク上のデュラハンやリッチにレイスなど。多種多様なアンデットが襲ってくるが、3人に触れることはできないでいた。


「ふぅ……これで終わりか」

「そうみたいね。何も感じないでしょう?」

「うん、全然いないよ。でもミリちゃん、罠が全然無いけど大丈夫なの?」

「心配よ。でも、無いんだから仕方ないわ」

「暗闇だけでも十分な罠だ。それに、大掛かりなものは大抵魔力を使う。魔力探知に対して弱いからかもしれない」

「そうね。それが1番考えやすいわ」

「じゃあ、大丈夫なんだね」

「気を抜くのは駄目だが、心配する必要は無いだろう」


光が無いだけで、人の緊張感は大きく高まる。それはソラ達も例外では無く、緊張は精神的な疲労を溜め、失敗させやすくする。それを防ぐことも重要だ。


「っと、次か」

「これは……ドラゴンよね?」

「この大きさって、老竜(エルダードラゴン)?」

「恐らくな。他には……アークデーモンやヘルもいるぞ」

「SSランクばかりね。正念場かしら?」

「ああ。全て蹴散らす、良いな?」

「うん」

「ええ」


まだ距離があるため、3人は駆け出す。この距離でも魔法は撃てるが、魔力の消費が大きいためだ。


「俺がアークデーモンをやる。ミリアは老竜、フリスはヘルを頼む」

「確かにそれが良いわね。フリス、援護は任せるわ」

「うん。ソラ君、ミリちゃん、前はお願い」


前衛2人、後衛1人と分かれ、戦闘を開始する。魔力探知に慣れたミリアも、視界がある時と変わらない動きを見せていた。


「さてと……分かれててくれて助かった」


アークデーモンの共通点は肌が黒いことと人型なことくらいだ。性別だけでなく、性格や容姿も個体によって異なり、武器や戦い方も違う。

だからこそ、対応力の高いソラが相手取る。


「狙いが甘い!」


突き出される槍を避けると同時に体を一回転させ、短剣や短刀を持ったアークデーモンごと槍持ちを斬り裂く。さらに光魔法で後衛を貫くと、盾ごとアークデーモンを斬り飛ばした。

まだまだ多くのアークデーモンが残っており、SSランクだけあって抵抗もかなりのものが、その数は時間に比例して減っていった。


「多いな。でも、大丈夫だね」


ヘルは全身が黒い翼人のような魔獣で、高威力の闇魔法を使う。つまり、純粋な魔法対決を仕掛けてくる。

そして、それに最も長けるのはフリスだ。


「もっと行け〜!」


闇魔法を雷で打ち消し、風魔法でヘルの翼を()いでいく。さらに水魔法で頭部を潰し、近づくものから倒していった。抵抗もあるので簡単にはいかないが、順当に数を減らしていく。


「私も負けないわよ」


ドラゴン系の相手にも慣れてきたため、一切の危なげ無く対処していった。老竜の首や四肢は太いため1撃で切断はできないが、半分切るだけで動けなくなる。ミリアの速度なら、魔法や爪を避けて攻撃することも可能だ。

時折進路上のアークデーモンやヘルを切り裂きつつ、ミリアは群れの中を駆け抜けた。


「これなら行けるわね」


互いの線が交差するタイミングで協力しつつ、3人で魔獣の数を減らしていく。SSランクなので簡単にはいかないが、安定していた。

だが……


『あれ?……ソラ君!後ろ!』

「後ろ?……ちっ、アンデットか。しかもこの魔力と大きさは……ドラウグルとワイトだな。謀られたか」

『マズいわね。ソラ、頼める?』

「任せろ。ミリア、フリス、前は頼むぞ」

『ええ』

『うん、お願い』


背後から来るアンデットは約300体。全てSSランクだ。


「数だけ集めてもな」


ドラウグルの見た目は少し腫れた黒いゾンビのようだが、こいつは体を巨大化させられる。さらに念動力のようなものも使え、アンデットとしては素早い。1体だけでも相当厄介な相手である。

またワイトは闇魔法を使う普通の魔法使いのようだが、触れた相手を昏倒させられる。魔法も強力で、地上では災厄のようなものだ。


「光れ、唸れ、撃ち砕け。光波砲」


ソラは威力を高めるために短く詠唱を加えると、極太なレーザーを放つ。これにより半数近いアンデットがチリとなった。

そして薄刃陽炎に光を付加すると、群れの中に突っ込んだ。振るう度にチリが増えるものの流石はSSランク、すぐさま殲滅できるという程では無い。

そこで、ミリアから連絡が入った。


『ソラ、こっちに来れる?』

「まだ少しかかる。問題か?」

『ソラがいなくなっただけだけど、戦線を前に進められなくなったわ』

「その場で留めれてはいるんだな?」

『うん。ミリちゃんより後ろには進んで無いよ』

『前から優先してるから、何とかなってるわ。ソラが来れないなら、フリスに魔法を頼むけど……』

「そうだな、やってくれ。効率良くだぞ」

『分かった。でも、早く来てね』

「ああ」


ミリアとフリスの方もかなり減っている。時間を少しかけつつも、ほぼ同時に殲滅し終えた。


「お疲れ。大丈夫だったみたいだな」

「ソラ君の方が大変だったでしょ?」

「いや、光魔法でやれる分楽だった。もう少し早くやれば最後くらいは手伝えたかもな」

「そっか。じゃあ行こ」

「ああ。そうだミリア」

「どうしたのよ?」

「ボタンが外れてるから、直した方が良いぞ」

「え?」


ミリアがボタンのある場所を触っていくと、1ヶ所だけ布しかない場所があった。軽鎧(アルマーク)の下の、胸元のボタンだ。


「ちょっ……!」

「あ、本当だ。ソラ君良く気付いたね」

「少し注意を向けてみたら、中が見えそうになってたからな」

「見える⁉︎」

「いや、見えそうなだけだ。それに、俺達しかいないんだから問題無いだろ?」

「そういう問題じゃ無いわよ!」


指輪から糸と針と予備のボタンを出し、素早く縫い付ける。恥ずかしがって顔を真っ赤にしているというのに、暗闇で普段と違うというのにとても正確だ。

ただ、ミリアは気付いていなかったが、ソラもフリスも笑っていた。最近はミリアを揶揄(からか)えることが少なかったからかもしれない。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「やっと着いたわね」

「実感は湧かないけどな」

「光なんて全然無いもんね」

「ここまで目を使わないダンジョンも珍しい。というか、他に1つだけか」


闇宮への突入から十数日が経ち、ソラ達はようやくボス部屋の前へとやってきた。魔力探知があるため探索はできていたが、視覚が無いせいで時間がかかっている。

また、目を使わない代わりに他の感覚は酷使していたが、3人にとっては微々たるものだったようだ。


「それで、私達がやれば良いのね?」

「ああ。俺ばっかりやるのもアレだからな」

「大丈夫かな?」

「危なくなったら助ける。好きにやれ」

「うん……うん、分かった!」

「ええ、行ってくるわ」


ソラが扉を押し開け、2人が突入する。その先では薄いとはいえ光が満ちており、中央には真っ黒な古竜(エンシェントドラゴン)が陣取っていた。


『他の者達を敗りし、我が主となりうる者よ。我と争うことを望むか?』

「残念ながら、お前の相手は俺じゃ無い」

「私達よ」

「がっかりした?」

『問題無い。主の伴侶もまた主、全力でお相手しましょうぞ!』


翼を広げ、魔力を練り上げる古竜。ミリアとフリスもそれに対抗して魔力を、そして神気を練り上げていく。


「さあ……行きなさい!」


ミリアは双剣(ルーメリアス)に光を付加すると……何も無い場所で振るった。だが付加された光が半月状となって飛び、古竜(エンシェントドラゴン)の右後ろ足を半分切断する。


「わたしも……行っちゃえ!」


さらにフリスも頭上に巨大な光を生み出し、2つに分けて飛ばす。それらはミリアに気を取られていた古竜(エンシェントドラゴン)の両翼に着弾し、炸裂して全ての翼を消し去った。

使ったのは2人とも神術だが、それぞれに方向性の違いが出ている。これにはソラも興味深そうに見ていた。


「初めて使ってみたけど、威力はまだまだね」

「わたしも、予想より弱かったかな。もうちょっと強くしても大丈夫だね」

「確かにそうだな。その辺りの扱いは慣れていけ」

「ええ、勿論よ」

『ぐぬ、この!』

「ミリちゃん下がって!」


そのミリアが飛び退いた瞬間に、古竜からブレスが放たれた。それはミリアにかわされたもののフリスへ迫っていたが、彼女の出した神術、白磁の壁によって防がれる。


『何だと⁉︎』

「お返しだよ!」


そしてフリスは大きな白い炎を放つ。古竜はそれを避けるものの、指が1本触れただけで四肢の内2本を失った。


『なっ、これは!』

「終わりよ」


そして、ミリアに頭部を切り刻まれる。神気の込められたには敵わないらしく、それだけで古竜は体を崩し、魔力へと消えていった。


「良くやった。それにしてもミリア、飛ぶ斬撃(アレ)はいつの間に使えるようになったんだ?」

「気付いたのは土宮の時よ。ただ、その時は1歩分も飛ばなかったわ。神気の操り方もそうだけど、かなり練習したわね」

「その割には、俺はそれをほとんど見てなかったぞ?」

「少しくらいはソラを驚かせたいもの」

「なるほど」


神気や神術というものは、魔法よりもさらに感覚的な面が強い。神気の操作が問題であるなら、ソラから隠し通すのも十分可能だ。


「それに、フリスは高威力の神術も使えるようになったみたいだな。今のは範囲を抑えてたみたいだが、上手い」

「うん。わたしは雷宮の時だったけど、神気が少なかったし、制御も大変だったから練習だけだったんだ。でも、これでソラ君と一緒だね」

「まあ元々、魔力の制御はフリスの方が上手かったからな。純粋な神術勝負だと勝て無さそうだ」

「そんなことないもん。ソラ君、わたしじゃ真似できない魔法だって作ったじゃん」

「攻撃系はほぼ全てコピーされたけどな」

「それはそうだけど……でも、神術だと違うかもしれないよ?」

「確かに。なら、競争だ」

「うん!」


そんなやりとりをしつつ魔水晶を回収し、反対側へ向かう。そこにある最後の扉を開けると、そこには黒い人型が立っていた。いや、全身真っ黒なだけでちゃんと人だ。


『ようこそ。私がここ闇宮を任せられた精霊王、ハデスだ』

「知ってると思うが、俺はソラだ」

『ああ、知っている。中級神と成られたようだがな』

「中級神?」

『その通りだ。ソラ様は中級神、ミリア様とフリス様は下級神と成っている』

「わたし達も?」

「自覚は無いわね」

「ミリアとフリスには何の予兆も無かったぞ?」

『それは御二人が従属神に近い特性を持っているからだろう。独立した存在とはいえ、長らく共にいたのだ。先に成ったソラ様の影響が無いとは考えづらい』

「そうなの?」

『そうだ』

「分かりにくいわね」

『いや、御三方が珍しい。普通であれば、従属神以外でこのようなことは起こり得ない』

「どういうことだ?」

『そのままの意味だ。他の神にとらわれることの無い、通常の下級神に成る場合では、自覚できる程度の何かが起こる。それが普通だ』

「なら、何で私達には無かったのよ?」

『それが分からぬから困っているのだ。少なくとも私は聞いたことが無い』

「誰かに聞かないの?」

『私が知らぬということは、他の精霊王も知らぬ。他にいるのはあの方だけだが……答えるわけ無いだろう』

「まあ、確かにな」


オリアントスのぐーたら具合は半端では無いようだ。ハデスの目は言外に、諦めを伝えていた。そしてそれにはソラも同意する。


「さて、俺達は休むつもりだが、良いか」

『勿論だ。むしろ、配下である私達のことは気にしないでほしい』

「配下って言われても難しいわね。そんな風に思ったこと無いもの」

『変える必要は無い。今のままで良いだろう』

「それで良いの?」

『ああ。我らは支えるのであって、命ぜられなければ動けないというわけでは無い。生みの親ならまだしも、他の方々が変に意識をする必要は無いだろう』

「なら、そうさせてもらうか」


ここで数日休んだソラ達は欠片を貰い、また十数日かけて地上へ戻っていった。













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