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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第8章 礎となりて

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第3話 森都エシアス③



「まだまだこれからだぞ?」

「もう、無理、です……」

「確かに……魔力の扱いも雑になってきたか。分かった、休憩だ」

「ありがとう、ございます……」


ソラがそう言うと、マイリアは地面へ倒れ込むように座った。というか、崩れ去ったという印象の方が強い感じだ。

この辺りは昔何かあったのかこの周りだけ木々が無いが、稽古にはちょうど良い。ソラは初日からずっと使っていた。


「精霊との意思疎通ができてきたみたいだな。反応が良くなってる」

「そうでしょうか……?」

「ああ。声もサインも使ってないようだが、送る魔力を工夫してるのか?」

「はい。魔力を送るリズムを変更して、区別できるようにしております。まだ攻撃か防御かしかできませんが……」

「この短期間でそれだけできるか。見込んだ通りだな」

「……ありがとうございます」


厳しいとはいえ、褒められて悪い気はしない。マイリアは疲れているものの、笑顔を浮かべていた。

ただ、この時間にもソラは何かしたかった。まあ、すぐに思いつくのだが。


「ミリア、フリス」

「何なに?」

「どうしたのよ?」

「マイリアに1回見せた方が良いと思うか?」

「そうね……模擬戦じゃなくて魔獣相手でも良いけど、1回見せた方が良いでしょうね」

「わたしはいつでも良いよ」

「じゃあ、今からやるか」


いつものことだが、模擬戦を見せるとなると反応は面白いことになるだろう。だが、マイリアはまだ予想できない。


「何をなさるおつもりですか?」

「俺対ミリアとフリスの模擬戦をする。見逃すなよ」

「……え?」

「本気だとこの辺りが焼け野原になっちゃうから、手加減して?」

「火力は、だな。スピードは手加減無しで良い」

「はーい」

「それで良いわ」


普通に考えて、こんな風に言われても誇張にしか思えないだろう。この3人が例外すぎるのだ……ミリアとフリスもソラに引きずられてバグキャラみたいになってしまったが。


「じゃあ、始めるぞ」


1対2に分かれ、対峙する3人。マイリアが見ているので神術は使わないが、それでも一般人から隔絶した戦闘になる。


「いっけー!」

「落とせ」


フリスの放った数百もの魔弾は、同じく数百の闇弾によって消し去られた。


「はぁ!」

「甘い!」


そこへミリアが突っ込むも、手甲で上手く斬撃をそらされ、反撃を避けるために下がらざるを得なくなる。


「凄いね」

「ええ。対応が早いわ」

「まだまだこれからだぞ?」

「うん。知ってるよ」

「分かってるわ」


ソラの放つ黒い水と黒い風を避けながら、ミリアとフリスは反撃の手を打つ。フリスは新たな魔法を用意し、ミリアは周囲を走りながら隙をうかがう。


「来ないと終わらないぞ?」

「ラチがあかないわね……フリス!」

「うん!」


フリスの放った炎弾は白雷に撃ち抜かれ、水弾は土弾によって散らされた。そして雷嵐は闇に呑まれる。

だが、これは囮だった。


「いっくよー!」

「……無茶苦茶だな」


フリスは巨大な炎の狼を作り出し、突っ込ませる。そしてソラは巨大な水球で迎撃した。ただ、炎を水で迎撃したため……


「くっ」

「わぁ!」


水蒸気爆発が起きる。魔法で作った炎と水なので爆発の規模は比較的小さいが、込めた魔力が多いため爆風も大きかった。

そして最初から備えていたソラは当前だが、フリスも咄嗟に風の壁を出し、爆風を受け流す。


「ちっ、予想以上だ」

「ソラ君、なんで水魔法で迎撃したの?」

「何かあるかと思ったからだ。それにしてもあの炎の狼、魔力の割に動きは遅いし威力も低いな」

「うん。作ってみただけだもん」

「ならなんでこんな時に使ったんだ?」

「なんとなく。でも……隙はできたよね?」

「っ⁉︎」


その瞬間、ソラの足下から高圧水流が噴き出した。ソラはギリギリで避けたが、フリス達のターンは続いている。


「待ってたわよ」


避けるために大きく動いたソラへ、背後からミリアが襲いかかった。


「やらせるか!」


だがソラは風魔法まで使って反転、双剣の片方を薄刃陽炎の鍔で受け、もう片方は左手で手首を掴むことによって止める。

そしてソラは蹴りを放とうとするもミリアも慣れたもの、すぐさま振りほどいて距離を取った。


「上手にいったと思ったのに……」

「そういう魔法の使い方もあるのね」

「流石にあれは危なかった。フリス、上手く魔力を隠してたな」

「でもバレちゃったよ?」

「ギリギリだったからあまり変わらない。打つ手次第だと、俺も負けてたかもしれない。ミリアも、気配を消して余波の魔力に隠れるのが上手かったな。フリスに気を取られていたとはいえ、一瞬見失ったぞ」

「それでもアレだけ反応できるんだから、まだまだよ」

「そうでもない。俺も危なかったからな。それで、どうだ?」


ここで3人は見学者の方に目を向けてみる。すると予想通り、マイリアは呆然としていた。


「あの、ソラ様……?」

「何だ?」

「何があったのでしょうか?」

「見えてなかったのか?」

「いえ。ですが、早すぎるというのも……」

「魔法使いでも早さに慣れることは必要よ」

「見えてないと支援できないもん」

「それは分かっていますが……」

「まあ、俺達は遅くするつもりは無い。ついて来れるようになれ」


全力だとこれより早いのがこの3人の恐ろしい点だ。だが、今それを出すつもりは無い。


「さて、続けるか」

「ええ。今度はソラから来て良いわよ」

「さっきはわたし達からになってたもんね」

「それじゃあ……遠慮は無しだ」


そう言ってソラは構えを変える。刀は体の横で振りやすいように、前傾姿勢に移りやすいように。


「久しぶりに使うな……水無月」


そして駆ける。そのスピードは以前より圧倒的に早い。


「きゃっ!」

「わっ⁉︎」


それを蓮月と合わせると、まだ成長するソラの技量によって手のつけられない次元になっていた。

さらに魔力操作と光魔法も併用することで、囮やタチの悪い残像も作っている。それにはミリアとフリスも敵わず、ソラがワザと外している攻撃にも反応できていなかった。


「フリス、やりなさい!」

「え、でも」

「良いわ。やらないと勝てないもの」

「うん……行くよ!」


フリスは使える限りで最大の魔法、火と風と雷、その3属性の大量の魔力を混ぜ合わせたものを頭上に準備する。だがそれは保持されたまま、Sランク魔獣1体分以上の魔力になってもまだ増え続けていた。


「何を……ってやり過ぎだろ!」


それを見てソラは足を止め、闇魔法を全力で使って抑え込みにかかる。フリスより遅くなったが魔力を一気に放出し、巨大な闇球を作り上げた。その時はミリアにとって攻撃する格好の好機だが、何故か動かない。

そして放たれた2つの魔法が衝突し……


「はぁ、はぁ……何とかなったか」

「あ〜、止められちゃった」


綺麗に消し去られた。まあ、あれが着弾していたらとんでもない被害になるので、これで良かったのかもしれないが。


「……ソラ?」

「ん?どうした、ミリア」

「何で私は捕まってるのかしら?」

「魔法を抑えた隙に何かやられたら敵わないからな」


ミリアは両足どころか腰まで岩に覆われ、捕らわれていた。ソラはかなりの魔力を込めたようで、スピード型とはいえ高出力の身体強化を使いこなすミリアでも破壊できなかったようだ。


「フリスがアレを使うまでは手加減してたじゃない」

「水無月の時は2人の対応を見るためだったからな。ただ、あそこまでいくとそんな余裕は無い」

「じゃあ、わたし達が強かったから?」

「ああ。これだと、俺の圧勝とは言えないな。辛勝ってところか」

「ん〜、そっか」

「まあ、それなら良いわ」


ある程度反省会のようなものができたところで、3人は傍観者に話を振った。


「さてマイリア、こんな感じだ」

「分かりません」

「え?何で?」

「凄すぎて参考になりません。参考にしようがありません」

「まあ、そうかもしれないわね」

「だが、将来的にはやってほしいことだ。ここまで来れるかは分からないが、近いレベルにはなるだろう」

「そう言われても……無茶苦茶ですから」

「自覚はある」


ただ自覚はあっても、ソラ達は直さない。素質ある者に上を見せることは有用なのだから。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「さて、準備は良いか?」

「はい。勝てるとは微塵も思っておりませんが、学んだことをご覧に入れたいと思います」

「その姿勢は感心しないな。勝つ気で来い」

「はい」


マイリアを弟子にとってから10日ほどした頃。ソラは最終試験代わりの6対1のパーティー対個人を行うことにした。普通なら無謀なのは1人の方だが、今回は逆だ。ソラ達は1人でも過剰戦力なのだから。

なおマイリア以外は、ソラの放つ殺気と魔力に飲まれている。マイリアは慣れたため大丈夫なようだ。


「先手は譲る。好きに来い」

「ありがとうございます……皆さん、大丈夫ですか?」

「そ、そうですね……」

「まあ、あの……」

「嘘……」

「そ、その……」

「ええと……」

「簡単に飲まれ過ぎだ」


まあ、彼女達にとってソラは格上どころでは無い。こうなるのも仕方のないことだ。


「……行きます」

「来い」


5人を落ち着かせたマイリアが宣言すると同時に、彼女達は動く。

魔法使い3人は魔力を練り、ミールはその盾となった。そして、シェリアとルリーシェが突っ込む。


「行く」

「やぁぁ!」

「単調だぞ」


だが2人の目の前に、地面から岩でできた六角柱が飛び出した。1本目は単調だったため2人とも避けるが、それを囮にした残り5本ずつによって閉じ込められる……はずだった。


「無策に突っ込んでは的になるだけですよ」

「流石に魔力があれだけだと精霊の方が強いか」


だが真後ろの1本だけは途中で抑えられてしまい、その隙に2人は脱出する。それは勿論マイリアの、正確には契約している土の精霊ガルメの魔法によるものだ。


「ラメリア、ガルメ、フルーダ」

『承知した』

『はーい』

『いえーい』

「私たちも!」

「撃ちます!」


さらに反撃で、3人と精霊達は多種多様な魔法を放っていく。だがそれらは……


「焼き払え」


ソラの展開した黒炎によって全て焼き払われた。さらにソラは空から巨石を落とすも、これはマイリアの結界によって防がれる。そこでマイリアは光弾や風弾を放つも、ソラの炎弾や雷弾に撃ち落とされた。


「良く防ぐな」

「ソラ様の教えは厳しかったですから。お忘れですか?」

「忘れるわけ無いだろう」


そしてそのまま、ソラとマイリアの魔法合戦となる。他の面々も攻撃を仕掛けようとするが、すぐにソラに撃退されマイリアに助けられるため、もう手出しはしていない。

というか、制限をかけているとはいえソラについて来られるマイリアの方が凄いのだ。


「……変えるか」


とはいえ、これでは千日手で実力は測りづらい。そこでソラは狙いを変え、先にマイリアのパーティーメンバーの方へ魔法を放っていった。


「えっ、嘘」

「逃がさん」


火魔法で追い込み、風魔法で勢いを落とし、土魔法で足を止め、雷魔法で気絶させる。まず1人、シェリアがリタイアした。

だがそれて終わるわけが無い。


「キャァァ!」

「あっ⁉︎」

「レミーナ!ルリーシェ!」

「よそ見をするな」


さらに残りの2人も順次雷魔法の直撃を受け、リタイアしていく。マイリアはそれを防ごうとしたが、ソラの攻撃は止まることなく、自分へ向かう魔法の迎撃と防御に専念するしか無かった。


「まだ同時に対処するのは無理か。精霊術師だからこその弱点かもな」

「どういうことでしょうか?」

「精霊に対して送る魔力を分けることは難しいだろ?通常の魔法なら慣れれば同時展開もできるが、精霊術師は難しいだろうってことだ」

「確かにその通りです。そういう考え方もあるのですね」

「だが、これは克服すべきことだ。分かってるな?」

「はい」


そう言った後、ソラは頭上に巨大な雷と光の魔力塊を作り出す。その魔力はマイリア1人分に匹敵するほどだ。


「それで、これは防げるか?」

「どうにか……いえ、防いでみせます」

「その意気だ」


だがそれを見ても、マイリアは退かない。ラメリアに大量の魔力を渡し、城壁のような光の壁を作り出した。

そしてソラは巨大な白雷に変換して放つ。光の壁はそれを正面から受け止め……防ぎ切った。


「防御は申し分無いな。後は……」

「え?きゃ!」

「見せ札と本命の区別をもう少しできるようになれ」


が、足下から伸びた石の蔓に捕らえられ、さらに闇魔法に包まれる。直接的な害は無いタイプだが、これでもう魔法は使えない。


「負けてしまいましたか……」

「合格だな」

「え?」

「あと必要なのは経験だ。俺が教えることはもう無い」

「……あ、ありがとうございます」


マイリアから見れば完敗だが、ソラからすれば試験。どれだけ実力を示せれたか、どれだけ工夫したかで評価をする。勝ち負けなんて関係無い。

まあ、試験をする段階でもう認めてるようなものなのだが。


「あの、わたくし以外は……」

「パーティーメンバーには自分で教えろ。どうすれば良いかは教えただろ?」

「知ってはおりますが……教えてはいただけないのですか?」

「俺達にも都合があるからな。1回なら良いが、2回目となると難しい。時間に余裕があるわけでもないしな」

「そうでしたか……」

「マイリア、お前なら教えられるはずだ。頑張れよ」


即答こそしなかったものの、ソラに認められたのはマイリアも嬉しいようだ。教えるのは大変だが、ソラは頑張ってもらいたいと思っていた。


「さて、明後日には町を出る。稽古はまた会えた時にしてやろう」

「その時はわたしにもやらせてよ」

「そうね、私達とやるのも良いと思うわ」

「手加減ができるならな」

「できるよ!」

「ヒカリの時、できてたか?」

「……ごめんなさい。できて無かったわね」

「いや、良い。半年か1年もすれば、2人でも問題無く相手できる程度にはなっているはずだ」

「……それは、褒めていらっしゃるのでしょうか?」

「褒めてるぞ」


話が尽き、5人が目覚めるにはもう少しかかったのだが。












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