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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第1章 異世界放浪記

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第15話 鬼の間①

「さて、行くぞ」

「ええ」

「頑張ろ〜」


王城を訪れた2日後、ソラ達は王都ハウルの側の森の近くにあるダンジョンへと来ていた。

昨日はギルドでこのダンジョンの情報を集めたり、ダンジョン攻略に必要な物資を買ったりしていた。

ちなみに、不要な物は宿に預けてある。ダンジョンのある全ての町では、少しのお金で荷物を預けるサービスがほぼ全ての宿にあるそうだ。


「ダンジョン名は鬼の間、出現魔獣は大半がゴブリンとコボルトで、時折オークとオーガか。ボスも分かってたよな?」

「ええ、ここは既に踏破されてるわ。ボスは上位のゴブリンとコボルトが3体ずつ、オークとオーガが1体ずつだってね」

「わたし達には簡単だよね」

「油断はするなよ」


この場の見た目は、洞窟の入り口周辺に小屋やテントが集まったような状態であり、冒険者相手の商売をしている店だらけである。

魔獣への対策のため兵士の詰所もあるが、この場にいる人は一部の冒険者を除けば夜になるとハウルへと戻る。立地の影響で村までは発展しなかった。

そんな中を通り、3人は洞窟のようなダンジョンの入り口を通った。


「本当に中もそのまま洞窟なんだな」

「何を期待してたの?」

「中だけ城みたいに綺麗な感じだったら面白いなって思ってたんだ」

「もしかしたら、そんなダンジョンもあるかもね。因みに、魔獣っていないの?」

「えっと……魔獣の反応は無いな。他の冒険者ばっかだ」


ダンジョンの中は明るい。天井や壁の上部から光る石が顔を出しており、不自由しないぐらいの明るさは確保されていた。ただし、完全に見通せるのは50mも無い。

洞窟ではあるが道幅は意外と広く、3人なら横に並んでも余裕で戦えるほどだ。道も直線ばかりであり、ソラには分かりやすかった。


「そこまで分かるの?」

「この間、直接魔力を知覚出来るようななったからな。正確性は上がってるし、範囲も少しは広がったよ。魔力の形から魔獣か冒険者かの区別も出来るしな」

「……そんな簡単に言わないでよ……探知魔法自体難しいのに魔力探知なんて……」

「あーと……フリス、大丈夫か?」

「……暫くすれば戻るわよ。それじゃあ、下への階段を探しましょうか」

「そうだな。行こうか」


そのまま3人は奥へと進んで行った。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「……ようやく敵だ」

「どこ?」

「ここから……前方100m、右に20mの位置だな」

「ここの繋がってるよね?」

「それは大丈夫だ。音の方もちゃんと聞こえる。数は13、サイズ的にゴブリンかコボルトだ」

「できるだけ音をたてないように進みましょ。他のまで寄ってきたら嫌だし」

「そうだな。進んでる方向はこっちと逆だから、上手くいけば奇襲できる」

「じゃ、そうしよっか」


階段を2つ降りた先の第3階。ソラ達の100m先にあったのは、右への通路。そこまで移動すると、その奥の魔獣をギリギリ視認できた。


「いたな。コボルトか」

「そういえば、最近はイーリアの近くからいなくなってたわね」

「久しぶりだよね」


薄暗く、比較対象が無いので詳しくは分からないが、恐らくはゴブリンより少し大きな体。全身は毛で覆われ、頭は犬というより狼のようである。武器らしき物は何も持っておらず、一団となって進んでいる。


「洞窟内で無風だから、まだ気付かれて無いのか……時間の問題だろうがな」

「どうするの?」

「臭いだったら、細かい位置までは分からないはずだ。ここから魔法を放ってこっちに誘き寄せてから、確実に殺す」

「じゃあ、わたしがやるね」

「今殺すなよ。魔水晶が出た時に回収するのが面倒だ」

「分かってる分かってる」

「お願いね」


フリスがコボルトの群れの直ぐ後ろにアクアボムを撃ち込む。すると、ソラの目論見通りコボルト達は急いで走ってきた。

3人は元の通路の壁際に集まり、コボルトを待つ。


「来た来た」

「私とソラで撹乱するのよね?」

「その後、わたしが魔法で殲滅するんだよね?」

「合ってるぞ。タイミングは……3……2……1……今だ!」


号令と共にソラとミリアが突撃する。群れの両側を通りつつ攻撃し、注意を自分達へ向けた。

完全に2人に気を取られたコボルト達へ、フリスが大量の風槍を放つ。


「おっと、こいつまだ生きてるのか」

「あれ?殺しきれてなかった?」

「全身傷だらけなのに何で生きてたんだか」

「放って置いても死んでたわよ。あ、ソラ、出たわよ」

「お、ラッキー、魔水晶だな」


倒してから少し経つと、コボルト達の死体は消え、その場所に1つだけ物が残った。それは直径3cm程の白く濁った球で、危うくソラは見逃す所だった。


「こんな魔力の塊を見逃すなんてな……精進精進」

「これ以上強くなってどうするのよ?」

「強くて何か悪いことでも?」

「……無いわね」

「……だね」

「だろ?」


拾い上げた魔水晶を腰につけたポーチに入れたソラは、直ぐさま顔を上げ真剣な表情となった。


「どうしたの?」

「……入って来たぞ」

「どこ?相手は?」

「ここからだと……前方50m、左に90mって所だな。数は……1?」

「それならオークかオーガよね」

「そうだね。ソラ君、早く行こ!」

「分かった分かった。こっちだ」


他に取られぬよう、駆け出して行く3人。何度か曲がった先に、獲物を見つけた。


「オーガか」

「ソラ、行ける?」

「当然」

「じゃあ、任せるね」

「任された!」


身体強化の出力を上げ、一気にオーガへと近づいていくソラ。気づかれる前に首を斬り、火矢を5つ突き刺した。


「あ〜……本当にランダムなんだな……」

「そういう仕組みみたいだしね」

「でも残念だよね」


オーガの死体が消えた後、その場には何も残らなかった。

普通の魔獣で魔水晶が残るかどうかは完全なランダムであり、群れを殲滅しても1つも貰えない事もあれば、2個3個と手に入る事もあるそうだ。

因みに、ダンジョンの最奥にいるボスは必ず1つ残すらしい。


「気にしてても仕方がないか。次に行こう」

「早く階段を見つけましょ」

「地図が使えないのは不便だよね……」


ダンジョンは日々少しずつ変化していく為、自分の足で道を探さなければならない。

ソラ達はそれをふまえ、急ぎ足で通路を通っていった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「大分進んだな」

「え〜と……9階降りたよね?」

「そうね。随分と早いわ」

「そうなのか?」


ダンジョンの中では時間が分からないが、丁度今は夕方である。

3人は第10階の途中辺りの行き止まりの部分で、野営の準備をしていた。


「普通ならこの半分も進めないらしいわよ」

「こんなに早いのって凄いんだよ〜」

「このペースなら割と直ぐに終わりそうってことか。……ボスを倒したなんて言うと面倒なことになりそうだが……」

「そうね……そこは誤魔化しておきましょ」


野営の準備といっても、テントを建て、寝袋などを広げ、食事の用意をするだけだ。すでに結界は張ってある。

暫くすると、料理が出来上がったーーミリアの手によって。


「ミリアって、結構料理上手いんだな」

「どう?美味しい?」

「ああ、味付けも抜群だ」

「良かった。ソラの魔法のお陰でできたようなものだけどね」

「あれは凄いよね〜」

「他に誰もいなかったら、自重する必要も無いしな」


ソラはミリアが調理している時、魔法で水を出したり、火を起こしたりしていた。この世界では考えられない様な魔法の使い方だ。

そのお陰で固い保存食だけで無く、肉や野菜を入れたスープも飲めている。2人からしたら、ソラ様々といった所か。


「ねえソラ?」

「どうした、ミリア?」

「ソラの目的って何?」

「俺の目的?」

「あ、気になる気になる〜」


ソラのオリアントスとの関係を知らない2人は、気軽に聞いてくる。

ソラはそこまで考えた事が無かったので、少し悩んでいた。


「そうだな……強くなって好きなように生きる事かな」

「それだけ?」

「今の所はな。自由に生きたいっていう感じだ」

「ふ〜ん、そんなものなんだね」


(ま、本当はあのクソ神を殴り飛ばす事だけどな)


この世界へ無理矢理連れてきたオリアントスへの軽い復讐を、改めて確認したソラであった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「おっ、これは」

「え、宝箱?」


野営後のダンジョン第16階。所々にある小部屋の1つでソラが見つけたのは、幅50cmの宝箱だ。

一辺が3m程の部屋の真ん中に置いてあり、不自然ではあるが、危険は無さそうだ。


「意外とデカイし、期待できそうだな」

「ソラ君、待って!」

「ん?どうし、おわっ⁉︎」


ソラは1人で部屋へ入っていき、宝箱を開けようとしたが、フリスの声で止まる。その瞬間、宝箱から牙が生え、ソラへと飛び掛った。

ソラは仰け反ってギリギリ回避する。


「な、何だよこいつは⁈」

「ボックストラッパーね……宝箱に擬態する、ダンジョンにしかいない魔獣よ」

「ここには殆どいないって話だったのに……」


ボックストラッパーは箱の下にあるバネを使い、最初の勢いを無くさないようにしながら、部屋の中を飛び跳ねている。

そして入り口の所に立っているソラへと飛びかかってきたが……


「はぁ……大人しくしてろ!」

「うわ〜……」

「やり過ぎよ……」

「そうか?」


ソラはボックストラッパーを下から蹴り上げ、天井へとぶつけた。その衝撃で箱は砕け、バラバラになって降ってきた。


「お、魔水晶だな」

「……色々と規格外ね……」

「……そうだね……」

「じゃ、行こうか」


落ち込んでいるミリアとフリスを気遣う事なくソラは提案し、3人は再び階段を目指して歩いていった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「おいおい、マジかよ……」

「何?」

「どうしたの?」


もう一度野営をした後の、ダンジョン第25階の半ばほどの十字路。いきなり立ち止まったソラに、ミリアとフリスは声をかける。


「……四方全てから魔獣が来てる……全て100以上だ……」

「「え⁉︎」」

「しかも、多分4種混合だな……何でこんなことに……」

「で、どうする?どこか1ヶ所を突破する?」

「無理だ。どんどん数が増えてる……洞窟じゃなきゃ他にやりようはあるんだが……」

「4方向からだと止めきれないよ!」

「……ここの通路を少し進もう。前から来るやつらは2人でやってくれ。後ろは俺が何とかする」

「大丈夫なの?そっちは3倍だけど」

「同時に来れる数は限られるからな。それよりも急ぐぞ、もうすぐ来ちまう」


ソラ達が入っていった通路は魔獣の登場するタイミングが遅かった。ソラは魔力探知で魔獣の位置を把握しながら、双方からの距離が大体同じ場所に陣取る。


「……大規模魔法を使えないのが悔やまれるな……」

「でも、出来る限り数を減らそうよ」

「フリス、タイミングを合わせてウォーターカッターを放ってくれ」

「分かった〜」

「その後はデカイ奴を優先的に倒せよ。ミリア、フリスを守ってくれ」

「勿論よ。傷一つつけさせないから」


この間にも、魔獣の群れはドンドン近づいて来ている。

100mをきり、朧げながらも見えるようになり、はっきりと見え、十字路で3方が合流した瞬間ーー


「今だ!」

「いっちゃえ!」


強烈な水流が2つの群れを襲う。

ゴブリンの首の高さに合わせたウォーターカッターは、高い水圧により次々と魔獣を貫き、切り裂いていく。

しかしながら、双方合わせても100体程倒せた程度だった。


「よし、行くぞ!」

「フリス、任せたわよ!」

「やっちゃえ!」


ソラは次々と魔法を放ちながら、刀で斬り裂く。ミリアも双剣で斬り裂いていき、フリスは魔法を使う。

1人と2人という違いはあるが、戦い方はそっくりであった。


「ふっ!はっ!どぉりゃぁ!」


ソラは風の槍をメインに魔法を放ちつつ、薄刃陽炎を使って斬っていた。

回し蹴りをゴブリンへと放ち、勢いを保ちつつ折った首を足場にして跳び上がり、オークの頸動脈を斬り裂く。落下の間に魔法を30以上も放ちつつ、真下のコボルトの首へ着地し殺す。オーガの振った棍棒を躱して魔法を撃ち込むと、近くのゴブリンを蹴り飛ばしてオークの顔に当て、攻撃を外させる。その間にも何体もの魔獣を斬り殺していた。


「ハァァァー!」

「いけー!」


ミリアとフリスは組んでいる時間が長い為、コンビネーションが上手い。

ミリアは双剣で斬り裂きつつ、魔獣を足場にする事で行動を阻害し、自分に集まるようにしている。

フリスはそんなミリアの動きを先読みし、ミリアの後方から攻撃を加えようとするものや、ミリアが攻撃出来ない所にいる魔獣を正確に撃ち抜いている。


「くっ、そっ、が!」


しかしながら、数の暴力は凄まじい。特にソラの方は少しずつ押されていた。


「うぜぇ!ホーリーレイシャワー!」


ソラが普通の近接職ならやられていただろう。

しかし、ソラは左手を掲げて複数の光球を放ち、無数の光線が魔獣へと降り注ぐ。その内の幾つかは後方へと向かっていった。

魔獣の群れは途切れ、ソラ達は背中合わせで合流する。


「ああ……やっちまった……」

「やり過ぎよ」

「土煙って言えば良いのかな?そっちは完全に隠れちゃってるね」

「俺は分かるからまだマシか。さて、次が来るぞ!」


再び群れが現れ、戦いは続いた。






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