第21話 雷宮①
「……また滅茶苦茶な光景だな」
「そうだね」
「特別派手に作った、そんな感じになってるわ」
「実際そうなんだろう。性格が分かるな」
「うん」
数日の準備期間の後、雷宮へ入ったソラ達。ここもまた特徴的な場所だった。
進める道は幅3mほどで、外側は断崖絶壁となっている。そして道から10m以上離れた場所は黒雲が覆っており、雷が落ちていた。それも上から下だけでなく、左右方向、さらには下から上にも落ちており、無茶苦茶さがすぐに分かる。
「だが、ある意味では効果的だ。雷の魔獣なら、雷雲の中でも大丈夫な可能性が高い」
「……それもそうね。警戒する所が多いわ」
「でも、雲の中でも魔力探知はできるよ」
「ああ。先に察知できるから、問題は無いだろう」
「なら良いわね」
視界が悪かろうと、レーダーが無事なら問題無い。そして、それを証明する場面がすぐに来た。
「さてと、早速来たぞ。数は100と少しだ」
「どこから?」
「右だけだ」
「うーんと……あ、来たよ」
「じゃあ、やるぞ」
「ええ」
飛んで来たのはライトスカラーというCランク魔獣の大きなカナブン……当たり前だが簡単に殲滅される。というか、ソラとフリスの魔法で1発だ。
「流石に弱いわね」
「そうだな。これは他とあまり変わらないか」
「何か制限でもあるのかな?」
「デメテルは思いっきり破ったぞ?」
「……そうだったね」
「でも、あれはデメテルの魔法か神術みたいなものよ。制限にかからないのかもしれないわ」
「確かに……そう考えた方が自然か」
他全てのダンジョンでも同じなのだから、精霊王のダンジョンに制限があってもおかしくない。むしろその方が自然だろう。
「っと、いつまでも話してると終わらないな。行くぞ」
「ええ」
「うん」
そして3人は先に進み始めた。
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「ミリア、フリス、ドラゴンが来る。左斜め前、少し上から飛んでくるぞ」
「じゃあ、わたしがやるね」
「任せるわ」
「頼む」
雷のドラゴンにフリスが放った炎が直撃し、燃えながら落ちていく。
「前から4つ、歩いてくるぞ。大きさからして、恐竜系だな」
「どうするの?」
「俺が魔法で対処する。2人は警戒していてくれ」
「分かったわ」
雷を纏ったトリケラトプスの下から岩の槍が伸び、串刺しにした。
「次は後ろ、道の上だ。ウルフ系だな」
「雷とは関係無いのね」
「ああ。だが、強化されてる可能性もあるから気をつけろよ」
そして雷を帯びた狼達はミリアの剣線によってバラバラになる。
「落ち着いた?」
「ああ。今の所、入ってきたやつはいない」
「忙しかったけど、これくらいならどうにかなるわね」
「100とか1000とか来たわけじゃないからな。もう慣れたっていうのもあるだろ」
「そうかも。10匹とかだと驚かなくなっちゃったね」
「ソラに穢されたわね」
「おい待て何だその言い方は」
ダンジョンの中だが、3人は笑いあった。危険な場所ではあるが、警戒さえ解かなければ安全は確保できるのだから。
「冗談よ。でも、ソラと会ってから本当に楽しいわ」
「今度は急にどうした」
「本当のことよ。フリスと2人でいた時も勿論楽しかったけど、ソラとは格別だもの。死にかけたりして辛かったこともあっても、それ以上にね」
「うん。ソラ君と会ってから、凄く楽しいよ」
「まったく、2人だけじゃないからな」
「わっ⁉︎ソラ君?」
「ちょっと、子どもじゃないのよ?」
「その割に嬉しそうじゃないか」
ソラの手が2人の頭に乗せられ、ワシャワシャと撫でる。ミリアは嫌がる素振りを見せたが、本気で抵抗はしていなかった。
「俺だって、2人に会えて良かった。この世界に1人で放り込まれた時、ミリアとフリスがいなかったら生きていけなかった。ありがとな」
「ソラだったら1人でも大丈夫な気がするわよ?」
「そんなことない。過大評価しすぎだ」
「そうかな?」
「そうだ」
「じゃあ、そういうことにしておいてあげるわ」
「ミリア?」
「ミリちゃん、良いの?」
「ええ。私達もそうだけど、ソラも譲らないわよ?」
「その評価は何というか……」
町の中にいる時のような雰囲気となっているが……状況は人に合わせてくれないものだ。
「……ちっ」
「……来たの?」
「ああ。空気を読まない連中だ」
「早く終わらせましょう。その後に続ければ良いもの」
「そうだね」
「そうするか」
すぐに戦闘態勢を整え、ソラは魔力探知の範囲内に入った敵を告げた。
「前から小型の恐竜系50、後ろから多種混合の群れが120、上から鳥系が80だ。後ろは俺がやる」
「じゃあ、私が前でフリスが上ね」
「はーい」
そしてすぐに区分けは済み、それぞれの方向に分かれて戦いを始める。
「はぁぁ!」
小型の肉食恐竜系の魔獣へはミリアが飛び込み、血の雨を降らせていく。その雨は激しく、時間経過で魔力に戻るダンジョン内でなければ、ソラに相当な迷惑をかけていただろう。
「いっけー!」
フリスは上を向き、魔力探知に引っかかった鳥系魔獣へ向けて火弾を放っていく。1羽ずつ丁寧に丸焼きにされるその様子は、まるで料理のようだった。やってる本人は料理などできないのだが。
「斬り裂け」
そして一閃された薄刃陽炎から伸びる光の刃が、100を超える群れの大半を薙ぎ払う。そして足が長かったり飛んでいたりして死ななかった魔獣には、貫通力の高い魔弾か本物の刃が浴びせられた。
「邪魔したのにこれだけね……物足りないわ」
「おいミリア、何で若干バトルジャンキーが入ってるんだよ」
「ストレスの発散ができないのよ」
「一応相手は魔獣だぞ?……否定はできないが」
「うん、そうかも」
実際ソラ達には、普通の魔獣などプチプチと同じような存在でしかない。否定する方が圧倒的に難しいのだ。
「それは置いておいて、先に進むぞ」
「はーい」
「ええ。でもソラ?」
「ん?」
「後で続きを、ね?」
「あっ、わたしも!」
「まったく……分かった。だが、あまりはしゃぎすぎるなよ?」
……3人とも、場所を考えて欲しい。
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『ぐぬぅ……』
「終わりだ」
神気を纏った薄刃陽炎を一閃し、古竜の首を落とす。最後の1手はソラが取ったが、ミリアとフリスもホッとした顔をしている。あまり疲れたような顔はしていないが。
だが、それも当然だろう。身体強化による高速戦闘で手数だけは多かったが、実際の時間は10秒もかかっていないのだから。
「もう簡単に倒せるようになったわね」
「苦労していた最初が嘘みたいだな。油断して良いわけじゃないが、良い成長だ」
「わたし達だって頑張ってるんだもん」
「そうだな。それで、いるんだろ?」
いつものように、ソラはボス部屋の一角に声をかけた。ただし、今回は警戒を前面に押し出している。
『お気づきでしたか』
「流石に7人目だ。気付くに決まってる」
『それは失礼を。雷の精霊王、ゼウスでございます』
見た目と言動は好青年、だが……
『それでお2人さん、オレとイイことー、へぶら⁉︎』
「近寄るな。殺すぞ」
即刻殴り飛ばされた。
『ひっ、な、何で⁉︎』
「口を開くな」
『だか、何で!』
「今の言動だけで十分だ!」
ソラは2人を守るためなら本当に容赦が無い。警戒し続けていた相手だと、特にそうだった。
『た、助けて!』
「ソラ」
「ん?」
ゼウスは助けを求めるが……
「殺して良いわよ」
「やっちゃって」
「了解」
『ひっ!きょっ、待っ、ギャア⁉︎』
拒絶され、ソラに蹴りから始まる10連コンボを叩き込まれる。
『も、もうやめ……』
「この程度で悔いるようなやつか?」
『そりゃフリ「まだ懲りてないみたいだな」ひっ!』
「さっさと渡す物を渡せ!」
『は、はひ!』
ゼウスはすぐに力の欠片を出し、ソラはそれを受け取る。
「間違いないな。ミリア、フリス、帰るぞ」
「ええ」
「うん」
『え?ちょ、ま、待ってください!』
「誰がお前のいる空間に好き好んでいるか」
そして、3人は本気で帰っていった。




