表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第7章 我が道行く新たな星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

164/217

第18話 海都シーア⑤




「今日は……あの辺りにする?」

「そうだな。街道からも見えないし、ちょうど良い」

「私達ならまだしも、エルザとヒカリならそう気にする必要は無いと思うわよ?」

「そうだろうが、念のためだ」

「えっと……」

「何を……」

「まあ、これを気にするのは俺達3人で模擬戦をする時くらいだ。心配しなくて良い」


昨日とは違い、しっかりフル装備で身を包んだ5人。場所も海から離れた森の近くだ。


「さて、今日は俺と模擬戦をしてもらうわけだが、いくつか注意してほしいことがある」

「は、はい」

「何でしょうか」

「まずヒカリ、対人戦での放出系魔法は使い所が限られる。今は2人だからまだマシだが、人数が増えたら同士討ちの可能性もあるから注意しろ」

「あっと……うん」

「次にエルザ、魔人と戦う時は自分より小さな相手である場合も多い。味方に当たらないようにしろよ」

「分かりました」


こう言ったのは、2人とも魔法を使えるからだ。魔法使いというのは大量の敵を相手にできるが、乱戦には弱い。そして求められるのは、乱戦でも強い魔法使いなのだから。


「さて、始めるが準備は良いか?」

「大丈夫、ですか?」

「厳しくやるが、無理ではない。何をするべきか考えながら戦え」

「ですが、ソラさんが相手というのは……」

「それともフリスが良いか?面白がって大量の魔弾を撃ってくれるぞ」

「ソラ君!」

「お断りします」

「えっと……嫌です」

「なら、気合を入れろ」


そう言われて覚悟を決めたようで、2人ともしっかり戦士の顔になった。


「先手は譲る。自由に来い」

「じゃあ……エルザちゃん!」

「ヒカリ!」


ヒカリが剣を構えて突っ込み、エルザは魔法で援護、それが2人の基本スタイルらしい。オーソドックスかつ有用だが……ソラには敵わない。


「全てが一直線なのはいただけないな」


ヒカリの眼前に土の壁が飛び出し、エルザが放った雷魔法も全て受け止められる。さらに土壁が砕け、破片が足を止めたヒカリを襲った。


「きゃぁ⁉︎」

「俺やフリスみたいに魔力感知ができるならまだしも、できないなら足を止めるな」


土壁を砕いたソラはヒカリを取り押さえて首に薄刃陽炎を当て、そのままエルザへ向けて白雷を放つ。エルザは闇魔法で迎撃しようとするが、簡単に貫かれた。


「え⁉︎」

「闇魔法を使うのは良いが、光属性に注意しろって言っただろ?」


ソラが放ったのは雷と光の複合魔法であり、闇魔法で防ぐのは簡単では無い。しかも込められた魔力も多く、直前で霧散したためエルザにダメージは無いが、直撃していれば戦闘不能になっていたことは容易に想像できた。


「簡単にやられすぎだ。このままだと、魔人には勝てないぞ」

「そんなこと言われても……」

「時間に限りがある以上、素早く正解を判断しないといけない。そのためには状況を素早く認識することが大切だ。だが今、ヒカリは土壁が出てから砕けるまで止まっていたし、エルザは迎撃に1回失敗しただけで次の手を出さなかった。これだと駄目だ」

「どうしたら良いんでしょうか?」

「こういうのは自分で見つける他無いが……ヒントくらいなら出せる。1つ目はさっきも言ったが素早く判断すること、2つ目は思考を止めないこと、そして3つ目は足掻くことだ」

「足掻く?」

「俺達は冒険者だ。騎士の一部の連中みたいに、死んで忠義を尽くす必要は無い。他者を守り、自分も何が何でも生き残る。そういう気概を持て」

「はい!」

「分かりました」

「じゃあ、もう1回だ」


そして3人は再び構える。


「次は俺から行くぞ」


ソラは30近い水球を自身の頭上に作り出し、数呼吸開けた後に放った。もちろん、それだけあれば迎撃する余裕がある。


「燃えて、吹き散れ、フレイムストーム!」

「立ち上がれ、ダークウォール!」


そのため、火の竜巻と闇の壁により全てが防がれた。


そしてエルザは下がり、ヒカリは横に飛び出して警戒するが……ソラは動いていなかった。


「え、来ない?」

「魔法戦でも良いだろ?次はこれだ」


そう言ってソラは宙に直径3m以上はある岩塊を出す。それも10個、エルザやヒカリでは簡単にはできないことだ。


「さあ、見せてみろ!」


そして10個の岩塊を順番に放ち……それぞれから2mほど離れた場所で爆発させた。


「何って、魔力だらけ⁉︎」

「視界が……ヒカリ、まずこっちにっきゃあ!」

「エルザちゃん⁉︎」


ヒカリが振り返り、エルザの状況を確認する。ようやく煙が晴れた時、彼女は地面に仰向けに倒れ、その全身を岩で固定されていた。岩には闇魔法も込められており、簡単に破壊できるものではない。


「敵に背を向けて良いのか?」

「っ!」


反射的に剣を振ろうとするも、手首を掴まれ、そのまま押し倒された。さらに、眼球に刀が突きつけられている。


「ただの煙幕であんなに慌てるな。迎撃すれば済む話だぞ」

「でも、あんな大きいんですよ……」

「貫通系の威力を高めれば、塊のものは大抵貫ける。普通に使うより集中する必要はあるが、今の2人なら無詠唱もできるはずだ」


様々なパターンを出し、それへの対応について問題点をあげる。これは至極真っ当なことなのだが……2人には違った感じ取られ方をした。


「ソラ、優しいわね」

「女の子だからって理由もあるかもしれないけど、魔法を使うからじゃないかな?」

「危険だからってことね」

「それだけじゃないよ。ソラ君も言ってたけど、魔法を使うには状況判断が大切だから。エルザちゃんやヒカリちゃんくらいになると、特に重要になってくると思うよ」

「ハウエルやドラみたいに、体に教えるって方法が取れないのね」

「だから、ソラ君はあんなことを言ったんだと思うよ」

「……ハウエルやドラには容赦してなかったものね」


ハウエルやドラ相手でも相当手加減はしていたし、絶対に超えられない壁にはなっていなかった。ただ、見た目はボコボコにしていたので、そう感じるのは難しいが。

そうミリアとフリスが話している間にも、ヒカリとエルザは負け、またソラに言われていた。


「状況を把握するために固まるのは悪くないが、意思の疎通ができていなければ意味が無い。さっきみたいに迎撃せず固まってるなんてのは特にな」

「でも、相性でどうしようか……」

「確かにさっきのは巨大な水球だから、エルザの雷と闇、ヒカリの火とで迷うだろう。だが、俺は基本前衛だぞ?」

「……私がやるべきでした」

「ああ、後衛のエルザの方が対処するべきだった。俺がどう動くか分からない以上、前衛のヒカリを別のことに拘束するべきじゃない」

「はい……」


考えることが多すぎるが、戦う者としての宿命とも言える。騎士団でも、指揮官が全ての人員の行動を指示するなど、絶対に不可能なのだから。


「長引きそうね」

「ソラ君の要求レベルだと、1日じゃ絶対に終わらないよ?」

「それもそうよね……かといって、私達にできることは無い、か」

「仕方ないよ。ソラ君じゃないと教えられないんだもん」

「フリス、昨日のことまだ気にしてるのね?」

「違うよ!」


2人の言った通り、この稽古は数日続けて行われた。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













「え、今日は違うんですか?」

「ああ、森に入る」

「そういうことね」

「こっちも必要だもんね」

「森の中……もしかして魔獣?」


数日間使っていた場所を素通りし、森の中へ入っていくソラ達。そのためヒカリは疑問を(てい)し、エルザは疑念を告げる。


「その通り、今日は魔獣への対処だ。この辺りの魔獣は弱いが、油断していいわけじゃないからな」

「そうだけど……」

「低ランクの魔獣でも、数が集まればかなりの脅威になる。エルザは分かってるな?」

「はい。1対1で負けることが無くても、5対1、10対1となれば遅れをとることもありえます」

「もちろん例外はいるが、概ねその通りだ。数の力というものは侮れない。というわけで……」


ソラは丘のようになっている場所の頂上に登り、そこからある1点を指差した。


「あそこに見えるゴブリンの巣、アレを殲滅しろ」

「「……え?」」


ソラの言う通り、この先には森が一部開けている場所があり、ゴブリンらしき存在がいるのが分かる。ただ、これはエルザとヒカリの予想外だった。


「ど、どれくらい……」

「だいたい……100ってところか。少ないな」

「少なくないですよ……」

「捕まりそうになったら助けてやるから、安心して暴れてこい」

「安心できないです!」


そう言いつつも、ソラが変えるつもりが無いことは分かっていたので、2人ともゴブリンの巣の方へ向かっていく。それを3人は丘の上から見守っていた。


「大丈夫だよね?」

「あの2人なら問題無い。奇襲できる立地だしな」

「でも、魔法使い(マジシャン)がいたら大変よ?」

「いや、上位は将軍(ジェネラル)しかいないことは確認済みだ。魔力探知の精度が上がったおかげでな」

「え、できるの?」

「まあ、ちょっとした裏技みたいなものだ。将軍は他より体格が良く、魔法使いは魔力が多く、射手(アーチャー)はどちらでもない。魔力の形から姿を識別できれば、この3種を見分けることもできる」

「へえ、凄いわね」

「やれるかな?」

「フリスならやれるさ。それより、2人がそろそろ巣に着くぞ」


しばらく待っていると、目標の場所で巨大な炎が立ち上がり、続いて10を超える雷が落ちた。


「大規模魔法ね」

「狙いが良いから、かなり減ってるよ」

「居住区らしき場所を狙ったみたいだな。半減してるし、将軍を負傷させたな」

「じゃあ、それが狙いかもしれないわね」

「確かに、指揮官がいなくなれば残りは烏合の集だ。事前に見つけたなら、狙って損は無い」

「わたし達は無差別に殺してただけだけど、そういうのも考えないといけなかったのかな?」

「ゴブリン程度で考える必要はないだろ。キングだって雑魚だしな」


Bランクでゴブリン100匹というのはギリギリできるかどうかというラインだったが、2人はそつなくこなしていく。エルザが魔法で逃げるゴブリンを倒し、ヒカリがその前に立って立ち向かってくるゴブリンを殺す。


「掃討戦も、アレなら問題無いか」

「危なげなんて無いわね」

「何匹か逃げられちゃってるけどね」

「まあ、その辺りには目を瞑っておくぞ。2人の魔法だと、封じ込めるのは難しいからな」

「殲滅ってのは嘘なのね」

「ただの目標だ。やれた方が良いが、8割処理できれば合格ってところだな」

「じゃあ、合格なんだね」

「ああ」


そう言っているうちに、ヒカリが残った最後の1匹を殺し終えた。


「さてと、労いに行くか」

「きっと疲れてるわよ」

「死体の処理の間は休憩させる。その後はまた移動だ」

「酷いね」

「嫌われることも覚悟して教えないと、実力は上がらないからな」


そう言いつつも、本当に無理で死にかけるようなことはやらないのだから、ソラは優しい。2人も笑って後ろをついて行った。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ