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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第7章 我が道行く新たな星

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第16話 土宮①




「……何だよあのデカイの」

「……精霊王って容赦無いわね」

「アレってありなの?」


土宮へ入ったソラ達を待っていたのは……超の付くほど巨大な岩のゴーレムだ。最低でも、全高100mはあるだろう。

なおベフィアでは、全高10mを超えるゴーレムは確認されていない。よって確実に精霊王が関わっている。


「どうするのよ?」

「ここで退いても、もう1度入れば絶対にいるはずだ。突破するぞ」

「行ける?」

「アレだけ大きいなら、動きはどうしても雑になる。その隙をぬって進むだけだ。簡単だろ?」

「そうね……分かったわ。行きましょう」

「うん。ソラ君だけでも行けるかもしれないけど、わたし達もいた方がいいもんね」

「頼む」


あの巨大ゴーレムの方向に進ませるためだろう、両側は崖になっている。そしてソラはそれに乗るつもりだ。

そして3人は巨大ゴーレムへ向けて駆け出す。だが、右の壁からいきなりロックゴーレムが出てきた。


「ちぃ!」


が、ソラによって一瞬で斬り裂かれる。


「急ね」

「気付かなかったもん」

「隠れていた……いや、今の瞬間にゴーレムになったか?」

「そう。なら、常に警戒しないといけないわね」

「あんなデカイゴーレムを作れるんだから、これもあるだろうな」

「大変だね」

「まあ、俺達にはただ手間が増えるだけだな」


不意打ちは怖いが、その程度でやられる3人では無かった。


「はぁ!」

「やぁぁ!」

「行って!」


ロックゴーレムはソラが薄刃陽炎を振るう度にコアごと真っ二つになり、ミリアが駆ける度に細切れとなり、フリスが魔力を励起させる度に胸部に穴が開く。


「簡単すぎるよね?」

「向こうもそう考えるはずだ。そろそろもう1段階……来たな。先の広場だ」

「ゴールドゴーレムとマジックゴーレムの群れね」

「問題無いな」

「うん」


そのまま3人はゴーレム達に突っ込んだ。そこにいるのは全てAランクの魔獣だが……


「強化されてなければ弱いな」


ソラ達の敵ではない。もはやほとんどのゴーレムを一刀両断できるソラを始めとして、3人にはゴーレムなどただの的だ。


「ソラ、だいぶ近付いてきたわよ」

「問題はどこに階段、進む先があるかだな」

「足元とか?」

「それだと簡単すぎる気も……胴体のどこかの可能性もあるな」

「ここからだと分からないわね」

「行くしかないか」


そうして、出てくるゴーレムを片付けながら、巨大ゴーレムの近くまでやってきた。やはり、ここまで近付けば敵対者と認識されるようだ。


「様子を見る。当たるなよ」

「むしろ当たる方が難しいわ」

「わたしは少し離れてるね」


その瞬間、巨大ゴーレムの腕が落ちる。ソラ達がいた場所は大きなクレーターとなったが、既に3人は飛び去った後だ。


「すごい威力だな」

『感心してる場合じゃないわよ』

「分かってる。ミリアは俺と同じく走り回って注意を引きつつ確認、フリスは遠目で見つけてくれ」

『はーい』

『分かったわ』


その巨大さゆえに末端の速度は速いが、全体としてはただのウスノロである。常時相当数の岩が体表から放たれているが、避けながら走ることに問題は無かった。


「あったか?」

『無いわ』

『何にも無いよ』

「俺もだ。変だな」

『どう考えてもおかしいわね』

「ああ。もしかしたら、見つけづらい場所にあるのかもしれない」

『どうするの?』

「一旦集まれ。探す場所を決めるぞ」


そしてソラ達は、巨大ゴーレムの手の届かない丘の上まで逃げてくる。警戒は続けているが、どうやら逃げた相手は追わないらしい。


「安全みたいね」

「あの場所から動かないってことは、推測は正しいんだろう。問題は場所だ」

「1周してみたけど、見つからなかったよ」

「間違ってはいないはずだが……」

「まったく、何処にあるのよ……」

「あれ?……ねえソラ君」

「ん?」


フリスが見つけた場所に3人は目を向ける。そこには確かに、巨大ゴーレムに穴が開いていた。その場所は……


「……口か」

「よく見つけられなかったわね」

「さっき見たが、開いていた記憶がない。ついさっき開いたってところか」

「じゃあ、近付いたら閉じちゃうのかな?」

「確かに、閉じる可能性もあるな……いや、その場合はこじ開けるぞ」

「ソラならやれるわね」

「首から上を消し飛ばすつもりなら、なんとかな。それよりも、まずはどうやってあそこまで行くかだ」


あの怪獣王クラスのサイズの相手などしたことなど無いのだから、ここから考えなければ無理だ。


「難しいわよね?」

「距離が長いせいで、妨害を受けやすい。登る途中で何をされるかわからないからな」

「空を飛ぶのは?」

「叩き落される。足場を作るとしても、慣れてないフリスが危険だ。腕を登るしかなさそうだな」

「そうね……でも、それも危険よ?」

「他よりはマシだ。採用するしかない」


他に比べれば、というのはどうしようもない。それに足元ではなく、少し離れた場所に拳を誘導できれば、傾斜は少なくなり登りやすくなるだろう。他に現実的な案は無く、これが採用される。

そしてその危険な誘導役は……ソラが引き受けた。


『わざわざソラがやらなくても良いじゃない。私でもできるわよ』

「あれのスピードなら直前でも避けられるし、魔法で気も引ける。バランスが良いのは俺だ」

『でも……』

「万が一の場合でも、俺なら耐えられる可能性は高いし、そこから逃げる手もある。2人を危険に遭わせたくないからだ。信じてくれ」

『……ズルいわね』

「駄目か?」

『いいえ。ただ、そう言われたら止められないじゃない』

『もうわたしも、止めないよ。頑張ってね』

「ああ。期待以上を出してやる」


そう言って、ソラは巨大ゴーレムの腕の長さギリギリまでやってくる。堂々と姿を見せているためバレバレだが、射程外だと一切手を出さないようだ。

そしてソラにはより大きな問題がある。


「ああ言ったものの、どうやって誘うか……」


実のところ、拳が地面に打ちつけられたのは最初の1回のみ。あとは薙ぎ払いだけだった。

足が動かないのは分かるが、腕のパターンも分からない。


「……考えても答えは出ないな。まあそれなら、無理矢理だ」


というわけで、ソラは容赦無くやることに決めた。

一方、巨大ゴーレムの射程外の岩陰にいる2人。ここならミリアがフリスを抱えて走れば、大抵の場所は間に合う。それよりも目の前の光景の方が問題だった。


「ソラ、何してるのよ」

「滅茶苦茶だね」

「あれ、もう壊す気じゃない。目的を忘れてないわよね」

「大丈夫だと思うよ。本気じゃないもん」

「でも、派手ね」

「うん」


ソラは派手だが威力は低めの魔法を撃ちまくり、巨大ゴーレムの気を引いていた。……いや、若干微妙なところなのだが、注意は向けられているのだろう。

ただ、拳が振り落とされることは一切無かった。


「ミリア、フリス、口はどうだ?」

『多分、開いてないと思うよ。ソラ君からは見えないの?』

「この大きさ相手だとどっちも変わらないだろうが、角度的に難しい。……もう吹っ飛ばしてやろうか」

『そんなことしたって、意味無いわよね?』

「多分な」

『ならやめなさい』

「分かった。だが、どうすればいいのか……」


走りながら考える。岩が無数に飛んでくるが、この程度を避けるのはソラにとって朝飯前だ。そして、思いっきり振るわれる平手は跳び越して避ける。これに乗れれば良いのだが、速すぎて確実に乗れるという保証は無かった。これより安全なものを知っているのだから、無理をする必要は無い。

と、ジリ貧になりかけていたその時、フリスが思いついた。


『うーん……一緒にいないといけないとか?』

「あ」

『そういえば……そうね』

「アレが拳を叩きつけたのは、3人が集まっていた最初だけ……確かにその可能性はあるか」

『じゃあ、行く?』

「……そうだな」


そう話し合った後、ソラは少しずつ巨大ゴーレムから離れ、ミリアやフリスと合流する。


「来るぞ!」


そして合図とともに3人が飛び去った直後、巨大ゴーレムの拳が打ち込まれた。さらにソラ達はその右腕に飛び乗り、一気に駆け上がっていく。


「登ってる間も安心するなよ。何をしてくるか分からないからな」

「ええ。今さら妨害が無いなんて思ってないわ」

「でも、どんなのかな?」

「そんなことを言ってると……ちっ、やっぱりか」


ソラが踏み出した足に合わせるように、巨大ゴーレムの腕から岩の槍が伸びる。だがソラはそれを蹴って壊し、さらに進んだ。


「しっかり避けろよ」

「誰に言ってるのよ」

「これくらい、簡単だもん」

「油断はするなってことだ。それで、目的地はどうだ?」

「口は開いたままみたいね」

「腕に乗ったからかな?」

「それは分からないが……左手が来るぞ」

「ソラ君、お願い」

「ああ、ミリアも走れ」

「勿論よ」


上から虫を叩き潰すかのように巨大ゴーレムが左手を振るうが、ソラ達は速度を上げてしっかり避ける。

足下から岩槍が飛び出たり、右腕が振るわれたりすることはあるが、3人はなんとか右肩までたどり着いた。


「ここからは難しそうね」

「……口の前あたりまで跳んだら、俺が氷の足場を出す。フリスは俺が抱えていく。それで良いな?」

「ええ、それで良いわ」

「うん、大丈夫だよ」


特に問題無く、ソラ達は巨大ゴーレムの口の中へ入っていく。そしてそれと同時に、巨大ゴーレムは静止した。


「やっぱり階段があったな」

「ゴーレムも止まったし、大丈夫みたいね」

「でも、壁からゴーレムが出てきたりするかもね」

「その程度なら問題無い。行くぞ」

「ええ」

「うん」


多少の妨害はあったものの、3人はそのまま奥へと進んでいった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











『がはっ……』

「だいぶ調整も慣れてきたな。刀にも沿わせられるようになったか」


土の古竜(エンシェントドラゴン)をバラバラにし、薄刃陽炎を納めるソラ。

神と成ってから増えた魔力や神気の扱いに苦労していたが、氷宮で手加減に成功し、土宮でここまで制御できるようになった。


「1人でやれるなんて、流石ね」

「凄かったよ」

「少し危ないところもあったけどな」

「どこがよ。余裕だったじゃない」

「いや、いくつか避け損ねて危険だったぞ」

「ううん。危なげなんてなかったもん」

「そうか?」

「ええ」

「うん」


自己評価と他者の評価が異なるのはよくあることだ。ソラの自己評価が厳しすぎるというのもあるが。


「さてと、精霊王は……奥みたいだな」

「ここにはいないね」

「じゃあ、行きましょう」


すり鉢状の地面の底から古竜の魔水晶を回収し、斜面を登って扉へ向かう。すると、扉が向こう側から開かれた。


『お待ちしておりました。ソラ様、ミリア様、フリス様』


待っていた人物の見た目こそ美しい女性だが、人では無い。こんなところに人がいるわけないのだが。


「精霊王か」

『はい、土の精霊王デメテルと申します』

「少しの間だが、よろしく頼む」

「それにしても、ここは他とは違う仕掛けが多かったわね」

「確かに。今までは戦闘一辺倒だったからな」

「あの大きなゴーレムは凄かったね」

『久しぶりに作ってみました。自立制御なのでいくらでも作れます』

「昔はあんなものもよく作っていたのか?」

『人々が神話と呼ぶ時の話です。半神と戦うには、アレが必要でした』

「半神?」

半神半人(デミゴッド)……じゃないわよね」

『半神半人は味方でした。魔神は魔獣に力を与え、半神とすることができたのです』

「生みの親だからな……あそこまでデカいのも理由があるんだろ?魔獣とサイズが変わらないなら、半神半人で良いはずだ」

『巨大化する魔獣が多かったためです。あれだけの巨体となると、神々でも対処は面倒になります。その点、ゴーレムなら楽なのです』

「体が大きくなれば、魔力や神気の貯蓄量も増えるからか……昔は大変だったんだな」

『いえ、たった3人で万単位の相手をするソラ様方ほどではありません』

「そうか」


自分達は昔以上に辛いことをしていると言われたが、ソラはそうは思っていなかった。理由としているのは、半神を相手にしたことが無いことだ。

そしてもう少し話していくと、古竜(エンシェントドラゴン)は精霊王とともに戦っていたということも聞いた。


「そうなの?」

『古竜は我々精霊王に与えられた守護者のようなものです。本当の意味では、魔獣とは異なります』

「今はどうしてるんだ?このダンジョン以外にもいるんだろ?」

『今は役目を終えていますので、地上で自由にしております。人と敵対することは無いと思いますが、何かありましたか?』

「いいえ、聞いただけよ」

「倒されたって話は聞いたことがないな。というか、見たという話すらない」

『人が近づかない地に、結界を張って閉じこもっているのでしょう。精霊に近しい存在なので、魔獣のように狩りをする必要はありませんので』


ソラは古竜に色々と疑問を持っていたが、この説明で全て片付いた。半分精霊というのも、そのままの意味だったらしい。


「さて、今日はこれくらいで良いか?」

『立ち話で申し訳ありませんでした。お三方もお疲れでしょう。ゆっくり休んでください』

「謝ることじゃないわ。話、面白かったわよ」

「また話してね」

『はい、勿論です』

「なら、明日も頼む」


デメテルは3人を部屋へ案内し、そのまま何処かへ姿をくらます。ソラ達は食事を取り、強く警戒することなく眠りについた。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「世話になったな」

『いえ、こちらこそ興味深い意見を聞かせていただきました』

「私達だって色々な話を聞いたわ」

「一緒だよね」

『ありがとうございます。……すみません、忘れていました。これを』


ソラは差し出された力の欠片を受け取る。これで6つ、残すは雷と闇だけだ。


「ありがとな」

『有効に使っていただけるのであれば、そちらの方がよろしいですから』

「まだ使ってないけどね」

「それを言うな……有効活用する方法が思いつかないんだから、仕方ないだろ」

「それでも放置しすぎよ。試しに何か作ってみれば良いじゃない」

『いえ、それで良いのです。神気というものは思念に強く反応するのですから、強く思い描いていた方が良いものができます』


神気は思ったことが強く出る。それは3人とも感じていたので、ミリアとフリスも納得していた。そしてソラは真剣に使い道を考え始める。

すると、デメテルが何か思い出したようだ。


『そうでした。ミリア様、フリス様、次のゼウスにはお気をつけください』

「ゼウスって……そういうことか」

「え?」

「どうしたのよ?」

「俺の知ってる通りならだが……」

『おそらく、その通りかと』

「万が一の時は殺しても良いのか?」

『それは困ります。半殺し程度で済ませていただけるとありがたいです』

「分かった。ならそうしよう」

「ソラ、なに不穏なことを言ってるのよ?」

「ソラ君の方が上かもしれないけど、精霊王なんだよ?」

「それは……まあ、会えば分かる」


さらに少し話した後復路についたのだが、2人はまだ気にしているようだった。ソラの雰囲気がいつもと違うというのもあるのかもしれない。










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