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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第1章 異世界放浪記

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第14話 円卓

「……早いな」

「私だって予想外よ」

「昨日の今日だものね」

「どうしてかな?」

「陛下はかなり急いでおられたような感じだったな」


翌朝、宿で朝食を摂っていたソラ達の元へリーナとライハートがやってきた。

2人共服装は一般市民と同じにしてあり、一目では王女一行とはわからない。もっとも、会話の内容から分かってしまうのだが。

朝食を食べ終えた後、リーナの先導で直ぐに王城へと向かった。


「護衛を増やしたんだな」

「何のこと?」

「数は……10人か?騎士剣を差した奴が同じように歩いてる。服装は普通だがな」

「やっぱり気付いたか……陛下の命令だよ。全員鎧姿だと民が驚くだろうからってな」

「父上がそんな事を……」


軽く落ち込んだリーナ。自信家であるようで、自分の力を否定されたように感じたらしい。

そうこうしている内に、王城の正門の前までやってきた。当然ながら、目の前には門番がいる。それも騎士だ。


「殿下、ライハート様、そちらの方々が?」

「そうよ。私の命の恩人ね」

「ソラ殿、ミリア殿、フリス殿だ。手筈通りに頼むぞ」

「了解しました。では御三方、こちらへどうぞ」


どうやらこの騎士は案内役らしい。他の騎士に武器を預けたソラ達はその後ろ姿を追う。

途中でウサ耳メイドも合流し、騎士は3人を1つの部屋へと連れて行った。


「では、この部屋で暫くお待ち下さい」

「こちらの準備が済みましたら、また参ります」

「ご丁寧にどうも」

「ありがとう」

「ありがとね〜」


部屋は12畳程の広さで、2人掛けのソファーが3つとテーブルが1つある。内装は豪勢だ。

ソラ達はメイドの人が持ってきた紅茶とクッキーをつまんでいた。


「へえ、茶葉入りなのか。流石は王城、美味いな」

「この紅茶も良いわね。淹れるのも本当に上手よ」

「こっちのは果物入りだね〜」


紅茶はアールグレイのようなものであり、クッキーは5種類程ある。どれも美味しいため、次々と食べていた。

ちなみに、3人の味の評価の基準は、ソラは元の世界、ミリアとフリスは実家での経験だ。


「さて、何で俺達は喚ばれたんだろうな」

「何でって……御礼とかじゃなくて?」

「それだけなら王城じゃなくても良いだろ。国王が出てくる必要も無いしな」

「確かにそうだね……何でだろ?」

「……何かしらの思惑があるのか……って、これは考え過ぎか。というか、Cランク冒険者を巻き込む陰謀って何だよ」

「確かにね〜実力がもう少し上だとしても、喚ぶならSランクの方が良いかな?」

「そうね。そんな重い事じゃ無いだろうから、思い詰めないで行きましょ」


状況が状況なので疑い深くなったソラ。元の世界でよく読んでいたライトノベルでは、王城に呼ばれる事が厄介事の始まりであることが多かったからだ。

ミリアとフリスはそんな事を知らないので、ソラよりはある意味気楽に構えられている。


「ソラ様、ミリア様、フリス様、準備が終わりましたので、御案内いたします」

「お、やっとか」

「相手は国王陛下だからね。礼儀を忘れちゃ駄目よ」

「は〜い」

「では、こちらです」


メイドに連れられて行く3人。城の中心を迂回して、奥へと進んで行った。

そうして歩いていった後、ソラ達は1つの扉の前に案内される。その上には、円卓の間と書かれていた。


「お入りになる前に、1つだけ申し上げておくことがございます」

「何なの?」

「この円卓の間の円卓に座られた方同士では、敬語が禁止されております。その点をご了承下さい」

「……相手が国王でも?」

「左様でございます」

「……こんなのばっかかよ……」


そう言いつつ、警護の騎士によって開けられた両開きの扉から部屋の中へ入る。

そこには6人掛けの円卓があり、扉の反対側に金髪蒼眼の男性、その左手側には緑髪赤眼の女性、右手側にはリーナが座っている。

ソラは男性の向かい側に座り、ミリアは右、フリスは左に座る。


「お前がソラか。ここでのルールは分かってるよな?」

「敬語禁止だろ?正直に言うと、まだ戸惑ってるんだが……」

「いや、それで良い。この部屋とこのルールは、王城と王室が出来た頃からある由緒正しきものだからな」

「初代からか……」


ソラは呆れ果てる。王家そのものがここまで身分に対し寛容というのが、良いのか悪いのか分からなかったのだ。

ミリアとフリスはいきなり始まった軽い会話に固まっており、リーナともう1人の女性は苦笑していた。


「おっと、自己紹介がまだだったな。俺はここオルセクト王国の現国王、ガイロン・オルセクトだ。こっちは妻のレイリアと、1人娘のリーナだ」

「リーナから聞いて知っているとは思うが、俺はソラ、こっちはミリアで反対はフリスだ。3人共Cランク冒険者で、パーティーを組んでいる」

「リーナとライハートから聞いた話だと、Cランクとは思えないんだが?」

「本当の実力は知らん。魔獣はCランクまでしか倒した事が無いからな」

「確かにな。そういう決まりだから仕方がないか」

「まあ、旅に出てるんだから、ランクが上の魔獣とも戦うだろうさ」

「それは良いが、死ぬなよ?」

「そんなに簡単に死ぬとでも?」


いきなりガイロンと砕けて話し合うソラ。ミリアとフリスはまだ固まったままであり、リーナが心配しだしていた。

リーナは少し年下だった為にそこまで気にならなかったが、ガイロンは完全に年上であり、初対面で砕けて話すのは、この世界では普通無理なのだ。


「2人共、何か話さないとリーナが(わめ)くぞ?」

「そんなことしないわよ!」

「……何でソラ君は、あんなに気楽に話せてるの?」

「ん?この部屋のルールに(のっと)っただけだが?」

「……フリス、私達の常識が通じないと思いましょ」

「……そうだね……」

「おいおい、なんか酷いな」

「普通の一般市民ならこんな反応だろうさ」

「ソラがおかしいのよね」

「マジかよ……」


(そりゃ地球、特にウチの高校は階級意識低い、というか無いけどさ……実際はこんなに違うのかよ……)


頭を抱えるソラを尻目に、ミリアとフリスは漸く再起動し、リーナとレイリアを含んだ4人で女子会を始める。その開始時点で、ソラとガイロンは移動を余儀なくされたが。


「さて、本題に入るか。リーナを助けてくれてありがとな」

「その事か。偶然通りかかっただけだよ」

「それでも助けたんじゃないか」

「魔獣を狩ればギルドで金を貰えるからな。ビックベアーは割と高めの奴だったから儲けれたよ」

「現金な奴だな」

「金は多い方が良いだろ?困った人を助けて金まで貰える、素晴らしいじゃないか」

「違いない」


そのままガイロンと話し合うソラ。ガイロンや近衛騎士の失敗談はソラにウケが良く、ソラが少しだけ話した戦闘術と魔法理論はガイロンが近衛に参考にさせようとしていた。

そんな時、ソラ達を案内していたウサ耳メイドが何かを持ってきた。


「ソラ様、ミリア様、フリス様、こちらを」

「これは?」

「何なの?」

「綺麗だけど?」


3人に渡されたのは、全長20cm程の白い棒だ。但し、表面には緻密な模様が描かれており、両端部は4枚の葉の様な形となっている。


「ああ、それは俺が作ったもんだ。ちょっとした自慢さ」

「これを?なかなか上手いじゃないか」

「数は少ないからやらんぞ」

「持ってて壊したら嫌だしな。置いておくさ」

「綺麗だね〜」

「これ、そこらへんの自称芸術家に見せてやりたいわ」

「偶々出来るだけですわ。あの人も遊びで作っていただけですし」

「部屋が散らかって困る時もあったわね」


そう言って机の上に棒を置く。そのまま、何事も無かったかのように話は進んだ。


「そういえば、ここの騎士達は俺達に対してやけに礼儀正しいかったな。中には貴族もいるんだろ?」

「まあ、貴族も含めて基本は実力主義だからな。ソラ達の力が認められたって事だ」

「近衛の副団長の前であれだけやったからか」

「そういう事だ。それと、俺が命令したってのもあるな」


そのままずっと話していく。途中で紅茶とお茶請けが差し入れられたり、昼食をご馳走になったりしながら、6人は話す相手を変えつつも続いていった。


「ん?って、もう夕方か」

「日暮れまでは時間があるけど……これ以上の長居は悪いわね」

「そう?このまま泊まっていっても良いんだけど?」

「流石にそれはダメだろ。俺達だってやりたい事はあるしな」

「ちなみに、この後は何をする気なんだ?」

「ダンジョンに挑んでみるつもりだ。取り敢えず、明日は情報収集と準備だな」

「昨日の夜に決めたんだよ」

「冒険者ですし、引き留めるのも悪いですわね」

「そうだな。じゃあ、またな」

「ああ、機会があったら」

「ありがとうございました」

「じゃあね〜」

「こっちこそ、ありがとね」

「お気を付けて」


部屋を出たソラ達は再度騎士達に見送られつつ、城下へと戻っていった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「父上、ソラ達を喚んだ理由って……」

「ああ、あれ(・・)だ」

「確かに強いし、期待したくもなるよね」

「人格も良いですし、あり得ない訳じゃないですわね」

「だが、違った。やはり難しいものだな」


ソラ達が帰った後、円卓の間に残った3人の相談だ。


「今までで私だけだものね」

「すまないな、1人だけに業を背負わせる形になって」

「これが私の運命って事じゃ無いの?まだ始まってもいないけどね」


リーナはおもむろに例の棒を持つ。

2人は重い顔になりながらも、見守る。何度も行ってきた事だ。


「やはりあれ(・・)を成功させるしか無いのか……」


リーナの手の中で回されるそれは、青く光って(・・・)いる。

ガイロンは、国王以前に親としての苦悩を顔に浮かべていた。




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