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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第7章 我が道行く新たな星

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第8話 氷都アイシティ②



「魔人?」

「また?」

「そうみたいだな」

「まあ……そういうことだ」


氷宮への扉を見つけて町へ戻ってきた3人。宿で休んでいた所でギルドの職員に呼び出され、そのままギルドマスター室まで案内された。


「正確には、魔人らしき人影が目撃されているという話だ。それが事実か否か、もし事実なら討伐を依頼したい」

「目撃証言の数と場所はどうですか?」

「それがだな……総計で100人以上が見ているんだが、場所がバラバラだ。この町を中心に、様々な方角で上がっている」

「こんな時に外に行く人がいるの?」

「冒険者や狩人は時々出ていくな。それと、薪を取りに行った商人と、その護衛達もだ。その半数が人影を見た」

「多いが、バラけてる……こちらを探ってるのか?」

「どうした?」

「いえ、独り言です」


ギルドマスターである竜人の男は、だいぶ温和そうな人物だった。現役時代は厳しかったらしいが、今はまったく違う。


「それで、引き受けてくれるか?」

「……受けましょう」

「ソラ?」

「良いの?」

「ああ。もしいるなら、倒しておくべきだ。ただ、な……」

「何かあったのか?」

「ここ数日外に出ていましたが、俺達はその人影を見ていないんです。もういなくなった可能性もありますよ?」

「それならそれで構わない。SSランク冒険者の結果なら、皆納得するだろう」

「分かりました」


そう簡単に納得するとは思えないが、見つからなかったらどうしようもない。心配なら集団で固まったり、護衛を増やしたりすれば良いだろう。

話を終えてソラ達はギルドを出、1番近い南門へ歩いていく。


「ソラ、本当に探す気?このままダンジョンに行けば良いじゃない」

「後でそうするつもりだ。だが数日くらいは日帰りじゃないと、数十日もいなくなる言い訳をしづらいだろ?」

「いつもと同じで良いわよ。遠出するとか」

「安心できる材料はあった方が良い。それに、少し確かめたいこともあるしな」

「何?」

「見つけてからのお楽しみだ」


ソラは何か分かっているようだが、ミリアとフリスに心当たりはなさそうだ。必然的に、案内する人物は決まる。


「そう……なら、ソラが先導してくれる?」

「ああ。多少は魔獣に会うかもしれないが、注意しろよ」

「それ、わたし達に注意すること?」

「形だけでも言っておかないとな」

「まあ、一応言うだけでも意味はあるわね」

「そういうことだ。行くぞ」

「うん」


そして3人は昨日までと同じように町の外へ出ていった。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













「今度はこっちなの?」

「一応、全方位を探しているように思わせた方が良いだろ?昨日は西門から帰ったしな」

「確かにそうね。少しでも疑われたら面倒だもの」

「そっか」


2日目。昨日は何も見つけられなかった3人は、今日は北門から外に出ていた。まあ、最初から本気で見つけるつもりは無いのだが。


「さてと……やっぱり遠いな」

「急ぐの?」

「ああ、走るぞ。風魔法で壁は作るから、向かい風は無い」

「なら、安心できるわね」

「神気を使えればマシなんだろうが……すまないが、まだ上手く扱えない」


雪原や雪山を歩くのも、もうほとんど問題無い。氷魔法は使っているが、初めよりかなりスムーズに進めるようになっている。

だいぶ余裕も出てきていた。


「ん?……ゴブリンか」

「冬の山にいるの?」

「冬籠りみたいだ。洞窟の中だな」

「探してる所は?」

「もっと遠い。別目標だが……やるか?」

「ええ、少しの手土産は必要だものね」

「うん。私も良いよ」

「じゃあ、進路変更だ」


迷うことなく進んできた道を曲げ、見つけた場所へ向かう。ソラの方が魔力探知の範囲が広くなった結果、またソラが担当することになった。まあ、今はちょうど良い。


「あそこだ」

「冬によく生きていられるわね」

「こんなに寒いのにね」

「キングはいない……上位までか。適応してるのか、もしくはそれなりに対策はしてるんだろうな」

「そっか。食べ物だって取れないもんね」

「野菜を育てていたりするなら話は別だが、冬に狩りはほぼ不可能だろうな。ゴブリンは……せいぜい日持ちのする果物を集める程度か?」

「加工するなんて聞いたことないし、気にする必要は無いわ。それに、全滅させれば分かることよ」

「そうだね。行っちゃおっか」

「ああ。俺とミリアが先行するから、援護は任せる。洞窟から出てきた所を叩くぞ」


そしてソラとミリアは気配を消し、洞窟へ少しずつ近づいていく。そして残りは約10m、至近と言っても良いくらいの距離になっていた。

洞窟に籠りきりなのもあるだろうが、雪に紛れる白いコートのおかげでバレていない。


「今だフリス、派手にやれ」

『うん』


そこへ炎弾が叩き込まれる。炸裂半径は狭いが高火力の魔法により、入り口付近の雪や物が消し飛んだ。


「フリスはそのまま警戒しつつ魔法を使え。ミリア、ヒットアンドアウェイで数を減らすぞ」

「ええ、任せなさい」

『分かった』


そして木の葉のように散っていく。上位ゴブリンが出てきても、結果は変わらなかった。


「これで終わりね?」

「うん。もういないよ」

「間違いない。他に反応は……いや、また来たか」

「え?えっと……外?」

「ああ、アイスウルフだ」


その名前から極寒地域に住む狼と間違えられることもあるが、実態は氷でできた狼、ゴーレムに近い存在だ。ウルフアイスに変えた方が良いような気も……いや、そんなことはないか。


「消えろ」


そして20体近くいたアイスウルフは、ソラの放った1本の雷で全て消し飛び、周りの雪は溶け、火がつく木々もあった。火はすぐに消えたが。


「やりすぎね」

「まだ上手くいかないな……繰り返すしかないか」

「頑張って。わたしはこんなこと知らないから、何も言えないけど……」

「これは俺が解決すべき問題だ。フリスが気を病む必要は無い」

「そっか。でも、イメージはしっかりやったほうが良いよ」

「そうだな……改めて、最初みたいに丁寧にやってみよう」


やはり魔法の扱いに関しては、ミリアやフリスの方に分がある。久方ぶりに2人が講師となっていた。

そんな風に多少練習を行いつつ、3人はゴブリンのいた洞窟の中へ入っていく。


「……予想以上の惨状だな」

「うわ……」

「こうなるのね……」


外にほとんど出られないせいだろうが、洞窟の中はかなり汚れていた。入り口からすぐの所でも、相当だ。それに、普通のゴブリンの巣には無いようなものもある。


「共食いか。確かに必要だろうが……」

「死ぬほど痩せてるようには見えないわよ?」

「いや、恐らく殺された奴だ。後頭部を殴られてる」

「こんなことまで……」

「それだけ厳しい場所ってことだ」


これ以上進む気にもなれなかったので、3人はその場で引き返した。


「さて、燃やすぞ」

「ソラ君がやるの?」

「できればやりたいが……良いか?」

「ええ、良いわよ」

「うん。ソラ君が早く使えるようになってほしいもん」

「分かった。じゃあ、やるぞ」


ソラは薄刃陽炎を洞窟に向け、魔法を使う。その切っ先から出た蒼い炎は火炎放射器のように真っ直ぐ進み、洞窟内を満遍なく燃やし尽くす。多少岩が赤熱した程度で、今までとは大違いだ。


「まあ、これは成功か」

「上手くできたわね。さっきとは大違いよ」

「求められる威力が高かったのもあるだろうが、フリスがアドバイスしてくれたからな」

「ううん、ソラ君が上手だからだよ」

「そうか?ありがとな」


そしてゴブリンの洞窟から離れ、また目的地へ向けて歩いていく。そしてかなりの時間をかけ、ようやくたどり着いた。


「あった、ここだな」

「探してたのはこの洞窟なのね」

「ああ。氷河の上を歩いていた時、下に洞窟みたいなのを見つけたからな。その入り口だ」

「大きな氷柱もあるね」

「氷柱というか……奥には鍾乳石もあるな。分かれ道も多いし、結構な規模だな」

「迷わないわよね?」

「当然だ」


光魔法で灯りをいくつも作り、洞窟の中を進んでいく。元暗闇ということで3人は蝙蝠系魔獣の襲撃を警戒していたが、何もない。どうやら、この洞窟に魔獣はいないようだ。


「ソラ君、ここってどうやって見つけたの?」

「俺の魔力探知の範囲が広がったことは教えたな?」

「ええ、フリスの倍以上って言ってたわね」

「精度は変わらず……いや、少し上がったな。おかげで、地下の探知もできるようになった」

「地下の?」

「ああ。今回はほぼ氷の下だったが、1つの洞窟を見つけたんだ」

「それがここなのね」

「ああ。そして、その洞窟の出口が氷河の下で、そこにちょうどクレバスがあることも分かった。それで、2人にこの先を見せたいとも思ってな」

「何があるか分かるの?」

「集中的に調べたから、予想を立てられる程度には分かる」


曲がりくねった分かれ道も、ソラは迷わない。魔獣も出ない道を進んで行き、そして洞窟の風景は一変した。


「うわぁ」

「綺麗ね」


とあるクレバスの底なのだろう。両側を青い氷に囲まれ、蓋をしている雪が少しずつ粉雪のように落ち、青い光を反射している。


「予想以上だったか……凄いな」

「ソラ君、どこまで続いてるの?長いよね?」

「山1つ分だったか?結構長いぞ」

「なら、景色を見ながら歩くのも良いわね」

「そうするか。魔獣もいなさそうだしな」

「うん。ここで急ぐのも変だもんね」


3人はこの風景をゆっくり楽しんでいった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー















「そうか、いなかったか」

「たった2日なのでなんとも言えませんが」

「いや、その前の探索の結果も含めれば十分だ。これで依頼を終えても良いが、どうする?」

「俺達はこの後、町から大きく離れて探します。数十日はいなくなると思います」

「冬に野営をする気か?死ぬぞ」

「土魔法で簡易の小屋を作ります。氷魔法も使えるので、雪を退かすのは簡単です」

「食料と薪は?」

「空間収納の指輪があるので、問題ありません。火は魔法を使えば十分です」

「……分かった。しっかり帰って来いよ」

「勿論です。では」


そう言って、ソラはギルドマスター室を出ていく。何人かの職員とすれ違いつつ、下の酒場にいた2人と合流した。


「ソラ君、どうだった?」

「許可は出た。明日から行くぞ」

「そう、よく許したわね」

「半分脅しみたいなものにしたけどな。少し殺気を出した」

「まったく……まあ、良いことにするわ。それで、いつも通りで良いわよね?」

「そうだな……少し食料を買い足すか。予想以上に消費が多かったからな」

「そっか。じゃあ、行こ」

「ああ」


そう言ってソラ達はギルドから出ていった。










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