表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第7章 我が道行く新たな星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/217

第6話 古都ロスティア⑨




「ここは……」

「……ソラ?」

「ソラ君……ソラ君!」

「ミリア、フリス……戻ってきたんだな……」


懐かしい木目の天井。だがここは日本では無く、バルクの料亭の奥の部屋だ。そして、ミリアとフリスが顔を覗き込んでいる。


「高い熱が出てて、心配したんだよ!」

「そんなことになってたのか……すまない」

「でも、もう元気みたいね。顔色が良いわ」

「ああ、変な感じは無いな」

「良かった〜」


寝転がっているだけを嫌がったのか、ソラは上体を起こした。ミリアとフリスは手伝おうとしたが、それより早く起き上がる。

そこへ、家主も入って来た。


「よお、起きたか」

「バルク、布団を借りて悪かったな」

「良いさ。それにしても、3日も目を覚まさなかった割には元気じゃないか」

「3日?」

「うん。水はちょっとだけ飲んでたけど、何も食べて無いんだよ」

「今言うと、そんな所まで人間離れするなよって感じだけどな。俺が惨めに見えるじゃないか」

「まあ、そうだな……」

「ん?どうした?」

「いや、何でもない。少し3人だけで話させてくれ」

「ああ、良いぞ」


バルクが出ていった後、ソラは部屋に結界を張り、外へ声が漏れないようにする。


「これで良し。さて、ミリア、フリス」

「どうしたのよ。厳重すぎるわよね」

「うん。何かあったの?」

「2人は自分の変化に気付いてるか?俺が寝込んでる間に、何か変わったことはあるか?」

「そういえば……周りのことがよく分かるようになってるわ」

「わたしは、何だろう?魔力と神気が濃くなった?」

「そうか、そうなったか」

「知ってるのね?」

「ああ。前提だが、俺は……多分、もう人間じゃない。人だった部分は、人格と記憶だけだろうな」

「それって……そっか……」

「遅かれ早かれ2人もそうなるはずだ。辛いかもしれないが、理解してくれ」

「……まったく、ソラはソラね」

「どうした?」


呆れられるとは思ってなかったのか、ソラは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。だが、2人は容赦無く続ける。


「何で今さら言うの、ってことよ。とっくの昔に心は決まってたわ」

「うん。ソラ君と一緒になれるんだったら、その方が良いもん」

「仕方ないだろ。前にも聞いたが、改めて覚悟を聞きたいからな」

「心配性だね」

「悪かったな」


心配事が終わった所でソラは結界を解き、店の方へ向かう。多少のふらつき程度は問題無いのだが、ミリアとフリスは寄り添っていた。


「これだと、どっちが心配性か分からないな」

「仕方ないもん」

「ええ、ふらついてるじゃない」

「これくらいなら大丈夫なんだが……まあ、良いか」


そのまま3人は表へ顔を出す。


「良い身分だな、おい」

「家庭を持ってるお前が言うな」


そう言っているが、バルクの顔は嬉しそうだ。また彼だけでなく、マリーやメルやアルも笑っている。


「ソラさん、元気になったんだね」

「ソラお兄ちゃん、大丈夫?」

「ああ、もう大丈夫だ。心配かけたな」

「じゃあ、遊ぼー」

「良いぞ。どこでだ?」

「こっちこっち」

「アル、ちょっと待ってよ」


2人に引っ張られ、ソラは個室の1つに連れていかれる。そしてそのまま座らさせられた。


「ソラ君、人気者だね」

「メルもアルも心配してたし、仕方ないわ」

「ソラは病み上がりだぞ、まったく……」

「しばらくは任せましょう。まんざらでもなさそうですから」


積み木や折り紙など、自分達の部屋から出してきては机の上に広げていく。そしてソラと一緒に遊び始めた。

外へ行かないのは……ソラに勝てるわけがないと思っているためかもしれない。


「えへへ、どう?」

「お、凄いな。これどうやったんだ?」

「次はこれ!」

「ちょっと待て、何だこれは」

「えー知らないのー?」


ソラは交互に2人の相手をし、様々なオモチャを使っていく。中には大人の知らないような遊び方をするのだから、子どもは凄いものだ。


「さあ、もう寝る時間よ。片付けましょう」

「はーい」

「おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


気付いたらもう日が暮れていた。ソラが起きた時にはかなり日が傾いていたらしく、もうこんな時間になっていたが……大人の時間はまだまだこれからだ。


「さてと……何本か貰えるか?」

「おう、熱燗か?」

「そうだな……寒いし、それで頼む」

「あ、わたしも!」

「私も欲しいわね。結構良かったもの」

「呑んだことあるのか?」

「俺が前に作ってみたからな。魔法を使ったから、本物とはだいぶ違うが」

「何だよ、便利な手を使いやがって」


ぶつくさ言いつつもバルクは火を起こし、熱燗を作っていく。そして出来上がったそれと同時に、スルメや新香なども出される。


「ほい。ツマミはこれで良いか?」

「少し追加するぞ」

「干し肉……普通のとは違うな」

「ああ。濃いめの味付けで、そこまで堅くない。探すのは少し大変だったな」

「ジャーキーみたいな感じか……良いな、これ」

「食うか?」

「当然」


カウンターと厨房、対面して呑み会う2人。見ると、ミリアとフリスもマリーと呑み始めていた。


「ふぅ……この町に来てから忙しかったな」

「でも、ソラが来てくれて助かった。ありがとう」

「やめろ。俺がやりたいことをやっただけだ」

「変わらないな……それで、この後はどうするんだ?」

「そうだな……出るまではゆっくりするか。もう慌てる必要も無いしな」

「そうだそうだ。今日は呑め」

「そのつもりだが……呑みすぎて倒れるなよ?」

「そう何度もやらねえって」

「どうだか」


結局、バルクが倒れた段階でお開きとなった。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「さて、世話になったな」

「それはこっちのセリフじゃないか。迷惑だったろ?」

「俺達は依頼を受けただけだ。どこも迷惑じゃない」

「ソラ……分かってて言ってるだろ」

「勿論」


ソラが起きてから10日ほど。ギルドで依頼を受けたりしつつ、3人はこの町に留まっていた。

そしてその最後の日、別れの朝だ。今門の外まで来るのは危険なので、バルクの店の前でだが。


「元気でね」

「メルも、元気でいろよ」

「うん」

「ソラお兄ちゃん、また来る?」

「ああ。時間はかかるだらうが、必ず来る」

「約束だよ」

「ああ、約束だ」


メルと話をした後、アルと指切りをする。その時、メルは2人の方へ向かっていた。


「メルちゃん、もう拐われないでね」

「そうね。少し危ないところがあるもの」

「大丈夫だよ!」

「大丈夫?」

「むしろ心配ね。無理してるわ」

「してないもん!」


メルの口調が若干幼児退行してる気もするが……と言うか、ミリアとフリスに煽られた結果だろう。年の離れた姉妹か従姉妹のようにも見え、微笑ましい。

ただ、こんな風に話していてはキリがないので、ソラは適当な所で区切った。


「じゃあ、またな」

「おう。また来いよ」

「またね」

「じゃあね〜」

「さようなら」

「バイバーイ」

「またいらっしゃいね」


3人はバルクの店に背を向け、西へ歩き出した。その足取りは……重くはないが、何となく変だ。


「はあ……もうここには近付きづらくなるかもしれないな」

「どうしてよ?」

「俺はもう、不老になっている可能が高い。数年に1度ならまだマシだが……バルク達は良いとしても、周りがな」

「そうなの?」

「いつまで経っても歳をとらないっていうのは、相当忌避されるはずだ。冒険者としていられるのも、後10年位だろうな」

「そう……まあ、仕方ないわ。それに、それまでに全てを終わらせれば良いもの」

「ああ、やってやるさ。ん?……フリス?」

「……美味しそう」

「フリスったら……」

「まったく、何か買うか?」

「うん!」


屋台で適当に食べ物を買い、食べ歩く。よくやってることだが、3人は楽しんでいた。


「ん〜、美味しい」

「バルクの所でも食べただろ。まあ、こういうのも悪くないが」

「それなら、良いんでしょ?」

「まあな」

「まったく、ソラは甘いわね」

「そう言うな」

「でも、ミリちゃんも食べてたよね?」

「言わないでよ……もう少しで門ね。早く食べちゃいなさい」

「は〜い」


最後まで持っていたフリスに急がせ、食べ物を全てを片付ける。そして西門から町を出て、3人は道に沿って歩いていった。


「そう言えば人を辞めたって言ってたけど、具体的にはどんな感じなのよ?」

「まずは、神気の量が増えたな。魔力と同じような感じで操れるようになってる。それに、身体強化無しでも肉体の限界がかなり上がった。多分2人も大なり小なり変わってると思うぞ」

「うん……そうかも」

「そうね。いつもより早く歩けてる気がするわ」

「それだな。やっぱりできるか」

「それで、ソラ君は何か凄いことができるようになったの?」

「確かに、もしあるなら知っておいた方が良いわね」

「今までとほほんど変わりないが……神術に関しては少し試してみたいな」

「今は周りに誰もいないし、ちょうど良いよ」

「ああ」


ソラは手を前に出し、握り込む。ただそれだけ、熱も音も無い。だが……


「たったこれだけでこの威力か。勝手に比率が変わるし……制御にも難がありそうだな」

「凄いね」

「私は見えないのよ?」

「後で上から見せてやる。だから、今は我慢してくれ」

「それで良いわ。その代わり、ね?」

「わたしも!」

「分かったから落ち着け」


道から大きく離れた森の中。そこにできたクレーターは、誰にも気付かれずに草原へと変わっていった。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ