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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第6章 銀の獣と三色の庭

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第21話 火宮①




「……暑いよ〜」

「それに、眩しいわね……」

「それも仕方ない。神気が使えるようになったおかげで、環境変化にも強くなったのは良かったが……」

「これは大変だもん……」

「慣れるしか無いな……溶岩の海とかありかよ」


火の精霊王のダンジョン、火宮(ひのみや)の中。周囲は溶岩の川、池、海……灼熱と黒体放射により凄まじい環境となっている場所を、ソラ達は歩いている。


「でも、こんな所にも魔獣がいるのね」

「外には……こんな場所、ほとんど無いからな。比較対象が少ないせいもある」

「火山は、バードンの周りでしか見たことないもんね」

「活火山は限られるし、仕方ないか」

「意外といるかもしれないわよ?人が入ったことのない場所なんて、たくさんあるんだから」

「そっか……あ、出てきたよ」

「サラマンダーね」

「暑苦しいな……」


かなり近い場所に出てきたため、ミリアが気づくのも早かった。だがソラの言う通り……燃える蜥蜴など、暑苦しいだけである。


「私が片付けてくるわ」

「いや、ミリアだけだと不利……おいおい」

「それって……」

「見てなさい」


そう言ってミリアが駆けている。両手に持ったルーメリアスの刀身には……


「はぁ!」


氷が、吹雪が、まとわりついていた。それを振るい、サラマンダーを次々と倒していく


「神術か」

「使えるようになったんだね」

「ええ。これでソラに頼らなくても大丈夫になったわ」

「魔人の魔法を突破したのはそれか……それで、どの属性が使えるんだ?」

「全部よ」

「え?」

「全部よ。重ねがけもできるわ」

「もしかして……俺のエンチャントを参考にしたか?」

「イメージはそれね。簡単だったもの」

「ソラ君のって、わたし達なら真似しやすいもんね」

「ええ。やっとフリスの言ってた意味が分かったわ」

「……そうか」


真似しやすいのはソラが解説したりしているからなのだろうが、神気で繋がっているからという可能性もある。どっちにしろ、3人の間なのだから問題無い。


「それにしても、休憩できる場所ってあるのか?」

「……暑さは我慢しないといけないわね」

「魔獣も来るし……どこが良いかな?」

「マグマの直上は駄目、見晴らしが良くても駄目、谷の下はもっと駄目……本当にあるのか?」

「そんな風に話してても良いけど、来ちゃったよ」

「え、どこにも見えないわよ?」

「……溶岩の中だ」


ソラが言うと同時に溶岩の至る所が盛り上がり、人型となる。これもゴーレムの1種だ。


「マグマゴーレムが14体、ラヴァゴーレムが6体、それとメテオゴーレムが2体か……」

「サラマンダーもそうだけど、浅い階層にAランクが出てきすぎよ」

「数が少ないから、まだマシじゃないかな?」

「入った人にとっては、そんなこと関係無い。取り敢えず、さっさと倒すぞ」


ゴーレムとスライムの中間みたいな存在なので、普通のゴーレムより動きが遅い。一本道なので迂回はできないが、色々と対処する方法はある。


「取り敢えず、凍りつかせてやる」


ソラは先手を取って吹雪を起こした。するとゴーレムは溶岩らしく、どんどん黒くなっていく。


「固まったわね」

「意外と温度低いんだね」

「溶岩から離れたせいで、冷却に弱くなったみたいだな。総熱量が減ったからだろうが……まあ、楽で良い」


久しぶりに大型武器セット、土の大槌(アースブレイカー)氷の斧槍(アイリーガル)を取り出し、駆け出す。メテオゴーレムは完全には固まらず、表面を壊して動こうとしているが……遅い。


「はぁ!」

「やぁ!」


大槌(ハンマー)が、斧槍(ハルバード)が、固まった溶岩を砕き、核を破壊する。本来の得物でなくても、これくらいは朝飯前だ。


「さてと……遠巻きに見られてるな」

「また?どこよ」

「遠いし隠れてるようだが、これは……溶岩の中か?」

「またなの?」

「ゴーレムって感じじゃないけどな。何だ?」

「そういえば……溶岩の中を泳ぐ魚がいたわよね?」

「ああ、確かにいたな。それか?」

「じゃあ、結構簡単に終わりそうだね」

「魚だったなら、な。確か他にも何種類かいたはずだ」

「でも全部弱いし、問題無いわね」

「いや、ドラゴンだと大変だぞ?溶岩から出ない可能性だってあるからな」

「……流石に、ここにはいない、よね?」

「分からん」


そんな視線を感じつつ歩いていくと、ようやくその相手を見つけた。それは溶岩の中を泳ぐ燃え盛るワニ、ラヴァアリゲーター。全長は3.5mほど、合計で8体だ。


「Aランクか、まだ当たりの方だな」

「確かに、溶岩から出てきてくれたものね」

「火魔法を使ってくる。気をつけろよ」

「言われなくても分かってるわ」

「なら良し。それとフリス」

「なに?」


振り返ったソラの顔を見たフリスは、その顔から感じ取った。ソラは何かやらかすつもりだ、と。


「ワニには水だよな?」

「え、でもアレは火……あ、そっか」

「……え、何をするのよ?」

「ああ。頼めるか」

「フリス、ちょっと……」

「うん、任せて」


ソラが言うなり、群れを包み込むように巨大な水球をぶつけたフリス。また全身の火を消され、悶え苦しむラヴァアリゲーター。そしていきなりすぎて呆然とするミリア。


「……私の出番、完全に無くなったわね」

「こっちの方が楽で良いだろ?それより、早くトドメを刺すぞ」

「はいはい」


こんな状態の魔獣など、ゴブリンにすら劣る。手早く倒し、魔水晶を回収していった。そして再び進み始める。


「このまま小集団だけを相手にするだけなら良いんだが……」

「そんなこと、今まで無かったわよね?」

「ああ。だから困ってる」

「もう、諦めちゃおうよ。絶対来るんだもん」

「そうだな……」

「それよりソラ君、階段ってあると思う?」

「分からないが……屋外ということも考えると、風宮や水宮みたいに無い可能性もある」

「取り敢えず、先に進むだけよ。答えが分からないのはいつものことだもの」

「そうだな。行くか」

「うん」


そうして3人は歩き、魔獣を倒し、時々休みながら、火宮を奥へと向かっていった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「……今度は溶岩が増えたわね」

「まあ、仕方ないだろ。溶岩の上に浮かぶ小島を渡っていくのよりはマシだ」

「何それ?」

「もしかしたらってだけだ」


火宮に階段は無いが火山の区別はあり、それによって階層のような構造が出来上がっていた。火山によって安全ルートや溶岩地帯の位置どころか、罠の種類さえも異なっている。

そこを3人は進んでいた。


「それにしても、魔獣来ないわね」

「前も、その前もきてなかったよね」

「だが、油断はできないな」

「ええ。警戒は怠ってないわ」

「いつもずっと来てたんだもん。油断なんてできないよ」

「その通り……っと、来たな」


ようやく見つけた魔獣。だがそれは今まで溜め込んでいたのかと思うほど……多かった。


「……エレメンタルとエレメンタリアンだ。面倒だぞ」

「89体と38体だよ」

「多いわね……ソラ、どうするのよ?」

「そうだな……ちょっと待った、アレは……」

「ムスペル、だね。Sランクの」

「また増えたのね。厄介な組み合わせよ」

「しかも18体もいる。面倒なんてレベルじゃない」


遠距離攻撃に優れたエレメント系と盾役として優秀なゴーレム、しかもSとSSのコンビと近寄りがたい溶岩の塊だ。簡単には対処できない。


「どうするのよ?」

「ムスペルは……吹雪で固めてもすぐに動き出しそうだな。どうするべきか……」

「神術、使っちゃう?」

「いや、かなり難易度の高い稽古ができるから、魔力だけで戦いたい。何でもかんでも神術で済ませると、俺達より強い相手と戦う時に困る」

「そうね……なら、こんなのはどうかしら?」

「何だ?」


まだ魔獣とは距離があるため、相談する時間がある。ミリアはソラとフリスに自分の考えた作戦を伝えた。


「……確かに良いかもな」

「え、本当にするの?」

「ああ。他に手が思いつかない」

「そう、なら準備するわ」

「わたしも行くね」

「頼む。俺もしばらくしたら動くからな」


ミリアは前に、フリスは後ろへと歩いていく。またある程度待ち、ソラも前へ進んでいった。

そして、動く。


「はぁぁ!」

「しっ!」


まずミリアが、次いでソラが、吹雪渦巻く刃でムスペルに斬りかかる。範囲は狭いが強力なエンチャントをかけられているため、熱量の高いムスペルの体も、溶岩を固めながら斬り裂いていく。奥にいるエレメンタリアン達も火魔法を放つが、弾速が遅いため2人には当たらなかった。


「ソラ君、ミリちゃん……お願い!」


そんなソラとミリアに続き、フリスは無数の雷を放つ。だがそれは……前衛の2人に向かっていた。


「3、2、1、今だ!」

「ええ!」


そしてタイミングを計り、2人は射線上から退避する。そして雷は魔獣の群れを包み込んだ。


「だいぶ減ったわね」

『上手にできたの?』

「ああ。この隙にもっと減らすぞ」


すでに傷ついていたムスペル6体だけでなく、無傷だったエレメンタル31体とエレメンタリアン12体も葬られていた。そしてソラとミリアは崩れた陣形へ飛び込み、エレメンタリアンを優先して倒していく。ムスペルはフリスが水魔法を使い、足止めを優先しつつ攻撃した。


「フリス!雷魔法でムスペルを倒せ」

『そっちは大丈夫?』

「もう10体もいない。すぐに終わるぞ」

『分かった』

「ミリア、左側を殲滅しろ」

「ええ、右側は任せるわよ」


数が減ってしまえば、ソラ達の敵ではない。わざとだったとはいえ、最初の均衡が嘘のように簡単に終わる。


「殲滅完了、上手くいったか」

「良かったわ。ソラと違って、細かい作戦なんて考えたこと無かったもの」

「俺が認めたんだから自信を持て。それに、連携だって作戦みたいなものだ」

「うん。ちょっと怖かったけど、良かったね」

「……それ、褒めてるのよね?」

「当たり前だよ」

「フリスがこうなのはいつものことだからな」

「そうね……慣れてはいるんだけど」

「どうしたの?」

「「気にしなくて良い」」

「え〜?」


こんなやりとりをしていても、ソラ達の歩みは変わらなかった。















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「ねえソラ、何で私達が走らなきゃいけないのよ」

「立ち止まって振り返れば、理由も分かるが?」

「そんなことしなくても、音だけで分かるじゃん」

「そういう意味じゃなくて……」


横幅3m程度の谷底を横一列になって駆けていくソラ達。魔獣に追われているわけでは無いが、3人とも必死だ。何故なら……


「何で後ろから溶岩が襲ってくるのよ!」

「諦めろ。いつものことだ」

「ソラ君、慣れた?」

「毎回叫んでた気もするが、流石にな。まだ優しい方だろ?」

「優しくない!」


珍しくミリアの方が騒いでいた。もしかしたらソラが騒いでいないからかもしれないが、今はそんなことをしている場合ではない。

ここはダンジョン、それも火宮の中なので、神術を全力で行使しても溶岩を防げるという保証は無い。しかもこの溶岩、とてつもなく速い。全力で逃げるしか無かった。


「うおっ⁉︎」

「きゃ!」

「気をつけなさいよ!」

「すまない」


さらに上空からは噴石、というか半分固まった溶岩の塊が降ってくる。それは後ろからだけでなく上からも飛んでくるため、回避するのも大変だった。


「邪魔!」

「退け!」

「退いて!」


さらに前方には、魔獣もいる。そこまで多くないとはいえ、邪魔なことに変わりはない。


「……これ、いつまで続くんだ?」

「きっと最後までよ。いつも通りでしょ?」

「諦めちゃった?」

「ええ、もうね……」

「仕方ない……っと、鳥だな」

「呑気に言うわね」

「ガルーダは8体、朱雀が3体、上にいるよ」

「……ソラ、フリス」

「ああ」

「うん」

「……お願い」


群れ相手ならまだしも、この数だとミリア1人では空中戦ができない。しかも相手は空中に特化した鳥で、SランクとSSランクだ。それにこんな状況なので、ソラとフリスに任せた方が確実である。


「フリス、防御を頼めるか?」

「この距離だと、ソラ君の方が良いもんね。大丈夫だよ」

「助かる。向こうがブレスを吐いたのと同時にいくぞ」

「うん」


まだ少し距離があるため、一気に仕留めるために使う魔力が多くなる。ソラ達は走りつつ、近くまで待つ。

そしてその時はやってきた。


「ミリア、走れ!」

「頼むわよ!」


ブレスの種類は火球タイプが8つと火炎放射タイプが3つ。これなら簡単に防げる。


「守って!」

「行け!」


火球には巨大な水球を、火炎放射には水の壁を、フリスの放った魔法によりブレスは完全に相殺された。そしてそれを突き破り、ソラの作り出した氷槍が飛ぶ。2m近い長さのものが100以上飛び、回避行動など無意味とばかりに蜂の巣にした。

そして先を走っていたミリアは進路上に落ちてきた魔水晶を確保し、2人と同じスピードになる。


「流石ね」

「感心してる場合じゃないぞ」

「前が広場になってるよ。それに、エルダードラゴンもいる」

「広場ってことは、飛べないドラゴンね?」

「ああ。代わりに大きいぞ」

「地上なら私ができるわ。いつも通りで良い?」

「わたしとミリちゃんが牽制、ソラ君がトドメだね」

「牽制っていう割には手足を切ったり鱗がボロボロだったりしてるけどな」

「良いでしょ?」

「良いじゃん」

「まあ、良いんだが。行くぞ!」


速度を上げ、3人は広場へ突入する。目の前に巨大なドラゴンがいるが、お構い無しだ。


「やぁ!」

「行けー!」

「はぁぁ!」


ミリアが前足の腱を切断し、フリスが後ろ足を水槍で貫く。そしてソラは正面から駆け抜け、背骨ごと真っ二つにした。


「よし、行くぞ」

「魔水晶は?」

「ミリア」

「もう取ってあるわ。行きましょう」

「ああ」


そして3人は、さらに奥へ向けて駆けていった。










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