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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第6章 銀の獣と三色の庭

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第20話 火都バードン⑤




「よし、行くぞ!」

「「「「「おぉぉーー!!」」」」」


リーダー格の宣言により、勇んで門を出ていく冒険者達。ソラ達の参加するキングゴブリン討伐隊は、7パーティー35人で構成されている。キングゴブリンの周りには大量のゴブリンがいることなどから、3パーティーはBランク、もう3パーティーがAランクとなっていた。

そんな中、現在バードン唯一のSSランクパーティーは……


「気合入ってるな」

「一応、キングゴブリンはAランクよ。上位ゴブリンもいるでしょうし、士気は高い方が良いわ」

「報酬も多くなるもんね」

「必然的に気合も入るか……まあ、その方が犠牲も少なくなりそうで良い」


士気というのは、戦闘において重要な要素だ。ソラ達の目的は違うとはいえ、この雰囲気を壊すのは得策ではない。


「さてと……フリス、魔獣はいるか?」

「少しはいるけど、こっちに来るようなのはいないかな」

「ならアレはあの日だけ……キングゴブリンがこちら側にいるのは間違いないはずだが……」

「陽動じゃないかしら?」

「町を攻められたら.その方向で捜索するし……上が頭の回る奴ならやりそうか」

「キングゴブリンじゃ無理だよね」

「特別頭の回る個体がいるなら別だが……まずいないだろうな」


キングゴブリンがどうやって生まれるのかは分かっていないが、魔法を使うキングゴブリンの例は無い。つまり、脳筋ばかりということだ。こんな搦め手を使えるとは思えない。

だがそういう話は他に聞かれず、別の話題で冒険者達はやってきた。共に旅をする以上、交流も必要なのだ。


「なああんた、見ない顔だがどっから来たんだ?」

「ウォーティアから来たばかりだ。旅をしながら冒険者をやってるからな」

「へえ、結構長いのか?」

「ああ。3国とも回ったことがあるぞ」

「面白そうだなぁ」


とはいえ男性陣としては交流も大切だが、ミリアとフリスの方が気になるらしい。


「で、そこの別嬪さん2人とはどこで知り合ったんだよ」

「初めからだ。最初は冒険者としての立ち回りとかを教えてもらってたんだが、そのままな」

「それにしても、どっちも美人だよな。片方……」

「初日、行方不明者1人か。残念だ」

「じょ、冗談だ……」


即刻ソラに威圧され、戻って行ったが。

その一方、女性陣はソラの方を気にしていた。


「あのソラって人、何処から来たんだろう?」

「顔立ちが違うもんね。王国か、共和国かな?」

「それにしても、何だかかっこいいわね」

「そう?」

「冒険者の男の人って結構雑だし、貴族の人って住む世界が違う感じがするでしょ?けど、あの人はしっかりしてそうよ」

「あ、商人さんみたいだね」

「そうそう。結婚するなら、ああいう人が良いわ」

「今から告白しちゃえば?」

「でも、2人いるよ?」

「1人くらいなら入れるよ。カップルって感じじゃないからね」

「どうだろう……」


カップルとかいう初々しい時期はとうに通り過ぎているのだが、知らなければ分からない。勝手にワイワイ騒いでいる。

そして、そこへ向かう2人の姿があった。


「面白そうな話をしてるわね」

「いやー、あはは」

「わたし達の旦那さんに、何か用?」

「え?」


投下された爆弾には、男性陣も驚く。


「なに?」

「は?」

「あの……」

「2人とも俺の妻だが、何か問題でもあるか?」


この場の他の面々からしたら、問題大有りだ。


「「「「「「えぇーー⁉︎⁉︎」」」」」」

「うるさい黙れ静かにしろ」

「「「「「「は、はい……」」」」」」


初日は色々と大騒ぎだった。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「この先だ。良いな?」

「おう!」

「ああ」

「もちろん」


片道だけで1日以上かかったが、冒険者達の士気は相変わらず高い。崖の上からゴブリンの集落を見下ろし、バレないよう注意しつつ気合を入れ直していた。

そこでソラ達は告げる。


「俺達は周囲の警戒をしておく。好きに暴れてくれ」

「なに言ってんだ、稼ぎ時だろ」

「後ろから奇襲されて壊滅されたら困る。俺達の稼ぎは十分あるから、暴れてくれれば良い」

「あんたらは良いのか?」

「ええ。」

「3人で決めたんだもん」

「変わった奴らだな……分かった。背中は任せる」


そう言って、冒険者達はゴブリンの集落の入り口へ向かっていった。このゴブリンの集落の両側には崖が迫っており狭く、入り口は1ヶ所しかない。


「一気に行くぞ」


そして戦端は開かれた。

一方、3人は入り口前にある広場で待機している。


「さて、お手並み拝見といくか」

「キングゴブリン相手じゃないと見れないでしょうけどね。ゴブリンじゃ相手にならないわ」

「でも、ゴブリンだって多いよ。手伝う?」

「いや、この地形なら問題無い。連携も悪くないだろう」

「そっか」


ソラの言う通り、少数で多数を迎え撃つには有利な地形だ。冒険者達もそれを生かしており、前衛が盾や長物でゴブリンを抑え込み、後ろから魔法や矢でゴブリンを掃討している。上位ゴブリンが出てきたら少し厳しいが、今の所問題無い。


「そろそろ……来たか」

魔法使い(メイジ)だね」

射手(アーチャー)もいるわ。どうするのかしら?」


集まっている冒険者は全員Bランク以上なので、上位ゴブリン相手でも普通に戦える。

盾を、特にタワーシールドなどの大きなものを前面に出し、長物使いは後ろに下がる。そして盾役を狙った所で、軽装の剣士等が一撃離脱で上位ゴブリンを狙っていった。

また後衛では射程と精度は冒険者達の方が高く、1体ずつ確実に倒している。


「上手いわね」

「俺達は誰も盾を使わないせいで、動き方を詳しく知らないからな。こういう風に見れるのは良い」

「わたしとミリちゃんは一緒に戦ったことがあるけど、この人達ほど上手じゃなかったもん」

「まあ、仕方ないわ。AランクとCランクだもの。経験の差も大きいしね」

「2人はそうだったな。まあ、勉強になることに変わりはないか」

「うん。あ、奥からゴブリンが出てきたよ」

「キングゴブリンも来たな」

「本番ね」


奥にある洞窟らしき場所からキングゴブリンや上位ゴブリンを含めた大集団が出てきて、冒険者目掛けて突撃してくる。

それに対して冒険者達は、Aランクパーティー1つがキングゴブリンを相手にし、他はゴブリンをキングゴブリンに近づけないようにしていた。キングゴブリンの前にいた個体をすぐに倒せたこと、そして巣が狭いのも相まって、上手く孤立させられている。


「上手に戦ってるね」

「特に、キングゴブリンと対峙しているパーティーはな。Sランクには……まだ少し足りないか」

「ドラゴン相手だったら、全滅は必至ね。カノンアントくらいで……2人が怪我しそうよ」

「怪我で済めば良い方だよ。腕が無くなったりするかもしれないんだよ」

「SランクとAランクにはかなりの差があるし、ありえるな」

「しばらく経験を積めば、上がるかもしれないけど」


ソラ達は簡単に上がっていったが、普通はあんなに早くない。経験を積み、魔力の扱いを知り、ようやく上がれるものだ。

時折天才が出てきて常識を破壊していくのだが。


「……後少しだな」

「そうかな?まだかかりそうだよ」

「恐らく、あの長剣と斧槍がトドメを刺す。その前に……矢が刺さって隙ができるはずだ」

「そんなわけ……」


魔法で気を取られたキングゴブリンの左肩に、矢が刺さる。さらにそれに注目した所、右目にも刺さった。

そして混乱し激怒するキングゴブリンに、長剣と斧槍が迫る。


「……その通りね」

「多少なら、どんな形で終わらせようとするかは予測できる。あいつらは分かりやすかったからな」

「それでも、普通はできないよ」

「分かってる。だが、今はそんなことを言ってる場合じゃない。動いたぞ」

「ええ、行きましょう」

「うん」


トドメを刺された後もキングゴブリンは多少暴れていたが、しばらくすると動かなくなった。そのタイミングで、ソラ達は到着する。

現場は大興奮だ。


「やったぞ!」

「よっしゃぁ!」

「よし!倒したぞ!」


これに気を取られて不意打ちを受けたりしたら言語道断だが、ゴブリン達はボスが倒されて恐慌状態になっているため、特に問題は無い。

だがこの場には、それを好まぬ人物もいた。


「人間風情が……なに俺のペットを殺してやがる」


現れたのは肌が黒く、額から捻れた角が計6本生えた魔人。その手は前腕から刃のような骨らしき物が3本生えている。


「ひぃ!」

「ま、魔人⁉︎」

「やべえぞ!」

「キングゴブリンなんかとは桁違いだ……」

「に、逃げろ!」


突然魔人が現れれば、恐れもするし混乱もする。逃げないのは3人だけだった。


「やっと出たか」

「おい!あんたらも「俺達に任せておけ」……は?」

「ミリア、フリス」

「崖の上と……後ろだね」

「じゃあ、上は私がやるわ。後ろはお願い」

「うん」


その3人も2人が別方向に行き、残ったのはソラだけだ。これが魔人の気に触ったようである。


「あ?てめぇ、何で残ってんだ?」

「言わないと分からないか?お前程度、俺1人で十分だ」

「……ざけんな」


魔人は右腕を上げ、ソラへと振るう。


「人間風情が……舐めてんじゃねぇぞ!」

「はっ、人間様を舐めんじゃねえよ」


それに対してソラは薄刃陽炎を振るい、直撃する軌道にあった骨を斬り飛ばす。そしてワザとガラでもない台詞を言い、さらに挑発した。


「てめぇ……」

「こんなものか?」

「ざけんな!」


そして魔人は馬鹿正直に突っ込み、両腕を斬り飛ばされる。


「へっ……貴様らなんぞ、あのお方に……」

「うるさい」


そしてソラは首を刎ねた。それとほぼ同時に、2方向から1つずつ人影がやってくる。


「ソラ」「ソラ君」

「来たな。やっぱり魔人か?」

「うん。倒して指輪に入れておいたよ」

「私の方は魔法使いで、少し大変だったわね。竜巻の中に入られてたわ」

「それ、どうやって突破したんだ?無理矢理突っ切ったか?」

「秘密。でも、もう少しで知ると思うわよ」

「そうか……フリスはどうだ?」

「わたしの方が剣士だったから、魔法ですぐに倒したよ」


向かわせる方向が逆だった気もするが、無事に終わったのだから良い。3人が気になるのは、魔人が来た背景の方だ。


「それで、エルダードラゴンに関係してるのかな?」

「いや、それは無い。こいつらだとエルダードラゴンを従えるには弱すぎる」

「それもそうね……私の方はAランクくらい、高くてもSランクよ。フリスは?」

「わたしも同じくらいだったよ。ソラ君は?」

「俺の方はSランクあたりだな。SSまでは行かないはずだ」

「そう、なら問題無さそうね」

「そうでもないぞ。こいつが気になることを言っていた。もしかしたら、そっちが当たりかもしれない」


もはやヒントなど出ないので、これ以上発展のしようもないが。そんな風にソラ達が考えていると、冒険者達のリーダー格の人物がやって来る。


「あんたら……何者だ?」

「そんなこと、今はどうでも良い。残党がいないか周囲を確認してくるから、後は頼んだぞ」

「あ、ああ……」

「ミリア、フリス、行くぞ」

「ええ」

「うん」


呆然とする冒険者達は、3人を見送ることしかできなかった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「残党なんて探す気ないよね〜」

「まあな。本当はアレだ」

「ついでに探せば良いのよ。多分いないけど」

「どうしてだ?」


冒険者達と別れた後、ソラ達は火山山脈の方へ向かっていた。既に木は疎らになり始めており、遠くには殺風景な禿山が広がっている。

とはいえ、この程度の環境変化にいちいち反応する3人ではない。


「私が戦った相手、向こうの2人は勝てるよなって言ってたのよ。これで確実でしょ?」

「向こうの2人……俺とフリスの相手か」

「他にいるなら、他の2人とか言いそうだもんね」

「それ以前に、勝ち負けが関係してたのは、俺達が相手した3人だけだ。他にはいないだろうな」


時々魔獣も出てくるが、BランクやAランクなど3人には雑魚でしかない。冒険者達は誰もついてこなくて良かっただろう、常識が守られるという意味で。


「それで、次ってどこにあるかな?」

「火の精霊王よね……やっぱり、火山かしら?」

「だから向かってる。推測できるのがこれくらいだからな」

「毎回探すのも面倒になってきたわね。町から案内してくれればいいのに」

「精霊がダンジョンの周りにしかいないんだから、仕方ないだろ」

「それでもよ」


そんなことを言いつつ、3人は歩き続ける。近くまで行けば精霊の声が聞こえるのだから、まだ優しい方である。


「そろそろ夜営の準備をするか……森を抜けた先だ」

「確かに、もう少しだものね。良いわよ」

「今は魔獣もほとんどいないし、大丈夫だよ」

「なら、問題無いか」

「それじゃあ、急ぎましょう」

「うん。早く食べたいもん」

「やっぱりフリスは食べ物が」


この日の捜索はここで終わる。そしてソラ達があれを見つけたのは休火山の火口、魔人を倒した2日後のことだった。









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