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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第6章 銀の獣と三色の庭

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第17話 水宮①


「……こんな所にもあるんだ」

「見つからないわけね」

『うん!』

『見つかったこと無いんだよ〜』

『お魚いないって、みんな帰っちゃうの』

『遊んでくれないの』

「そりゃ、来ないよな」

「来るわけないわ。魅力が一切ないもの」

「こういう風に隠したりもするんだね」


ウォーティアの近くで見つけた精霊王のダンジョンへの入り口。だが問題無いとしても、それがあるのは……


「池の底、か……」

「どうするの?」

「やっぱり、シーアの時と同じよね?」

「ああ、魔法をかけて潜るぞ。扉の向こうがどうなってるか分からないからな」

「中にも水があったら、魔法が無いと無理だもんね」

「そういうことだ。後は扉のすぐ先に魔獣がいる可能性だが……」

「考えても仕方ないわ。覚悟して行きましょう」

「うん。それに、古竜(エンシェントドラゴン)以外は大丈夫でしょ?」

「あれがボス部屋の扉って確率は低いし……行くぞ」


そうして、魔法を受けた3人は潜っていく。扉までは20mほどあったが、魔法のおかげで問題なくたどり着いた。そして扉を開けたが、水はその先へ流れない。ソラ達は警戒しつつ、ダンジョンへと踏み込む。

そんな3人を迎えたのは、壮大な光景だった。


「……何だこれは……」

「水が……」

「……浮いてる、わね」


直径200mを優に超える水の球体がいくつも、奥まで続いている。そしてそれらのサイズはバラバラだが、規則正しく整列しているように見えた。


「これでどうしろっていうのよ……」

「アレを渡って進めってことだろう……普通なら無理だぞ」

「あ、なんか岩みたいな所もあるよ」

「水も無しい、あそこで休憩できるな」


ソラ達が見える距離にギリギリ1ヶ所、水に飲まれていない空飛ぶ島のような場所が見えている。休憩するのに、あそこ以外の選択肢は無いだろう。

罠はあるかもしれないが。


「取り敢えず、目の前の球まで跳ぶか」

「魔獣もいるわよ?」

「来たら倒せば良い。魔法も使えるし、最初は俺が行く」

「任せるわ」


取り敢えず最も近い球へ向かう。身体強化を使って大きく跳んだソラはニュートン力学に従い、減速しつつも近づいていくが……


「うおっ?」


球まで残り20mという所で、急に加速に変わった。ソラは体勢を整え、水に飛び込む。


『どうしたの?』

「重力の方向が変わった。どうやら、球の中心方向に引かれるみたいだな」

『そんなことできるのね……』

「俺も驚いてる。だがこれなら、水の表面を歩いて進めるぞ」

『そうなの?』

「ああ。別の魔法をかけるから、俺の合図で跳べ」


そう言うとソラは水面から出て、宣言通り水の上に立った。ミリアとフリスもソラを信じ、足から水へ向かう。


「うわっ、凄いね!」

「いや、原理自体は水の中を動くより簡単だ。問題は魔獣が足下から来ることだが……」

「それは大丈夫よ。しっかり見えるもの」

「なら、問題無いか。水の中は俺とフリスが、外に出てきたらミリアが対処してくれ。他の球から飛んできた時は、3人でやるぞ」

「ええ」

「うん」


そして3人は進み始めた。球を渡っていくとほぼ毎回魔獣が出てくるが、そう大した数では無いのですぐに倒し終える。


「魔獣はまだCランク程度か」

「数も少ないし、楽で良いわね」

「ねえ、ソラ君」

「フリス、どうした?」

「この先って、どんな風になってるのかな?」

「それは……どうだろうな。風宮と同じか?」

「そうね……下には何もないみたいに見えるし、そうかもしれないわ」

「そのうち、上下感覚が狂いそうだけどな」

「球と球の間は普通だから、大丈夫よ」

「意識すれば何とかなる、か……それと、進んでいった先に何があるか、だな」

「分かんないんだし、考えすぎじゃないかな?」

「だが、警戒でも意味はある。何もないなんてことは無いはずだ」


そういう理由で、3人は警戒を抜かずに進み続ける。そしてこのダンジョン、水宮(みずのみや)を踏破するため、絶対に必要な場所へやってきた。


「さて、問題の島だな」

「罠は……この距離だと分からないわね」

「表面、燃やしちゃう?」

「それより……飛んで近付けばいいだろ」

「はい?」

「え?」

「だから、飛ぶんだよ」


ソラの言った意味が分かっていないミリアとフリスだが、実際にやれば意味は分かる。ソラは早速魔法をかけ、実演した。

それにつられ、2人も試す。


「……こんなに自由にできるのね」

「神気を使えるようになったからな。2人には俺との繋がりがあるから、思考を現実に持ってくることができた」

「わたしにはこんなのできなかったもん。」

「風魔法だけじゃなくて、土魔法と闇魔法も使ってるからな。重力をどうにかすれば割と簡単になる」

「じゃあ、できないね……」

「いや、神術ならできるかもしれないぞ。属性は無いらしいからな」

「本当?」

「ああ。というか、原理関係無く浮けるようになる気もするが……」


ソラは神術、神気について、己の心象を具現化するものだと考えている。なのでフリスがイメージさえできれば、障害は無いはずだ。


「っと、調べるの忘れてたな」

「そうね。先に行くわ」

「ああ、俺は下を見てから行く。フリス、魔力探知は任せられるか?」

「うん。神術も使ってみるよ」

「頼んだ」


そうして、一通り調べたソラ達。その結果は……


「無いわね」

「わたしも無いよ」

「俺もだ。意外だな」

「ここの精霊王、性格が良いのよ。きっとね」

「だと良いが……」


心配しすぎと言われるかもしれないが、今までがアレ(・・)だったのだ。ここだけで安心できる要素は無い。


「ねえ、考えるのは後にしようよ」

「そうだな。しばらく休憩するぞ」

「他に無いけど、見晴らしが良すぎる気もするわよ?」

「だが、ここしかない。水の上よりはマシだ」

「見晴らしって、どこも同じじゃないかな?」

「……それもそうね」


見晴らしの良さは一長一短なので、この場で議論きしれるものではない。そしてどこも同じなら、陸地の方がマシだ。


「そういえば、さっきの空飛ぶ魔法を使えば、簡単に先に行けるわよね」

「いや、あれは消費が激しすぎる。古竜(エンシェントドラゴン)との戦いの前に、魔力切れになる可能性が高い」

「そうなんだ……」

「俺が完全に操れてないっていうのもあるから、そのうち少なくなるはずだ」

「じゃあ、期待していいの?」

「ああ」


術者同士の談義なのでミリアは蚊帳の外だが、特に気にしていない。むしろ2人のためになることを気にしていた。


「さて、そろそろ行きましょう。何か来たみたいだしね」

「いるのか?」

「ええ。遠いけど、向こうの方に」

「ん?……何だあの群れは」

「いつものことでしょ?」

「そうとは言ってもなぁ……編成がおかしすぎるだろ」


ミリアが見つけた群れ、そこでは鳥系魔獣が水棲系魔獣を掴んでおり、そのおかげで球の間を移動できているようだ。

いくらダンジョンの中とはいえ、この構成は普通ならありえない。


「あの様子だと……ここにいる間は攻めてこないな」

「それどころか、あの距離から動かないと思うわ。実際にさっきからあそこにいるだけだもの」

「魔法の届く距離がバレてるの?」

「いや、やろうと思えばあそこも射程内だ。魔力探知の範囲外だが……それが狙いか?」

「じゃあ、近付きましょう。どうせ倒すんだし、ここじゃなくても変わらないわ」

「罠だとしても食い破る。それだけだ」


その後、全方位を囲まれつつもソラ達は魔獣を殲滅し、先へ進んだ。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「ふう、この球はこれで終わりだな」

「多かったね」

「それに、Aランクが中心になってきたわね。だいぶ進んだみたいよ」

「だが、これからが正念場だ。Sランク以上が山のように押し寄せてきたら、捌ききれないぞ」

「そんなことあるのかな?」

「このダンジョンだと……ありえる。風宮より包囲されやすい」


巨大な水の球ということで、見晴らしはとても良い。それに四方や上方からだけでなく、足下から魔獣が襲ってくる可能性もあった。

魔力探知があるとはいえ、場所取りを間違えれば死にかねない。


「それにしても、球が大きくなってきたわね」

「魔獣はランクが上がるにつれて、大きなものも増えるからな。妥当なところだろう」

「移動が大変になっちゃったけどね」

「それは仕方ない。俺達がどうこう言えることじゃないからな」

「まあ、こうやって歩いて進めるだけマシよ。泳いでなんて大変すぎるもの」

「それはこのダンジョンの良い部分だな」


ソラ達が今いるのは、直径1kmを優に超えるのではないかという水の球だ。これほどの大きさになると、全長20mのアクアスピノやそれに類する巨大魔獣が次々と出てくる。強さ的にはそう大したことないが、邪魔なことに代わりは無かった。


「あ、魔獣だよ」

「下と……上か?」

「上……ドラゴンね」

「いや、ワイバーンだな。海辺で魚を取ってるようなやつらだろう」

「そんなのも再現されるのね」

「そういう場所だ。やるぞ!」


総数は100頭ほど。1方向から来るため、先手を打ちやすかった。魔法である程度倒し、近接も使って殲滅する。魔力消費を抑える、3人がよく使う手だ。

そして約半数を落とした所で、ミリアが呟く。


「やっぱりワイバーンとなると、足場の悪さが響くわね……」

「すまないが、完全に地上と同じにはできない。水の上を歩くっていうのは、そういうことだからな」

「大丈夫よ。さっき言った通りだから」

「ソラ君、ミリちゃん、来るよ」

「分かった。ミリア、次で終わらせるぞ」

「ええ。ワイバーンの背中なら、良い足場になりそうね」

「私も援護を……あれ?」


一時離脱していたワイバーン達が再度来る。そこで殲滅しようとしていたソラ達だが、フリスがあるものに気付いた。


「ねえ、ソラ君……あれ……」

「フリス?どうし……おいおいおい」

「……何よ、あれ」


そこから見えたのは巨大な波、恐らく津波だ。ソラ達が走るより遅いが、ここは球。反対側から来ている可能性もある。


「やばい、別の球に行くぞ!」

「え、でも……」

「あれの衝撃は魔法の比じゃない!すぐに逃げるぞ!」

「フリス、行くわよ!」

「ワイバーンが来ちゃうよ!」

「魔法で撃ち落せ!フリスは俺が抱える」


空を自在に飛べるワイバーンに、津波は関係無い。問答無用で攻めてくる魔獣を相手にするため、魔法で素早く倒す必要があった。

そしてソラ達は、別の球へと跳ぶ。


「ワイバーンは落としたわね」

「魔獣は……下から来るよ」

「今度は魚……魔法の方が早いわよね?」

「ああ。だが……ここでもか」


やっとだどりついたここでも、津波が見えた。それと同時に3人は走り出す。


「向こうだ!」

「もしかして、ずっと?」

「多分な。急がないと飲み込まれる」

「流石にあれは……マズイわね」


その後もソラの予想通り、別の球でも津波が次々と襲いかかってきた。そんな時でも魔獣は絶えないので、集中力をドンドン削られていく。


「ちっ、ドラゴンが来たぞ!」

「こんな時に⁉︎」

「ソラ君、良い?」

「1撃で仕留めろ。消耗は気にするな」

「分かった!」


フリスは速度重視で雷を連発し、ドラゴンを落としていく。ミリアは先を進み、水から出てくる魔獣を排除していった。


「ソラ!島よ!」

「あそこへ逃げる。ドラゴンもすぐに退治だ」

「それなら……」

「ああ、もう大丈夫だ」


球は津波で危険、なので島へ跳び乗る。この判断に誤りは無い。

問題は、これだけ追い詰められてもう罠は無いと思ってしまったことだ。


「は?」

「え?」

「嘘……」


その結果……島が、割れた。


「ここもか!」

「ソラ君!」

「アレをかける。すぐに球へ行くぞ!」

「分かったわ」


だが流石はソラ達、対応が早い。すぐにソラが飛行魔法をかけ、跳んだ勢いそのままに反対側の球へ進んだ。


「またドラゴンだよ!今度は右と左から!」

「前にも下からリヴァイアサンが来るぞ……左は俺がやる。フリス、右は任せた」

「うん」

「リヴァイアサンは私がやるわ」

「頼む。それにしても……」


魔獣を排除しつつ、津波を避けて球を渡っていく。


「またこんな場所かよ!」


今日もまた、3人は走り回っていた。









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