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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第6章 銀の獣と三色の庭

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第15話 滝都フォール④



「……なるほど、そういうことですか」

「ご存知なのですか?」

「独自に調べていましたから。異常は感じていたので」

「なるほど……流石は御当主様が認められた方ですね」

「そんなんじゃないです。それより、早く場所を教えてください」

「は、はい。貴方、地図を」


フォール領主代理、つまりオリクエアのいない今、フォールで最も偉い人物。若い女性だというのは驚きだったが、オリクエアが任せるのだから優秀な人物なのだろう。

そんな彼女は部屋の隅に控えていた若い執事に、地図を取って来させた。


「ここに谷があります。そこを左に行った先で……」

「そこが発見場所……となると、寝ぐらはここかここか……だいぶ絞られますね」

「できますか?」

「見つけられれば、必ず。それに、この地形なら見つけやすいでしょう」

「分かりました。では、報告はまたここへ」

「死体はどうすれば良いですか?全身持ってくることも可能ですが」

「そうですね……可能なら、いただきたいです。民を安心させられるので」

「分かりました。そうしましょう」

「はい。ソラ様、この町をお守りください」

「ええ、任せてください」


安請け合いと言われるかもしれないが、ソラ達なら問題無い。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「兄貴!」


館を出ると、3人が別れたままの状態で待っていた。ドラは何も分かっていないようだが、やはりミリアとフリス(ドラの見張り役)は察しているようだ。


「どうしたんだよ!いきなり領主に呼ばれるなんて……」

「ミリア、フリス」

「ソラ、分かったのね」

「ああ。この町にとっては、予想以上に大変な事態だぞ」

「話は途中で?」

「急いで外に行くぞ。時間がない」


そして4人は町を出て森の方へ進んでいく。そこは今まで訪れていた森とは反対方向だった。


「ドラ」

「は、はい!」

「少し静かにしててくれ」

「あ、兄貴、なんなんです、その殺気……」

「これから言うことを一切漏らさず、驚かず、騒ぐな」

「え、何でだ?」

良いな(・・・)?」

「お、おう……」


殺気に押され、萎縮するドラ。かわいそうだが、これから言うことを考えると必要なことだ。


「ドラゴンとベヒーモスがいる。互いに争っているそうだ」

「そ「黙れ」……おう。だけど兄貴、それってヤバいじゃねえか」

「そういうことね。なら、仕方ないわ」

「早く倒しちゃおっか」

「奥にいるから直接的な被害は出てないが、時間の問題かもしれない。行くぞ」

「……は?」


ただ、こんな簡単に言われると疑問にもなる。


「いや兄貴、何でそんなに気楽なんだよ」

「どうした?」

「オレがSランクまで成長するとしても、まだ早いぜ。無理を言うのはやめてくれよ」

「……なあ、ドラ。何でお前が倒すことになってるんだ?」

「いやでもなぁ……いくら兄貴達が強くたってSランク2体は無理だろ」

「お前も知らなかったのか……」


言ったことは見当違いも(はなは)だしかったが。


「俺達はSSランクの冒険者だぞ?」

「え?……もしかしてあの噂の……?」

「その噂がどんな話かは分からないが、ドラゴンとベヒーモス程度簡単に倒せる」

「なっ……」

「さっさと行くぞ。最後にこれを見せるのも悪くない」


そしてこれも気になった。


「最後だと?」

「ああ。もう俺が教えられることは無いからな。あとは自分で考えて、強くなっていけ」

「まあ、兄貴に認められたなら……」

「ちなみに、今のお前が100人同時に来たって俺には勝てないぞ」

「なんだそりゃ……」


持ち上げられて落とされたドラ。そんなドラは気にせず、ソラ達は森の奥へと進んでいく。今回は比較的(・・・)平坦な道だった。


「はぁ、はぁ……」

「ドラ、遅いぞ」

「兄貴達が速すぎるだけだぜ……こんな岩道、簡単に進めるか」

「簡単に進めないと困るな。こんな場所でも、魔獣は来るぞ」

「そう言われてもなぁ……」

「さっさと行け」


ドラに発破をかけつつ、進んでいく。そして目印である谷のそばを進んでいたところ、ついに見つけた。


「いたな」

「睨み合ってるわね」

「どんな状況なのかな?」

「縄張り争いってところだろう。争ってる最中に奇襲するのが最良か」

「兄貴、そりゃ当然だぜ。ウチの村の狩人連中も、争ってる鹿は終わってから狩ってる」

「なるほど。まあ、もう少し待つか」

「風下だし、多分大丈夫よね」


ドラゴンの鱗は赤く、手足がかなり発達している。地上での活動を念頭に置いた個体なのだろう。

ベヒーモスは獣窟のボスと同じように筋肉の塊だが、体毛は青色だ。魔法を持っているわけでは無いが、個体によって色が違うらしい。


「それにしても、ゴツい体だな」

「切りにくそうね」

「牽制だけだと倒せないよね」

「姉御、それは当たり前だぜ。ドラゴンとベヒーモスが弱いわけねえじゃねえか」

「1撃で倒せるような獲物だけどな」

「…………」


ソラの無茶苦茶な言いようにドラは無言となるが、それでも状況は動く。にらみ合いに耐えかねたのかベヒーモスが突進し、ドラゴンはそれを迎え撃った。


「よし、始まったな。移動するぞ」

「音をたてなければ、もう少し進めるもんね」

「でもドラは……いえ、あれだけ戦ってるなら、問題無いわね」

「姉御、何すか」

「気にしないで。それでソラ、どっちが勝つと思う?」

「そうだな……ブレスを直撃させればドラゴンが勝つな」

「でも、ベヒーモスに簡単には当たらないよね」

「ああ。だから今みたいに、ただの肉弾戦になるってことだ」

「なるほど……だが、ずっと膠着ってのは無いだろ?」

「勿論。さて、もうそろそろ行くぞ」

「もっと弱ってからじゃねえのか?」

「そんなに時間が過ぎてからだと、強い方は俺達に全力を注ぎ、弱い方は逃げようとする。互いにまだ余裕が残っていて、三つ巴になってる方がやりやすい」

「そうなのか……」

「ドラはここで見てろ。ミリア、フリス、行くぞ」


争っている2体には、飛び出した3人には気付かない。そして気付いた時にはもう遅い。


「ふっ!」

「やぁ!」

「いっけー!」


ソラはドラゴンの両翼を斬り裂き、ミリアはベヒーモスの両足の腱を削ぎ、フリスは雷魔法でドラゴンの4足を貫く。


「これで逃げられない。次で仕留めるぞ」

『ベヒーモスの首は私がやるわ。ソラはドラゴンの首をお願い』

『じゃあわたしは心臓だね』

「よし、それで行くぞ」


そして再度3人が突っ込んだ後、ドラゴンとベヒーモスは首を落とされ、心臓を貫かれ焼かれていた。


「っと、これで依頼は完了だな」

「他にはいないのよね?」

「聞いた限りではこの2体だけだ。他にいたら、多分もっと荒れてる」

「でも、いたらどうするの?」

「その時はまあ……他の町から強い冒険者を呼べばいい。もしかしたら、俺達になるかもしれないが」

「なら、いないことを祈るだけね」


隣の町へ行ってすぐトンボ帰りなど、やりたくない。それはソラ達全員が一致している。

ただその3人は、少しの間だが残る1人のことを忘れていた。


「兄貴……」

「ドラ、これが俺達だ。今まで見せなくて悪かったが「すげぇ!」……そっちか」

「何だよアレ!ドラゴンの首が落ちた⁉︎つか何であんなに速いんだよ!」


見たものがド派手だったためか、途轍もなく興奮している。とはいえドラも戦いの経験は多い。少し経つと落ち着き、途端に静かになった。


「すまねえ兄貴、興奮しちまって……」

「まあ、弟子に尊敬されるのは悪くない。気にするな」

「そういえば、Sランク以上との戦いを他の人に見せたのは初めてね」

「そういえばそうだね。じゃあ、仕方ないのかな?」

「そうでもないだろ」


おそらく、これだけ興奮するのはドラだけだろう。むしろ知り合いの中にはまだまだいるとか、考えたくもない。


「さて、いつもの場所に行って、最後の稽古でもするか。最初と同じく、1対1でだ」

「おう!絶対1撃入れてやるぜ!」


そしていつも通り、1撃も入れられずに終わった。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「兄貴、ありがとうございました!」

「いいさ。それより、頭を上げろ」


翌日、フォールの門前にて頭を下げるドラ。弟子卒業ということでもう関わらなくても良いのだが、律儀である。

なお昨日は領主代理から感謝と別れの宴が開かれていた。そしてソラ対私兵の酒呑み大会が開かれていたが……どちらが勝ったかは明白だろう。


「それでも、オレの感謝の気持ちだ。強くしてくれたんだぜ」

「俺がやったのは手伝いだけだ。ドラ、お前が自分で強くなったんだぞ」

「素直じゃないわね」

「うんうん。自分の手柄だ、とか言っても良いのに」

「本当のことだろ」


よくある掛け合いなので、3人とも笑っている。ドラも慣れたようで、少し驚きつつも笑っていた。


「それでドラ、お前はこの後どうするんだ?」

「この辺りでもう少し強くなったら……兄貴達みたいに旅に出るぜ」

「そうか。なら、気の合う仲間を見つけておけよ」

「仲間を?」

「ああ。できればお前に見合った実力の方が良い。1人でできることに限界はあるが、仲間がいれば乗り越えられることも多いからな」

「そうか……他の種族ならオレのことも知らないし、良いな」

「見付けた仲間は大切にしろよ」

「おう」


戦いばかりのこの世界、1人で歩むのは苦行に近いだろう。そういうことを好む人もいるかもしれないが、ソラは弟子にそんなことをさせたくなかった。

こうして話しているのは楽しい時間だが、いつまでも過ごしてしまいそうなのでそろそろ終わらせる。


「じゃあ、ミリア、フリス、そろそろ行くぞ」

「ええ。ドラ、元気でやりなさいよ」

「うん。ドラ君、じゃあね」

「ありがとうございました!」


そうしてソラ達は次の町へと進んでいった。












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