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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第6章 銀の獣と三色の庭

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第12話 魔巣①




「待て待て待て!」

「これは酷すぎだよ……」

「達観しないの!」


ダンジョン魔巣の10階層にある森の中、ここから先が達観したいほど恐ろしいことになっていた。

確かに、出てくる魔獣は格下だ。格下ではあるのだが……


「俺達の武器は銃じゃないぞ!」


叫びたくなるくらい数が多い。全方位を囲まれ、攻撃を受けていた。ダンジョンに攻め込んだのはソラ達のはずなのだが、まるで防衛するゲームのキャラになったかのような気分だ。

そしてアレ(・・)の連中よりサイズは小さいが、戦闘能力は高い。はっきり言って、ソラとしてはまともに相手したくなかった。


「何わけのわからないことを言ってるのよ!」

「急いで!」

「ちっ、降り注げ!」


文字通りの雷雨を落とし、道を開く。だが数が違いすぎ、その道はすぐに埋まってしまった。ソラとフリスは何度も大規模魔法を放ち、ミリアは周囲から襲いかかる魔獣を片っ端から倒していく。


「きりがない……」

「ソラが神術で全部倒したら?」

「焼け野原どころの騒ぎじゃないぞ。下手すれば、地形が滅茶苦茶になる。階段も埋もれるかもしれない」

「そんなに?」

「高威力のものほど球形に破壊が広がるからな。水平方向全方位に綺麗に飛ぶ魔法は……いや、あるか」

「え?」

「伏せてろ。はぁぁ!」


ソラは薄刃陽炎に光を纏わせ、振り回す。刀身を増幅装置とし、切っ先から放たれたレーザーは円錐形に広がり、回転によって全方位を薙ぎ払った。


「凄い……」

「うわぁ……」

「今のうちに走れ!」


周囲全てを掃討したため、しばらくは戦闘しなくてすむ。あの数だと湧きも早そうだが、その前に階段を見付ければ良い。


「さて、どこにあるか……」

「急がないとまた来るわね」

「でも、手がかりが何にも無いんだもん」

「さっきの魔法のせいで、魔力探知も不調だ。地道に探すしかないな」

「そうね……あ、あそこに洞窟があるわよ」

「前にも似たようなことがあったな。あの時は罠の方が多かったが……他に手はない。行くぞ」

「うん」


罠の可能性があっても、他にヒントが無ければ進まなければならない。全方位から魔獣が来るのも相まって、ここはハズレダンジョンという認識で一致した。


「魔獣がいない……罠かハズレか……」

「決めるのが早いわよ?」

「じゃあ、それ以外にあるか?」

「無いわ」

「無いよね」

「だろ?」


そういう認識で、何も出ない洞窟を進んでいく。すると、奥の方に空間が広がっている場所を見つけた。そしてその中には、ビッシリと隙間なく動き回る虫どもがいる。


「これって……」

「ハズレ?」

「いや、奥に階段がある。100m以上先だけどな」


次の階の前にモンスターハウス。何と酷いダンジョンなのだろうか。だが数百程度なら、まだ問題ない。


「さてと、さっさと片付けるか」

「残して追われるのは嫌だもんね」

「何か変な罠があるかもしれないものね」

「おいミリア、フラグを立てるな」


漫才をするような余裕はあるが、誰も気は抜かない。いくら格下とはいえ、死ぬ可能性も十分あるのだから。


「取り敢えず……凍てつけ!」

「飛んで!」


ソラが吹雪を出して周囲を掃討すると、フリスは雷で階段近くまでの魔獣を排除する。そしてできた道を3人は突き進んだ。


「ソラ!」

「どうした?」

「右斜め前の壁、大きな罠があるわ。排除して」

「分かった」


魔獣を巻き込むような形で光魔法を撃ち、罠を誤作動させる。その壁から飛び出した矢は、直線上の魔獣を幾らか貫いた。


「お、一石二鳥だな」


そのまま駆け、階段の近くまでたどり着くと、戦い方がフリスを中心においたヒットアンドアウェイに変わる。ここからは殲滅戦だ。


「これで、最後ね!」

「あ、取られちゃった〜」

「気にするな。それよりミリア、階段の周りに罠は無いか?」

「えっと……あるわね。解除するわ」

「頼む」


ミリアが作業をしている間、ソラとフリスは周辺の警戒を行う。だがここはリポップしない場所なのか、魔獣が出る気配が一切無かった。

そしてそう時間はかからないうちに、ミリアは立ち上がる。


「ソラ、終わったわよ」

「じゃあ、入る、ってうおっ⁉︎」

「ソラ君?」

「どうしたのよ、1人で」


階段を下りようとしたソラは、慌てたように飛び退いた。その右手には細長い何かが握られている。


「これを見てくれ」

「針?なんか大きいけど」

「ああ。これが飛んできた」

「……階段に罠があるなんて初めて聞いたわよ」

「いや、これは……」


針が飛んでこないよう、少しだけ覗き込む3人。そこからは、8本足の巨大な影が幾つも見えた。


「あいつらだ」

「スピアスパイダー……もしかして、また隠れてたのね?」

「魔力探知には反応が無い。その通りだ」

「うわぁ……」

「……厄介ね」

「まったくだ。面倒なことをしてくれる」

「それで、どうするの?」

「ちまちま相手にするよりは……魔法で薙ぎ払う」


風魔法で階段内に局所的な圧力差を生み出し、スピアスパイダーを皆殺しにしたソラ。これでようやく先に進むことができる。


「……もういないな。だが一応、警戒して進んで行くぞ」

「この後も、同じことを警戒しないといけないんだね」

「ええ。調べなきゃいけないことが増えたわ……」

「それは俺がやるから良い」

「良いのね?」

「ああ。殺気を感じ取るのは俺の方が上手いだろ?」

「じゃあ、任せるわ」


警戒する点が増えすぎて倒れないか、かなり心配になる。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「ちっ、また来たか」

「ソラ君、左!」

「分かった。ミリア、正面は頼む」

「ええ、任せて」


数階層さらに下りた先。周囲は森から洞窟へと変化し、次第に蟻の巣のような立体迷路へと変わっていった。

その結果、蜂のいる場所は限られたが、蟻と蜘蛛はより自由に出てくるようになっている。数は相変わらずで、休む暇もない。


「終わらない……」

「休みなしで、どれだけ戦ってるやら……」

「分かんないけど、1日越えてないかな?」

「そう考えると、私達、異常よね」

「今さらだろ」


そうは言っても、問題は大有りだ。


身体強化や神気で体を無理矢理動かしているだけなので、分からなくとも溜まっている疲労は相当な量となっているだろう。いつ崩れ落ちてもおかしくない。


「そろそろ休まないとボロが出るぞ……」

「でも、そんな場所無いわよ?」

「ソラ君、どうするの?」

「そうだな……ん?あの横穴に逃げ込め」

「大丈夫だよね?」

「ああ。行き止まりだ」

「なら、行くわよ!」


幸いなことに、横穴の先は直径10mくらいの広間で、魔獣はいない。ソラは入り口を土魔法で塞ぎ、その外側に結界を張り、さらに外に雷の網を作り出すことで、ようやく休憩場所の確保に成功した。


「はぁはぁ……」

「ふぅ……」

「疲れた〜……」


そして3人はその場に座り込む。だがそれも、丸1日以上戦い続けていたのだから仕方がない。いくら対多戦闘が得意といっても、時間に限度はあるのだ。

だが、最低限のことはやらなければならない。


「ミリア、罠は無いか?」

「ええと……見当たらないわ。魔力系の罠は無いのよね?」

「ああ」

「じゃあ……」

「安全ってことだ」

「良かった〜」


そして今度は倒れこむ。やはり緊張の糸が切れ、疲れがドッと出てきたようだ。動くのも億劫(おっくう)、といった感じである。


「それにしても……こんな場所がある分、洞窟に変わって良かったな」

「森だったら……休憩できる場所が無いわよね」

「ずっと襲われちゃうもんね」

「無理矢理作れなくもないが、消耗は激しいから……実質的には無理だな」


一時的でもそれができるのは凄いのだが、このダンジョンでは役に立たないため評価が下がってしまっている。

もう寝てしまいたい3人だが、やることをやらなければならない。


「さて、料理を作らないと……」

「今は簡単なものでいいだろ」

「そうね、干し肉と野菜のスープにするわ。パンは各自でお願い」

「その方が楽で助かる」

「じゃあわたしは、寝袋を出しておくね。テントは無理……」

「ああ。それでいい」


戦闘の合間に少しずつ食べていたとはいえ、1日分には足りない。疲れた体に鞭打つように、とは言いすぎだが、いつもより鈍い動きで調理していく。

ソラとミリアが料理をしている間、フリスも寝袋だけでなく外用の机や椅子も用意していった。


「できたわよ」

「はーい」

「パンは、そうだな……これにするか」

「ソラ君、フランスパン?」

「ああ。濃いめのスープに合わせるなら、これが1番好きだからな」

「そういうフリスは普通の白パンなのね」

「うん。好きなんだもん」

「そういうミリアはクロワッサンか。好きだな、それ」

「悪い?」

「いいや。子どもっぽいところがあっても良いじゃないか」

「……馬鹿にしてるわよね?」

「いやいや、狼狽えるミリアを見て楽しんだりなんかしてないぞ」

「うんうん。ミリちゃんのあんまり無い姿を見て、面白がったりなんてしてないよ」

「馬鹿にしてるわよね⁉︎」


いつも通り。ダンジョンの中だからと萎縮しないのは、ソラ達の良いところだろう。必要以上に緊張するというのは、体を硬直させてしまうだけなのだから。

そんな雑談の最中、ソラはあることに気付く。


「ん?何だ、この壁……?」

「どうしたの?」

「この先に、変な空間があるんだ。奥まで続いている」

「行くの?」

「勿論、今は行かないぞ?休んだ後に行くつもりだが……良いか?」

「ええ、大丈夫よ」

「うん」

「すまないな。俺の我儘で」

「いいえ、気にしないで良いわ」

「向こうに出るのだって嫌だもん」

「確かに」


その後早々(はやばや)と雑談を終え、3人は眠りについた。

そして翌日。十分な休息を取り、体調を整えたソラ達。睡眠時間に関しては何も決めなかったため、もしかしたら1日以上寝ていたかもしれないが。


「準備良し。2人とも、良いか?」

「ええ」

「うん、大丈夫だよ」

「よし、行くか」


返事を聞いたソラは構えを取り、踵を壁に勢いよく当てた。


「ちょっ、何で蹴るのよ!」

「奥に何かいるかもしれないからな。まあ、いなかったが」

「それにしても、長いね」

「曲がってるわよね?」

「ああ。先が見通せないのは厄介だな」

「問題無いわ。進むだけよ」

「うん。もし駄目でも、また戦うだけだもん」

「心強いな」

「ソラの影響よ」


ここでも幾つか魔獣の群れが出てくるが、この程度の数なら簡単に殲滅されていった。


「少ないな……」

「これでも普段くらいはいるけど……まあ、他の場所よりマシね」

「凄く楽に感じちゃうよね」

「問題は、この先に何があるか、だ」

「そうね……宝箱とかの可能性はあるわよ?」

「近道だと良いな〜」

「確かに。階段がどこにあるか分かってないからな。近くに行けると良い」

「あ、でも、もしかしたら、階段そのものがあるかもね」

「流石にそれは無いだろ」

「こんな所に来ないと先に進めないなんてね」

「でも、意地悪じゃん」

「……確かに」

「無いなんて言えないわね……」


雑談しつつも進んでいく。そうして数百メートル以上進んだ先、そこにある小部屋のような場所には床に空いた穴があり、その下には段々形の岩が続いている。

まさかの正解だった。


「ん?あれは……」

「階段よね……?」

「うん、階段だね」

「フリス、当たったな……」


2人が意気消沈しているが、今度は不意打ちを受けないよう、3人は慎重に調べていく。


「行けるよね?」

「多分な。ミリア、罠は?」

「ここからだと全部は見えないけど……無いわ」

「魔獣もいないよね?」

「隠れてるかもしれないけどな。警戒しながら進むぞ」


なお今後、階段に罠が出てくることは一切無かった。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「いやいやこれは……アレだったらお決まりだけどな……」

「冗談じゃないわよ」

「ダンジョンとして……これって大丈夫なのかな?」

「絶対駄目だろ」


ボス部屋にいるのは、無数の大群だ。蟻、蜂、蜘蛛、それぞれのC〜Aランク魔獣が多数。そしてまとめ役らしき、Sランクのカノンアント、ヘルワスプ、ソリッドスパイダー。蜂系にはAランクの女王蜂、キラークイーンも数体いる。

さらに、全ての蟻と蜘蛛の親であるSSランク魔獣、アントクイーン、キングスパイダー。そしてヘルビーとヘルワスプの親のSSランク魔獣、ヘルクイーン。

その総数……最低でも数千はいるだろう。


「いくらなんでもこの数はマズイ……ミリア!フリス!まずは取り巻きを片付けるぞ!」

「ええ!」

「う、うん!」


今までにないレベルの数差だが、諦めるわけにはいかない。ミリアの双剣が振るわれ、フリスの魔弾が炸裂し、ソラの刀と魔法が蹴ちらす。

だが、状況は一切変化しなかった。


「全然減らないぞ……」

「おかしいよね」

「ああ。いくらなんでも……」

「ちょっとソラ!あれ!」


3人が見たもの、それは普通なら絶望するほど最悪な光景だ。

アントクイーン、ヘルクイーン、キングスパイダー、さらにキラークイーンを合わせた親魔獣からは、卵が数十個単位で絶え間なく産み続けられている。そしで卵からは数秒で生体の魔獣が出てきていた。


「新しく生むとか……ありかよ……」

「あんなの聞いたことないよ……」

「というか、いくら魔獣でもあり得ないわね」

「十中八九、オリアントスだな」

「それでソラ、打開策はある?」

「わたしは無いから……逃げちゃう?」

「そうだな……アレを使うか。一旦扉の前まで下がれ!」


ミリアとフリスは不思議に思いつつも、ソラの言う通り撤退する。追撃は全てシャットアウトした。


「ミリア、フリス、魔獣をここに近付けないでくれ」

「ソラ?」

「何をするの?」

「ただ、全てを破壊するだけだ」


ソラはボス部屋の中心付近に、魔力と神気の塊を作り出す。それは最初風景が歪んで見える程度だったが、次第に光り始めた。

2人は興味深げに見ているが、この時限爆弾を抑え込むのは簡単なことではない。


「あの明るいのってなに?ミリちゃん、来たよ」

「あれが攻撃用だ。あれの準備はもう終わったから、他だな」

「何をするのよ?フリス、左はお願い」

「防御用の結界を幾つも用意しないといけないんだ。急がないと……」

「こっちも厳しくなってきたわね……」

「早く!」

「もう少し……」


これからやることを考えると、結界の強度は少しでも高い方が良い。ミリアとフリスに負担をかけてしまうが、結界は複数を同時に、かつ大量に展開された。


「……よし、間に合った!」


張られた黒い結界のせいで何が起きているかは見えないが、大量の魔力と神気が乱舞しているのは2人にも分かる。当然ながらソラは、何が起きているかを正確に把握していた。


「……ヤバイなこれは」


核融合。魔法だけでなく、神術も使わないと実現不可能なそれは、理論通りの莫大な熱量を放出した。まだまだできる規模は小さく、準備にもかなりの時間がかかるが、破壊力は折り紙付きだ。

またソラは、結界の維持にもかなりの力を使っている。そして破壊の波が収まり、結界を解除すると、その惨状があらわになった。


「何よこれ……」

「滅茶苦茶……」

「まあ、こうなるか」


広間は全方位にわたって融解し、地面は球状に抉れている。あれだけいたはずの魔獣の姿は、どこを探しても見当たらない。


「扉は……無事よね?」

「ああ。向こうにも結界は張っておいたからな」

「あ、あったよ」

「本当ね。地面が光ってて見づらいけど」

「それはまあ……諦めてくれ。あれをやったんだから、こうなるのは仕方ないからな」

「そうなんだ。あれ?……ね、ねえ!あれ!」

「えっ⁉︎」

「……嘘だろ」


未だマグマのように光っている地面の下から、アントクイーン、ヘルクイーン、キングスパイダーの3体が姿を現した。見た目はボロボロで弱っているようだが、まだ生きている。


「残っているとか……いや、神気の保護で助かっただけか。古竜(エンシェントドラゴン)も殺せる威力だからな」

「でも、取り巻きは全滅してるわ。今ならやれるわね」

「うん。準備はできてるよ」

「まず冷やす。その後倒すぞ」


吹雪を吹かせ、マグマを岩に戻す。ついでに魔獣を凍りつかせた。後は狩り取るだけだ。


「さて、誰がどいつをやる?」

「私が蟻をやるわ」

「じゃあ、わたしは蜂だね」

「俺が蜘蛛か。懐かしいな」


それぞれ3方に分かれ、相手取る。


「斬り、裂けっ!」


ソラは刃に光を纏わせて一閃、キングスパイダーを真っ二つにした。


「はぁぁ!」


ミリアは双剣の乱れ切りでアントクイーンの足を全て切り落とし、頭と胴を切り離す。


「落ちて!」


フリスは雷を何発も落とし、ヘルクイーンをバラバラの黒焦げにした。


「2人も瞬殺か」

「まあね。これくらいなら問題無いわ」

「うん。ソラ君のせいで弱ってたし」

「おい。せいで、ってのは何だ。おかげで、だろ」

「はいはい。そんなことより、奥に行くわよ」

「はーい」

「納得いかないが……そうだな」


ようやく終わったと、安心する3人。安堵の表情を浮かべ、奥の部屋へ向かった。

なお、扉の前は地面など無くなっており、開けるのに一苦労していたが、そう大した問題ではない。


「宝箱は……閉まってるか」

「ここを前に攻略した人がいたら怖いわよ」

「オリアントスの介入が無いとしても……先代勇者達ができるかどうかってところか」

「あとは……あの人もだよね」

「ゴアクか。確かにできそうだな」


いつも通り罠が無いかチェックし、宝箱を開ける。そして目玉は、予想通りのアレだった。


「黒い指輪だね」

「オニキスか。これで全部揃ったな」

「そうね……何の意味があるのかしら?」

「それは分からない。だが、使えることは確かだ」

「神器にはしないの?」

「まだだな。まだ足りない気がする」

「オリハルコンがあるのに足りないって……まさか」

「ああ」


オリハルコンならまだ現物が幾つかある。だがそれ以上となると、ミリアとフリスには1つしか思い浮かばなかった。


「伝説、いや神話の金属、イロカネ。何処かにあるはずだ」

「それって本当に必要なの?あるかどうか分からないんだよ」

「多分必要だ。根拠は……勘しかないが」

「そう……なら探すべきね。ソラがそう思うってことは、どこかで必要になるはずよ」

「無条件に信じるのか?」

「何回ソラの勘に助けられたか、覚えてる?」

「……そうか」


こう言われては、ソラは何も言えない。今回の勘は不確定要素満載だが、不思議と信じることができる。ソラとしても、これに逆らうつもりは一切なかった。


「さてと……休むぞ」

「そうね。緊張してばっかりだったもの」

「休める場所もほとんど無かったよね」

「そういうダンジョンだから仕方ないというか……いや、オリアントスのせいだな」

「そうよ」

「そうだね」


飽きたのか、帰りは少し数が少なかったことは、不幸中の幸いである。










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