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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第1章 異世界放浪記

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第11話 商業都市〜王都

「じゃあね、気を付けて行ってくるんだよ」

「ありがとうございました」

「さようなら」

「じゃあね〜」


早朝、日が完全に昇りきっていない時間に、霧隠亭の前でマーヤに見送られる3人。


「出会って数日とはいえど、寂しくなるな」

「気にしない方が良いわよ。生きていればまた会えるんだし」

「わたし達は生き残る事を考えていれば良いんだよ」

「それもそうか。2人共、ありがとな」

「初心者へのアドバイスよ」

「仲間だしね!」


話しながら歩いていくと、東門の前の通りに出た。

そこには何台もの馬車があったが、依頼書に駐車場所が書いてあったため、ソラ達は目的地へ一直線に向かう。


「ハーダー夫妻ですか?護衛の依頼を受けた者ですが」

「はいはーい、今行きますねー」


ソラが声をかけると、そのまま女性が降りてくる。

その姿は……


(ネコ耳……獣人か。その手のオタクなら歓喜しそうだな……)


「ミリアとフリスじゃん!久しぶり!」

「久しぶりね、マルカ」

「久しぶり〜」

「お久しぶりです、ミリアさん、フリスさん」

「……知り合いなのか?」


ネコ耳ネコ尾を持つ、猫獣人だ。それも夫婦そろって。また、ミリア、フリスと同じくらいの歳のように見える。


「自分達はミリアさん、フリスさん両方のご両親と取引をさせていただいているのですよ。ところで貴方は?」

「失礼しました。俺はミリア、フリスとパーティーを組んだソラと言います。冒険者10日目の若輩者ですが、よろしくお願いします」

「ソラ、そんな堅苦しい言葉使いは止めて。2人共、私達の幼なじみだから」

「そうよ。ウチの旦那はこんなんだけど、あんたは普通にすれば良いから」

「なら、そうしよう。改めてよろしく」

「よろしくお願いします」

「こっちこそ、よろしくね」


挨拶の後、ハーダー夫妻は馬車を動かす準備を始め、すぐに終わった。


「それじゃあ行くよ!ちゃんと乗ったかい?」

「ああ、乗ったぞ」

「大丈夫よ」

「乗ってるよ〜」

「じゃあ、出発!」


ハーダー夫妻は前の御者席に、ソラ達3人は後ろの荷入れ口の方に乗る。

その状態を門番に見送られつつ、5人を乗せた馬車は一路、王都ハウルへ向かって動き出した。

動き出したのだが……


「……遅いな」

「そう?」

「こんなものだよ?」

「全ての馬がか?」

「う〜んと、騎士団には速い馬もいるらしいけど、普通はこれくらいのスピードだよ」

「そうなのか……俺の世界にいた馬は、もっと速かったからな」

「へぇー」

「そうなんだ〜」

「何の話をしてるんだい?」

「ハウルについてだ。俺は初めて行くからな」

「王都はいい町だからねー、期待して良いよ」


この世界の馬の大半は、地球で言うところの重馬で、人が歩くのと変わらない程度の速度しか出せない。

その代わりに力強く、少なくても20日、多いものだと50日以上重い馬車を引いたまま旅を続けても大丈夫な馬もいるほどだ。


「上手く誤魔化したわね」

「当然だろ。2人は仕方ないが、出来れば秘密を知っている人は作りたくないからな」

「それもそうだね」

「それよりも、魔獣や盗賊の対策は大丈夫か?この辺りは平原だから直ぐに分かるが……」

「大丈夫よ。ハウルまでの道は殆ど同じなんだから。森まで近くても50m位ね」

「それなら安心か。何処かの町で森で囲まれた道があったら、降りて歩けば良いんだし」


そのまま馬車に揺られていく3人であった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「結局昼間は襲撃無しか。これからの方が注意しないといけないけどな」

「じゃフリス、結界よろしく」

「分かった〜、ん〜と……バリアフィールド!」


半日旅をし夕方、道の脇にある少し開けた場所にて夜営することにした5人。そこの安全確認は冒険者であるソラ達の役目だ。

フリスが唱えると同時に、馬車を含めた直径20mの範囲に、透明なボウルのようなものが張られる。

それと同時に、風や匂いの動きが無くなる。


「へぇ、これが結界か」

「そうだよ。この中にいれば、魔獣も殆ど来ないんだから」

「匂いとか、音が遮断されているからか?外は見えているが」

「そんな感じだよ」

「じゃ、俺もかけるか。……こんな感じで……イスペル!……ついでに……ケアフル」


ソラがそう言うと、フリスの張った結界の上に、もう1つ結界が張られる。

その直後、周囲からの気配が大きく変わった。


「ソラ?何をやったの?」

「風と光にも影響を与える特別性の結界さ。バレにくさは上がったと思うぞ?」

「こんな魔法をポンポン出すなんて……」

「おーい!出来たよー」

「夕食だぞ、行かないのか?」

「フリス、諦めましょう」

「……うん」


落ち込むフリスをほぼ無視し、夕食が始まる。話がかなり盛り上がったため、夕食を食べ終えた頃には、日も落ちて暗くなっていた。


「さて、もう寝るか。外には俺が居るから、2人はテントの中で良いぞ」

「大丈夫?寒いよ?」

「魔法を使えば問題無い。焚き火もあるしな」

「なら、お言葉に甘えておくわね。フリス、行きましょ」

「そんな風にも魔法を使えるんだね……」


ちなみに、結界は両方共この場に固定されており、術者が解除しなければ、寝ていても問題無い。

ミリアとフリスはテントの中で寝袋に入り、ソラは木にもたれて、毛布を被って寝た。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








『ビービー』

「んあ?敵襲か?」


真夜中、静かな森の中に電子音(・・・)が鳴り響く。

ただし、起きたのはソラだけだ。


「ケアフルが上手く働いてくれたか。敵は……こっちだな」


そのまま結界の端を通り、馬車を挟んだ反対側に行く。


「ゴブリンが……7体か。こんな時間にもいるんだな」


そのままソラは2枚の結界を素通り(・・・・・・・・・)し、夜営地から10m離れた所に居るゴブリンを観察する。


「丁度良いし、魔法の実験でもするか。まずは……グラビティ」


魔法により、ゴブリン達は膝を折る。

その名の通り、ソラが使ったのは重力魔法だ。今は5G、体重を5倍にしたのと同じ状態である。


「へえ、この程度でも結構強いんだな。次は……ブラックホール」


ソラがそう言うと、ゴブリン達の中央の上1mの地点に、直径10cmの黒い球体が現れる。

ゴブリン達は抵抗するも、その球体に飲み込まれていった。


「っと、解除……残ったのは肉塊だけか」


ゴブリンが居た場所は、土がブラックホールに吸い込まれた為にクレーター状になっていて、その中央に赤黒い塊が落ちていく。他にも、周りの木もブラックホールの影響が出る範囲内に有った枝は全て折れてしまっていた。

それもそのはずで、ソラの使った魔法、ブラックホールの引力は50Gもあるのだ。

これを体重80kgの人間に使うと、4tの力で引き込まれ、押し潰されることとなる。魔法を使ったとしても、余程の存在でない限り耐えられないだろう。

グラビティとブラックホール、この2つは重力を伝える素粒子である重力子(グラビトン)の発生させる力を増幅、更に方向を変化させる魔法であり、重力を操る等という簡単なイメージでは実現出来ない魔法だ。ソラ自身も、何度も試行錯誤した結果として、使えるようになったという物である。

なお、ブラックホールで出てきた黒い球体自体は何の効力も無いただの黒い空間である。黒い穴(ブラックホール)という名前からソラがイメージしただけであり、必ずしも必要というわけでは無い。


「ふぁ〜あ、さっさと寝るか」


肉塊を燃やしたソラは、また結界を素通りし、元居た場所で寝たのであった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「ソラ、おはよう」

「おはよう、ミリア。フリスはまだ寝てるのか?」

「そうよ。まあ、直ぐに起きてくるでしょうけど」


翌朝、テントから出てきたミリアがストレッチをしていたソラに声をかける。

ミリアは、流石に年単位で冒険者を続けているだけあって、既に戦う用意もできている。


「夜、何かあった?」

「いや、何も無かった(・・・・・・)ぞ。確認してみたが、結界に損傷も無いしな」

「そっか……じゃあソラ?」

「何だ?」


普通に嘘を吐くソラ。ミリアは何も気にせず、ある提案をする。







「戦ってみない?」







「俺とか?」

「他に誰がいるのよ」

「まあ、良いぞ。魔法は身体強化のみで良いか?」

「私を気遣って?」

「違う、正々堂々戦いたいからだ。付加も放出系も余分だろ?」

「それもそうね。当然だけど、相手を傷付けるのは無しよ」

「了解。じゃあ、やるぞ」

「そうね」


少し広い所に移動した2人は、互いに2m程離れて構える。

ミリアはソラに対して正対し、双剣を少し持ち上げた格好だ。

対するソラは、右肩が前の半身で右手に薄刃陽炎を構え、左手は引いている。


「先手は譲るぞ」

「それじゃあ、お言葉に甘え、って!」


ミリアはソラに向かって突っ込み、左手の剣を斬り払い、右手の剣を突きに使う。


「ふぅ、はっ!」

「うっ」


ソラは、斬り払いは刀の峰を斜めに当てる事で逸らし、突きは左手で手首を掴む事で抑える。

そして掴んだまま左手を引き、刀を顔に向けて振る。


「くぅっ!」

「ちぃっ!」


だがミリアは屈んでこれを避け、引き戻した左手の剣で突きを放つ。狙いは胴だ。

それを見たソラは、掴んでいたミリアの右手を押し放しながら、バックステップをする事で距離を取る。


「はぁ!」

「ふん!」


ミリアはそのまま踏み込み、左手の剣で突きをしつつ、右手でも攻撃の準備をする。

ソラは右足を斜めに出し、左手で裏拳を放ってミリアの突きを逸らすと、左足で足払い、刀で斬り払いを時間差で仕掛ける。


「くっ!」

「はっ!」


ミリアは足払いを受けた直後、右斜め前方に前転をする事で斬り払いを避ける。

それを見たソラは追いかけ、右足で回し蹴りを放った。


「はぁ!」


左手を斜めに構える事で蹴りを逸らしたミリアは、そのまま加速して右手の剣で突きを放ち、左手の剣で上段から斬る。


「ちぃっ!」

「わっ!」


上段斬りを半身になって避け、刀を使って突きを逸らしたソラは、左手で掌底を顔に向けて放つ。

ミリアはそれを前転する事で避けた。


「はぁ!」

「くっ」


前転はソラの直ぐ横で止まり、ミリアは右手の剣で斬り上げてきた。

ソラはバックステップをする事で躱す。


「そこっ!」

「くそっ!」


バックステップで体勢が崩れたソラに向かって、ミリアが左手の剣を突く。

ミリアの剣は決まった







かに見えたが……











「ふぅ、危なかった」

「私の負け……か」


突きが来た瞬間、ソラはミリアの左手を右足で蹴り上げ、そのままミリアの後ろへと回り込み、首筋に薄刃陽炎を当てた。

戦いを終えた2人は武器を仕舞うと、呆気に取られている同行者の方へ向かう。


「それにしてもミリアは強いな。あれ以上だと、俺は6人しか知らないぞ」

「そう?ありがと。ちなみに、ソラはその6人と戦ったらどうなるの?」

「全敗だ。3人には暫く競り合えるだろうけど、そのうち負ける。残りの3人は勝てるかもしれないが、負ける確率の方が高いな」

「へぇ〜凄い人もいるんだね〜」

「……言う事はそれじゃ無いでしょ……」

「……何をやっていたんですか……」


2人の実力には見慣れていたため、普通にいられるフリス。初めて見た為に、驚き呆れるハーダー夫妻。

差ができるのも当然だ。


「何って、模擬戦をしていただけだけど?」

「……あれで?」

「私もソラも、殺す気じゃ無かったわよ?」

「……ミリアも化物になったね……」

「ちょっと⁈」


その後暫くミリアとマルカの喧嘩は続いたが、その間に準備は終わり、ハウルへ向けて再度動き出した。


「ソラ君、さっきの強い人って?」

「当然、元の世界でだ。2人は師範で、残りは師範代だな」

「ソラの前の世界って事は、魔法無しよね……その人達本当に凄いわ。

ところで、師範とか師範代って何なの?」

「あ〜……どう説明すれば良いのか……」


上手く説明出来ず、暫く悩むソラだった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「ここがハウルか……」

「そうよ。イーリアの何倍も大きいんだから」

「美味しい物も多いんだよ!」

「皆さん、ここまでで十分です。護衛、ありがとうございました」

「これをギルドに持って行けば良いさ」


ソラとミリアの模擬戦から3日後の夕方、5人を乗せた馬車はハウルの門前に着いた。

ハウルの城壁は、高さがイーリアの2倍はありそうな石壁であり、上には何人もの兵士が見える。首都として、当然なだけの防備を揃えているようだ。

そんな感想をソラが抱いている間にマルカが出したのは、依頼完了の証明書だ。これを冒険者ギルドで見せれば、報酬が手に入る。


「ここで良いのか?」

「この後あるのは、門兵の検問だけだからね。商人は時間がかかるから、何時までも居てもらうのは悪いじゃないか」

「そうか、じゃあ貰うよ。ありがとな」

「さようなら」

「またね〜」

「さようなら」

「今度会ったら、またよろしくなー」


ギルドカードを見せ、ハウルの中に入った3人。目の前に見えるのは、イーリアには殆ど無かった、3階建ての建物が幾つも並ぶ大通りだ。


「中もまた凄い町並みだな。それにしても……イーリアに比べて、亜人が多いな」

「ハウルの先には、自治都市フリージアや学術都市ステイドっていう町があるのよ。その2つの町には亜人が多いらしくて、ここに来る亜人も多いそうよ」

「それに、商人には人間が多いの。だから、イーリアには亜人の人が少ないんだよ」

「へぇ、そうなのか。ああそうだ、ギルドに行く前に宿を取っておかないか?」

「そうね、そうしましょ」

「賛成〜」


その後、宿を取った3人は、ギルドで報酬を貰い、活動の手続きをした後、宿へ戻っていった。






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