表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第6章 銀の獣と三色の庭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/217

第7話 風宮①


「今さらだが……とんでもない場所だよな」

「うん。見たこと無いもんね」

「こんなの、神気がないと無理よ」


ここでは雲のような白い物体が通路となっており、空中立体迷路が形成されている。幅は広めだが、通路の左右に柵などの気が利いた物は無いため、踏み外せばどこまで落ちるか分からない場所だ。

また階層として区別されている様子は無い。そのためソラ達は、行き止まりを避けて進むしか方法がなかった。


「そのせいで、かなり時間がかかってるけどな」

「終わりが分からないからよ。階層ごとならまだ別なんだけど……」

「入り口が見えないくらい、遠くまで来ちゃったもんね」

「本当、早く抜けたい……ちっ」


面倒なダンジョンは早く終わらせたいが、そう簡単にはいかない。ソラは振り向きざまに左手を振るい、5本の光線が放った。


「邪魔をするな」


それにより、空から来た鳥型の魔獣が撃ち落とす。この程度ではミリアもフリス(獲物を取られたが)も大きな反応しない。


「また来たよ。今度は床に50匹くらい」

「よく来るわね。この程度の数だったら問題にもならないのに」

「試すにしても、少なすぎるよな……何か考えがあるのか?」


光宮と比べれば、試練的な要素さ薄い。疑問に思うのも当然だった。

だが魔獣が近づいてきているので、すぐに戦闘態勢をとる。


「さてと……ウィンドバイソンか。少し面倒だな」

「前は大丈夫だったけど……」

「問題になるのよね?」

「ああ」


獣窟では他の魔獣とともに、殺虫剤をかけられた虻蚊のごとく倒されていたAランク魔獣だ。だが同族のみと群れていると、その特性から厄介になる。


「ちぃ!」

「やっぱり、近寄れないわね」

「こんなの多すぎだよ」


群れが暴風となって突進してきた。ウィンドバイソンは全身に風を纏って突撃する魔獣で、同族と一緒ならば相乗的に強くなる。気性が荒く、普通なら1体、多くても4体程度なので大きな問題ではないが、今回は魔法が弾かれる程の大問題だ。

だが……


「今だ!」

「うん!」


止まってしまえば、その風もやんでしまう。

方向転換のために群れが静止した瞬間、ソラとフリスは魔法を放つ。そして守るもののない魔獣など、紙のごとく引き裂かれた。


「やっぱり、こういう相手とミリアは相性が悪いな」

「ええ……遠距離攻撃ができないと、こうなるわね」

「何か投げたら?ナイフとか」

「投擲をやっても、効果は低いぞ?あれは正確に投げてこそ意味があるからな」

「ほとんどやったことのない私じゃ、弾かれるだけよね」

「そっか……じゃあ、どうするの?」

「このままやるしかないわね。何か身につける努力もするべきだけど……」

「まあ無理なら、俺達がサポートすれば良い。そこまで気負うなよ?」

「ええ、分かってるわ」


3人は空中迷路を進んでいく。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「掃討完了、か」

「やっと休憩できるわね」

「多かったもんね」


通路と比べてかなり広い広場を占拠し、結界を張って野営の用意を始める3人。夜の無いダンジョンだが、リズムを狂わせるわけにはいかないのだ。

元々ここには、グリフォンやジズ(大型Sランク魔獣)に加え多数の小型魔獣がいたが、ソラ達の障害にはならなかった。多少時間を稼いだ程度だ。


「それにしても、休憩するのに適した場所が少ないのはどうなんだ?」

「逆に言えば、魔獣の大集団と戦うことが少ないってことよ。普通の冒険者には、かなり辛いわ」

「俺達には無関係だろ。100以上が一斉にきてたじゃないか」

「大型も普通にいたもんね」

「私達には無関係でも、他の人には関係あるわよ」

「まあ……他に来るかは分からないが、コンセプトは分かるな」


SランクやSSランクをぶつけても倒されるだけなら、何度も戦わせて消耗させる。このダンジョンのように広い空間なら、魔獣を集めることも容易だ。……流石に、ソラ達が戦う数は異常なのだろうが。


「落ちちゃった魔水晶が多かったのは残念だったね」

「仕方ないわよ。こんなダンジョンすら初めてなんだしね」

「足場以外進めないってのはな。魔湖と少し似てるが……他にもあったら、それはそれで苦労するだろうが」

「ない……はずよ。未発見のダンジョンがそうなら別だけど」

「未発見……いや、あってもおかしくないか」


話をしていても、手は動かす。ミリアが調理している間、ソラはレンガと土魔法でカマドを作りつつ、手伝っていた。


「ソラ、火をつけてもらえる?」

「ああ、分かった。どうすればいい?」

「火力は強めで、小さな火が良いわ。フライパンが小さいもの」

「こんなものか?」

「ええ、ちょうど良いわね」


指輪の中には炭も入っているが、ソラが調節した方が酸素は消耗しないし早いし正確だ。コンロみたいに使われてるのだが。

とはいえそのおかげで料理は完成する。ダンジョンの中ということで、手早く作れる簡単なものではあるが、味に手抜きは無い。


「これで完成よ」

「魔獣が来てたみたいだな」

「でも、全然だったよ。Bランクだけだもん」

「この辺りの魔獣は一通り殲滅したからか……いや、それにしても湧きが早い」

「そういう場所なんでしょ。数で押してくるダンジョンなんて、他にもあったものね。それより、冷めるわよ?」

「あ、食べる食べる」

「勿論、食うぞ」


1度話し込みすぎて料理が冷めきってしまった時、ソラとフリスは2度としないと誓っていたりする。


「さて、このダンジョンについてだが……」

「間違いなく風の精霊王よね」

「ボスは風の古竜(エンシェントドラゴン)だよね」

「ああ、その通りだろうな。これで外れていたら、精霊王のセンスを疑う」

「あからさますぎるもの。でも、仕方ないと思うわよ?」

「どういうこと?」

「精霊が、それも精霊王が、自分の司らない属性をここまで自在に操れると思う?」

「確かにな。得意不得意どうこうじゃなく、他が使えない可能性は十分ある」

「そっか……じゃあ、ソラ君が中心になっちゃうね」

「土や氷は有効だろうからな……もっとも、威力が高ければそんなに関係なさそうだが」

「それもそうだね」


食事を終え、片付けを済ませた後は大抵このように話している。当たり前だが、寝るのが遅くするような自殺行為をしたりはしない。


「さて、もうそろそろ休んだ方が良くないか?」

「あまり長く話してるのも駄目だし……その通りね。じゃあ、警戒はお願い」

「おやすみ〜」

「任せろ。まあ、俺も寝てるけどな」


結界が貼ってあるとはいえ、警戒は必要だ。その役割は、大抵ソラが担っていた。

ソラが最も必要な睡眠時間が短く、かつ警戒しながらでも(明るくても)寝れる。また、魔力探知と同期させて自動で周辺警戒を行う魔法もあるため、ミリアとフリスとは別で寝起きしている。周辺警戒の魔法だけで十分なのだが。

そんなソラだが、今回は少し違う理由で起きていた。


「さて……試してみるか」


ソラは床に神気で3重円を作り、その中に五芒星や六芒星を幾つか描く。そして、声に力がこもるようにして唱えた。


「始源の光よ、終わりの熱よ、今ここに喚び醒まさん……不死鳥の始火」


赤、黄、青、紫。4色の炎が混じり合い、陣の中央で燃え盛っている。そしてソラが神気の流入と止めても、炎は燃えたままだ。


「維持には成功したが、投入した量に比べると弱いか。まだ試行錯誤が必要……ん?」

「気付かれちゃった。凄いね」

「フリス、寝れないのか?」

「うん……それで、何やってたの?」

「設置型の神術の実験だ。アポロンが似たようなことをやってただろ?」

「あの綺麗なの?」

「ああ。まあ、いきなりあの規模は無理だが、この程度ならできそうだったからな。成功とは言えないが」

「規模が小さいんだっけ?でも、最初からできるのは凄いよね」

「まあ、確かにな。これから改良すればいい」

「その意気だよ」


改良というか、魔改造にならないか心配ではあるが……自分達に害があるようには作らないだろう。使われた相手がどうなるかは分からないが。


「さて、早く寝ろよ。魔獣がいつまでも来ないとは限らないからな」

「分かってるよ?でも……」

「どうした?」


フリスはソラの腕に抱きつく。腕を包み込まれたソラだが、この程度で狼狽えるような仲ではない。


「……しばらく、こうしてても良い?」

「まったく。仕方ないやつだな」

「ソラ君のせいだよ?好きにさせたんだもん」

「はは、こいつめ」

「ふふん」


この後、目が覚めたミリアに見つかり、結局3人で寝ることになるのだが……2人だけの時間は、もうしばらく続いた。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「これはまた……」

「……無茶苦茶だね」

「負けたりはしないけど……消耗が大きすぎるわよ」


雲のような階段の影に隠れ、3人は先を伺う。

勿論ソラ達なら、普段からこんなことをする必要はない。だが、今は必要だった。


「さて、どうやって抜けるべきか」

「回り道……なんて無いわよね」

「道は幾つかあるけど、全部警戒されてるよ」

「だが、正面突破だとなぁ……」


風属性だけとはいえ、ドラゴンにエンシェントドラゴン、エレメンタルやエレメンタリアン、さらにSSランクの青龍までいるのだ。大半がSランクだが、これだけの数がいると、消耗が激しすぎる。


「それだけは嫌よ。こんな足場の悪い場所で、あんなにたくさんの魔獣も戦いたくなんて無いわ」

「同時に来られたら、対処できないよ」

「ああ、それだから……ん?……まさか……」

「ソラ?どうしたのよ?」

「周回ルートが決まっているのか?」

「え?」

「ちょっと待て。もし、その通りなら……」


ソラは魔獣を見つめ、観察する。そしてかなりの時間が経った後、ようやく口を開いた。


「……やっぱり、一定のルートを進んでいる。時間によっては死角もあるぞ」

「進めるのね?」

「ああ。かなり注意しないといけないがな」

「じゃあ、そうしようよ。その方が良いんでしょ?」

「こっちだ。行くぞ」


ソラが死角だという場所を通り、ミリアとフリスもそれに続く。2人はかなり心配していたが、見つかったような雰囲気は一切なかった。


「本当に見つからない……死角なんてよく分かったわね」

「エレメンタルの探知範囲は結路で覚えてる。ドラゴン系は視界にさえ入らなければ、音は消すから問題は無くなる。エレメンタリアンだけは予想外だが、今までの傾向から推測はできる」

「凄いね。前はそんなにできなかったでしょ?」

「2人が強くなってる分、俺も何かしらで実力を上げないといけないからな。先読みに繋がるから、優先して上げた」

「先読みって……簡単にできるものじゃないわよ」

「まあ、そうかもな。だが……」

「どうしたの?」

「いや、何でもない」


ソラには何か思う所があるようだが、余計な思考をするような余裕は無い。3人は黙々と歩いていく。


「……順調だね」

「ああ。もう少し苦労すると思っていたが……スムーズすぎる」

「そんなこと考えていたらキリがないわ。今は進みましょう」

「そうだな……ん?何だ、この魔力の流れは……」

「……え?」

「あれ?」


ソラが違和感を感じて振り返り、それに呼応してミリアとフリスも振り向くと……緑色のゴツゴツとした壁があった。


「「「……あ」」」

「グルル……」


生まれた(ポップした)ばかりなのだろう、先ほど通ったばかりの場所に、古竜(エンシェントドラゴン)が立っている。古竜も驚いているのだろう、すぐさま戦闘が起こる気配はない。

だが他にも気付かれた(リンクした)ようで、他の魔獣も集まってきた。こちらは戦意むき出しだ。


「…………逃げるぞ!」

「う、うん!」

「囲まれるなんて悪夢よ!」


そして3人は脱兎の如く走り出す。神気も使った時の最高速度なら、風のエンシェントドラゴンでも振り切れる。背中を追われるが、囲まれるよりはマシだった。


「つーか、何で急に生まれてくるんだ!」


これが誤作動だと知ったのは、少し後のことである。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ