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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第6章 銀の獣と三色の庭

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第5話 結路①



「予想はできていたが……この数は大変だ」

「面倒よね。しかも相手は……」

「私とソラ君がメインになっちゃうね」

「今のミリアなら十分対処できる。頼むぞ」

「ええ、ソラとフリスだけに負担を強いるつもりは無いわ」

「そういうのも良いけど、来たよ」

「フリス、頼む。俺達はその直後だ」


ソラ達へ飛んできた弾幕は、フリスが全て叩き落とす。


「行って!」

「ああ」

「ええ」


そして、ソラとミリアは駆けた。上空では弾幕の相殺……いや、圧倒的な弾幕での蹂躙がおきかけているが、フリスも2人の獲物は残すだろう。

そうして見えてきたのは、数多の結晶体だ。


「数は多いが雑魚だ。フリスの援護もある。やるぞ」

「勿論よ」


キューブ系の魔獣は、魔法に特化しており近接戦闘能力は低い。それでも魔弾を連発してくるのだが、ソラ達なら対処は容易である。

特に難しいことも無く、すぐに殲滅した。


「ふう……ソラ、フリスは?」

「大丈夫だ。こっちに向かってる」

「襲撃されたりはしてないのね。良かったわ」

「ここの連中相手に、フリスが遅れをとるとは思えないけどな」

「それもそうね」


談笑しているソラとミリアのところへ向け、走ってくるフリス。2人には劣るとはいえ、並みの前衛より速い。そんなに時間はかからなかった。


「ゴメン、遅くなっちゃった」

「俺達が速いだけだ。気にするな」

「そんなに待ってないとか言いなさいよ」

「取り繕う必要なんてない仲だろ?それにどちらかと言えば、フリスの護衛をやめて走っていった俺達の方が悪い」

「それはそうだけど……」

「ううん、気にしてないから大丈夫だよ」

「まあ、これは気にしなくて良い話か」

「そうね。それにしても、雑魚相手に手間取ったわね……」

「魔力はそんなに使わない方が良いもん。仕方ないよ」

「使わなくても殲滅できるなら、それに越したことはない。それと……」


大規模魔法を使えば簡単に殲滅できるが、余計な魔力消費は無い方が良いに決まっている。探知できない距離だと失敗も多いため、ソラはやらせようとしなかった。

そんなソラは苛立ちを隠さず、近くの柱に埋め込まれた白い球体を睨みつける。


「面倒なのはこいつだな」

「どういうことよ?ただの水晶じゃない」

「いや、こいつで監視されてる。魔力探知の範囲外から攻撃されたこともあったからな」

「うん。わたしより広かったもん」

「キューブの魔力探知範囲が広いってことは?」

「Bランクでそれはありえない。それに、狙いが甘いからな。直接捕捉していれば、こうはならない」


つまり、報告された地点へまんべんなく撃ち込んでいるということだ。山なりで遅いとはいえ、密度が高いと対処も面倒になる。


「これがずっと続くなら……大変ね」

「ああ。Sランクでも相手をするのは厳しいかもな」

「魔法ももっと使うし……大丈夫かな?」

「フリスは守りに徹してもらうか?俺達の負担は増えるが、キューブ系ならなんとかなる」

「そうね……ソラが魔法を使うのはどうなのよ?魔力量はフリスより多いわよね?」

「そんなに得策じゃない。闇魔法が使えるとはいえ、制御力はフリスの方が上だ。山なりだと魔弾も遅くなるし、俺は接近して早めに殲滅した方が良い」

「うん。わたしは大丈夫だから、お願いね」

「分かったわ。早めに倒してくるわね」


こんなに不利な状態で、奇襲することはほぼ不可能だ。どうしても、先手は奪われてしまう。


「……魔法だ。狙われたな」

「数は?」

「多いよ。100くらいかな?」

「いや、初弾だけなら50だ。魔獣の数もそれくらいだろう」

「でも、いくつかは大きいよ?」

「キューブ以外もいるか……エレメントか?」

「多分。Sランクって感じはしないもん」

「じゃあ、そのつもりでいくぞ」

「私が先行するわ。殲滅には時間がかかるけど、撹乱だけなら簡単だもの」

「フリスの負担も減るし、それで良い」


道中に魔法攻撃を受ける可能性もあるが、ミリアのスピードなら回避は簡単だ。任されたミリアは最高速度で駆けていった。

その後ろをソラは進みつつ、高威力な魔法の進路上に闇魔法を作り出す。すると、ミリアが予想外の連絡をしてきた。


『ソラ、聞こえるわよね?』

「ミリア、どうした?」

『魔獣を見下ろす位置にいるんだけど、キューブとエレメントだけじゃないわ』

「……なんだって?」

『エレメントより大きいわ。読みが外れたみたいね』

「Sランク……エレメンタルか?」

『恐らくそうよ。それで、私はこのまま行けば良いのかしら?』

「……いや、俺が着くまで待て。それで陽動の後、背後から一気に倒せ」

『慎重ね。フリスは?』

「今は俺が援護している。というか、俺に飛んでくる数がかなり増えたな」

『大丈夫なのよね?』

「当たり前だ。フリスも、1人で対処できるよな?」

『うん。警戒しながら、歩きながらでも大丈夫だよ』

『それなら問題無いわね。ソラ、任せたわよ』

「ああ」


ソラは軽く言っているが、ソラ目掛けて飛んでくる魔弾はフリスの半分近くなっている。ただ避けるのは簡単なので、陽動としては十分だろう。

それだけで終わらせるソラでは無いが。


「貫け」


降り注ぐ光の雨がキューブを貫いていく。魔法で防御しようとしたエレメントも、半数近くが核を貫かれていた。

だがエレメンタルは上手く防いだため、核には当たっていない。そして無事なエレメントを統率し、反撃を始めた。それが予定通りとも知らずに。


「牽制とはいえ、この程度か……まあ良い、ミリア!」

「行くわよ!」


背後から襲いかかったミリアにより、エレメンタルの核は破壊された。魔力探知があるとしても、そちらに意識が向いていなければ意味がないのだ。

そのため残るエレメントも2人がかりで掃除されていく。フリスが到着する頃には、魔水晶の回収も終えていた。


「あ〜、遅かった〜」

「フリスの負担を減らしたかったもの。早く終わるのは当たり前よ」

「それでも、あれだけじゃつまらないもん。わたしも攻撃して良かったかな?」

「やめておけ。正確な位置が分からないんだから、魔力の無駄だぞ」

「分かってるけど……」

「はぁ……次はフリスが中心でやるか?」

「良いの?」

「多少なら俺がカバーする」

「やったぁ!」


それほどストレスが溜まっていたのか、フリスの喜びようは凄いものだ。だがそれに対し、ソラの顔は暗い。


「ソラ?」

「いや……フリスのことに気付かなかったのがな……」

「仕方ないわ。適材適所とはいえ、勝てる相手なんだもの」

「まあ、俺達がサポートすへば負けることは無いか」

「ええ。それにフリスの魔力が無くなったら、ソラがやれば良いもの」

「おいこら」


無茶苦茶なことを言っているとは分かっているようで、ミリアは笑っている。だがそれに、フリスが便乗した。


「あ、それなら大丈夫だね」

「フリスも待て。そんな勝手に……」

「え、良いよね?」

「良いわよ」

「……お前らなぁ……」


なおこの後、フリスの魔法乱舞に頭を抱えることになるのだが……ちゃんと予想していたようだ。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













「まさか……いるなんて思わなかったわ」

「王国にいるなんて思うわけないもん」

「ダンジョンとはいえ……」


一辺2mの正八面体、そしてその結晶は透明だ。こんな魔獣、1種類しか知らなかった。


「クリスタルエレメント、こんなところにもSSSランクがいるなんてな」

古竜(エンシェントドラゴン)ほどじゃないでしょうけど、難敵よね」

「魔法で一気に倒しちゃう?」

「距離が近すぎる。光魔法を放ってくるかもしれないし、動き続けるぞ」


まだ戦いは始まっていないが、壮絶な魔法戦になることは予想できる。フリスをかばう余裕は無いだろう。

できることと言えば、早く倒すことだけだ。


「それじゃあ……先手必勝だ!」


無拍子その他諸々幾多の技を使い、一気に最高速度まで加速する。

そして薄刃陽炎を振るい、水晶の体に大きな傷をつけた。


「やった!」

「いけるわね。これなら……」

「いや、無意味だ」


だがクリスタルエレメントは気にした様子もない。負傷部分をすぐさま修復し、魔力を高め始める。


「再生するなんて聞いてないわよ」

「実体じゃなく、魔力でできているのか?……1撃で核を破壊するしかないな」

「それだって簡単じゃないよ。魔法だって強いし、本気だったら近づけないって思うもん」

「だな。じゃあ、避けるぞ!」


クリスタルエレメントから、百を超える光線がソラ達目掛け放たれた。しかも一方向からだけではなく、曲がったりして全方位から迫っている。しかも、マンンガンのように連射してきた。


「どこの弾幕ゲーだ!フリス!無事か⁉︎」

「うん!何とか!」


フリスは防御用の魔弾を放ち、身体強化に神気まで使用して逃げていく。攻撃できそうな時間はなかった。


「俺達がやるしかないな」

「でも、余裕なんてないわよ」


ソラとミリアも、身体強化をフルに使い弾幕を避けている。フリスと比べればまだマシだが、攻撃に転じれるような隙はない。


「……行くか」

「ちょっとソラ⁉︎」


何を血迷ったのか、クリスタルエレメントへ突撃するソラ。だが光線は的確に避け、避けられないものは闇魔法で防いでいる。クリスタルエレメントも焦ったのか、ソラへ火力を集中させた。

そしてそれは、残る2人に余裕ができることを意味する。


「フリス!」

「ミリちゃん!」


そして同時に動いた。その動きは始めから打ち合わせていたかのごとく、連携までもが完璧だった。

もしここで、クリスタルエレメントがソラの排除を優先していたのなら、結果は違っていたかもしれない。だが実際は、ミリアとフリスへ魔弾の大半を放っていた。


「ナイスだ」


気がついた時にはもう遅い。黄と黒と白を纏った薄刃陽炎が核を貫き、クリスタルエレメントの体を崩壊させた。


「2人とも、よく分かったな」

「偶然よ。何も言わなかったから、ビックリしたわ」

「当ってて良かった〜」

「すまない。だが、言ってる余裕は無かったからな」

「それは分かってるわ。だからこそ、何か対策が必要なのよ」

「対策、か……想定パターンを増やすか?」

「そうだね。いろんな魔獣と戦ってきたから、アレだけだと足りないって分かるもん」


奥の部屋に進みつつ、打ち合わせを続ける3人。忘れていることもあるのだが……まだ気付いていない。


「誰か……いや、3人それぞれが囮になるパターンもいるな」

「1つの先に複数選べるようにしないといけないわね」

「でもそれだと、臨機応変に対応できないよ?」

「確かに。その時々で変化するとなると……難しいな」

「そうね、どうしましょう……そういえば……」


と、ここでミリアが思い出す。


「宝箱を開けるの忘れてたわね」

「「あ」」


ちなみに今回のメインは、青色(サファイア)淡い白(パール)の宝石のついた指輪であった。








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