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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第1章 異世界放浪記

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第10話 商業都市イーリア④

「ハウルに行くのは良いんだが……どんな準備が必要なんだ?」

「そうねえ……保存食と水は当然だけど……他は薬とかかな?」

「テントも要るよね。後、火種も」

「テントか……確かにそうだな。けど火種?魔法じゃ駄目なのか?」

「魔法だと簡単に燃え尽きちゃうの。そこまで便利じゃないんだよ」

「そうか……できそうなもんだがなあ……」

「そうだ、魔法薬も買っておきましょう」

「魔法薬?そんな物もあるのか?」

「うん、普通のお薬とは違って、簡単な傷なら直ぐに治しちゃうの」

「ただ、高いのよ。最低価格が1万Gだから」

「おおう。そんなに高いんじゃあ、多くは買えないな」


朝食の席で打ち合わせを始めた3人。

そこへ当然の如く近づく人影。


「何の相談だい、3人共?」

「マーヤさん。私達、イーリアを出る事にしたから、旅の準備について、ソラに教えていたのよ」

「そうなのかい。寂しくなるねぇ」

「色んな町に行くから、暫く帰って来れないかな〜」

「だったら、親御さんにも言っときなさいよ。前に2人が王都に行った時なんて、大騒ぎになったんだからね」

「何やってんだよ」

「私達が悪いんじゃないでしょ!」

「騒いでたのって、主にお兄ちゃんとマリーちゃんだよね……」

「うえ……その2人には会いたくないかな……」

「ソラは来なくて良いわよ。面倒事になるのは分かりきってるから」

「じゃあ、その言葉に甘えておくよ。そうだな……ライガルさんの所にでも居れば良いか。刀談議も出来そうだし」


左腰に下げた薄刃陽炎を見ながらソラが言う。元々日本で剣術を習っており、真剣に触れる機会も多かった空は、武士の魂という感覚にも理解が出来ていた。


「本当、刀のこと好きよね」

「何でなの?」

「まあそうかもしれないけど……武器は戦士の魂みたいなものじゃ無いか?」

「確かに……私にとっては、この双剣は命の次に大事な物ね」

「わたしは魔法だから分からないかな〜」


暫く武器・魔法談議が続くのであった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「おお、ソラの兄ちゃんじゃねえか。今日はどうしたんだ?」

「明日から旅に出る事にしたからな、薄刃陽炎をみてもらいに来たんだよ。旅先でやってもらっても良いが、本人の方が良いだろ?」

「じゃあ、預かるぜ。それにしても旅ねぇ、嬢ちゃん達とはどうなったんだ?」

「あんたは俺の親か。2人にはついて行きたいって言われたよ。今は実家に行って、報告中だろうさ」

「前に色々あったから、報告は必要だな。さて、俺は奥でこいつをみてるが、兄ちゃんはどうするんだ?」

「また刀を見せてもらっても良いか?丁度良いやつがあったら買うかな。もう一振り位なら、持ってても良さそうだし」

「分かった。ちょっと待っててくれよ」

「むしろ、見足りないだろうけどな」


再度開かれた扉の中で、ソラは1振りずつ、慎重に吟味していく。

日本刀の様に反りのある刀は少ないが、その中から自分と薄刃陽炎の型に合うような物を探していく。


「こいつは……流石に合わないか……これも……無理だな……」

「おい兄ちゃん、終わったぞ」

「早かったな。ありがとう、お代は?」

「1000Gだ。それにしても、兄ちゃんって上手いな」

「唐突だな。こいつはかなり多く使っているが、見て分かるのか?」

「当然さ。こいつには刃こぼれどころか、斬れ味の鈍りすら殆ど無かったぞ。かなりの回数使われたはずなのにな。それで、欲しい物はあったかい?」

「いや、無いな。残念ながら、相性が良くない」

「そうかい。そりゃ残念だ」


その後、2人は刀談議に花を咲かせた。ライガルが薄刃陽炎は観賞用であって実戦には向かないなどと言った時はソラが怒り、大論争になったりもしたが。確かに、実戦に使われる刀は幅が厚めの蛤刀(はまぐりとう)と呼ばれるものなのでライガルが言うことにも一理あるが、ソラの技量の前では小さな違いでしか無かった。むしろ細い薄刃陽炎の方が振りやすくて良いと言うほどである。

そうして話をしている中、店の扉が開かれた。


「ソラー、来たわよー」

「ソラ君ー、居るー?」

「2人共、こっちだ」

「何だ、結構仲良いじゃねえか」

「あ、言ってた通りなのね。それでライガル?私の双剣も見てくれる?」

「お……おう……ちょっと待ってろ」


ミリアが放った鋭い眼光に怖気付くライガル。かなり苛烈だ。


「フリス、何かあったのか?」

「お父さん達に話していた時は良かったんだけど、ミリちゃんのお姉さんが来たの。いつも仲が悪いんだけど、さっきは大喧嘩しちゃって……」

「まったくあの牝犬!私の方が年下だからっていい気になるんじゃ無いわよ!」

「……なるほど。それでこんなに不機嫌なのか」

「今日の喧嘩は激しくてね、他のみんなで無理矢理止めさせたんだ」

「お嬢ちゃん、終わったぞ!」

「ご苦労様、はいお金。ソラ、フリス、行くわよ!」

「……どうにかして機嫌を直さないと……」

「……頑張ろうね……」


急に降って湧いた悩みに頭を抱える2人であった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「ん〜美味しい!」

「……簡単に直ったな……」

「……そうだね……」


一昨日も来た大通り、ミリアはここへ2人を連れて来て、ソラに奢らせていた。

そのお陰で機嫌は直ったのだから、そのままにするよりマシなのだろうが。


「ソラ!次はあそこのパフェとロールケーキとチーズケーキとクッキーよ!」

「分かったよ……」

「ソラ君、頑張って」

「……授業料が馬鹿みたいに高くなったな……」

「早くしなさい!」

「はいはい」


まだまだソラはこき使われ続けるだろう。御愁傷様だ。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「ここか?」

「そうだよ。ここには、普通の薬と魔法薬が置いてあるの」

「この町でも1、2を争う位の凄腕の薬師だからね。期待していて良いわよ」

「正直、薬の良い悪いは分かってないけどな……まあ、楽しみにしているよ」


全体の客が3巡する程の時間が経ち、漸くミリアも満足したので、3人は予定通りの買い物を始めた。


「イッヒッヒ、いらっしゃい」

「「お邪魔します」」

「し、失礼します」

「久しぶりだね、嬢ちゃん達。そっちの男は……ふむ、なかなかやり手のようだね。薬は必要無いんじゃないかい?」

「万が一の為には必須ですから。戦いで怪我を負わなかったとしても、何らかの原因はで必要になることもあるでしょうし」

「それはそうだろうね、買いたいなら好きに見て回ると良いさ」

「じゃあ、こっちからね」


店の中に居たのは、ローブで全身を隠した年齢不詳の老婆(たぶん)。町の通りに居たら、衛兵に連れて行かれるだろう。


(……物語の中の悪い魔女って感じだよな……)


この感想は間違っていない……はずだ。

そのソラは、ミリアとフリスに連れられ、木の筒や陶器の壺が並べられた棚の前に行く。


「これは風邪薬…こっちは胃薬と頭痛薬……傷薬と痛み止めはこれか」

「後は軟膏ね。血止めと打撲用くらいかな?」

「魔法薬はこっちだよ〜」

「おやおや、嬢ちゃん達。魔法薬も買うのかい?」

「旅に出るからね。お金もあるし、買っておいた方が良いのよ」

「魔法薬は……全部液体なのか」

「使う時は半分を飲んで、もう半分は傷口にかけるんだよ。どっちかだけだと、効き目が薄いからね」

「分かりました。それにしても高いな……1人3本って所か……」

「それ以上買うと厳しくなるわよね。でも、そんなに使うことも無いだろうし、良いんじゃない?」

「3本でも多いと思うよ〜」


魔法薬は木の缶に入った状態で売られていた。見た目は薄緑色の液体で、ゲームによくあるポーションのようだ。

買う物を決めたソラ達は、老婆の所へ行く。


「これだけですけど、幾らになりますか?」

「風邪薬5本、胃薬5本、頭痛薬5本、傷薬20本、痛み止め20本に軟膏が2種類で計24本、魔法薬が9本かい。合計で9万5700Gだね」

「ありがとうございます、ではこれで。ちなみになんですが、魔法薬ってどうやって作ってるんですか?」

「簡単だよ、材料を混ぜて魔法を使うだけさ。まあ、魔法は薬師ごとに違うから、質も変わってくるんだけどね」

「そうなんですか、ありがとうございます」

「イッヒッヒ、毎度あり」


最後まで不思議な老婆であった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







薬屋の後、色々な店を回って保存食等を買った3人は冒険者ギルドに向かっていた。


「護衛の依頼、ねぇ……上手くやれるのか?」

「大丈夫よ。移動中は殆ど問題無いし、夜営の時だって、結界系の魔法が使えれば楽な仕事なんだから」

「前はわたし達だけだったけど、今はソラ君もいるしね」

「そんなものなのか」

「そんなものよ」

「そんなものだね」


その後5分もすればギルドに着いた。昼過ぎのため、職員と奥で酒を呑んでいる数人以外に人はいない。


「ソラさん、ミリアさん、フリスさん。今日は遅いですね」

「もう昼過ぎよ。依頼を受けてた訳じゃ無いんだからね」

「……ああ、これこれ。これで良いかな?」

「ん〜と、良いんじゃないかな?」

「そうね、偶然ってのも面白いけど。ルーチェ、これお願い」

「今回は1枚だけなんですね。ええと……お、王都へ?本気ですか⁈」

「ハウルだけじゃなくて、他の町にも行くつもりだけどな」

「ここには暫く帰って来ないつもりよ」

「一生戻って来ない訳じゃ無いけどね〜」

「そうなんですか……寂しくなりますね……」


暫し思い出話に花を咲かせる、女3人。互いに長い付き合いだったそうだ。


「では、明日の早朝、東門付近でハーダー夫妻の馬車と合流。そのまま王都ハウルまで護衛となります。よろしいですか?」

「ああ、問題無い」

「良いわ」

「大丈夫だよ〜」


そう言って霧隠亭へ向かう3人。

ちなみに、この後ルーチェから話を聞いた冒険者達は、嘆き悲しみ、ソラへ恨みを向けていたとか。





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