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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

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第23話 光宮①



「綺麗ね……」

「凄い……」

「マジか……」


中は大神殿の様に真っ白な大理石でできており、様々な模様が彫られてた。さらに天井の大理石は明るく輝いており、昼間以上の距離を見通せる。ただ、白だけなので若干方向感覚がおかしくなりそうだった。


「綺麗ではあるが……白すぎて逆に気持ち悪いぞ」

「そんなこと言わなくていいじゃない」

「そうだけどな……それに、こういう一色だけの人工物は、一筋縄ではいかない場合が多いんだよ……」

「そうなの?」

「俺の予想通りなら、な」

「へぇ、どうしてよ」

「それは説明しづらいんだが……」


ダンジョンにはゲームに似ている部分がある。そういったことを考えればなのだが……確証があるわけでは無い。それ故、ただ漠然と警戒するだけだった。


「さて……ここはどんなダンジョンだ?」

「神殿風ってことは、光かしら?」

「そんなに安直かな?」

「その可能性は高いぞ。今までのダンジョンの傾向もそうだったからな。まあ……出てくる魔獣は桁違いかもしれないが」

「だよね……」


精霊王がいると推測されるダンジョンなのだ。護衛として何らかの強大な存在がいてもおかしくないだろう。だがその前に、ソラ達はある物を見付けた。


「ん?何だ?」

「あれって……扉?」

「まさかもうボス部屋ってこと?」

「いや、そんな馬鹿な……違う。仕掛けだ」

「何か付いてるわよ」


扉の真ん中には、1〜8までの数字がバラバラに置かれた板がある。また、真ん中はくぼみになっていた。

④⑧①

⑦②③

⑥⑤


「なにこれ?」

「もしかして……これをどうにかしないと開かないのよね?……どうするのよ」

「なるほど、スライドパズルか」

「スライドパズル?」

「ここをこうして……こうだな」


ソラは迷いなくピースを動かしていき、正解だと思う並びに変更する。

①②③

④⑤⑥

⑦⑧

ミリアとフリスはよく分かっていないようだったが、並び替えるとすぐに鍵の外れる音がした。


「……本当に開いたわね」

「もしかしたら……同じような仕掛けが山ほどあるかもな」

「そうなっちゃったら……」

「ソラだけが頼みね」

「任せておけ」


パズルがあるダンジョンなど他に聞いたことが無い。当然ながら、普通の冒険者はこういうことに慣れていなかった。ミリアとフリスもそうなので、ソラを頼りにするしかない。


「また扉か」

「またあるわね」

「ソラ君、お願い」


先ほどと同じように、扉には数字がはめられている。だが、その並びは違った。

③⑥⑦

② ⑧

④①⑤


「こいつは……さっきと違う?……ああ、こうか」


同じように並べようとしたが、できない。そのため、ソラは別の並びに変える。

①②③

⑧ ④

⑦⑥⑤

こうすると、また鍵の外れた音がした。


「よくそんなに早くできるわね」

「前の世界で死ぬ少し前に流行ってたからな。いろいろとやって慣れた」

「ふーん、それで扉の先は?」

「そうだな、開けるか」


2枚目の扉の先も、同じように白い大理石の通路だ。ただ先ほどまでの1本道とは違い、幾つも分かれ道が存在する。


「意外と普通ね」

「いや、たぶんそうでもないぞ」

「そうなの?」

「ここがパズルのダンジョンなら……この迷路の難易度は他とは比べものにならないだろうな」

「それって……」

「今まで通りには進めないはずだ……魔力探知でルートを探すこともできてないし……」


この中にはジャミングのようなものがかけられており、魔力探知の範囲がかなり狭まっている。今まで使っていた裏ワザも、使用不可能だ。


「精霊に正解の道を聞いたらどうかしら?知らなかったとしても、簡単に分かると思うわよ?」

「それがな……」

「このダンジョンに入ってから、声が全然聞こえないの」

「そう……」


精霊という反則も無いため、地道に進むしかない。だからといって安直に進むのは……ソラに不安が多すぎる。


「じゃあ壁伝いに「駄目だ!」……どうしてよ?」

「落とし穴に落ちたいのか?」

「罠なら分かるわよ?」

「粘壁でのことを思い出せ」

「それは……」

「ソラ君、どうしてミリちゃんの方法は駄目なの?」

「不正解の道には、落とし穴や槍衾(やりぶすま)みたいな罠がある可能性が高いからだ。普通のダンジョンとは違う風に考えた方が良い」

「そっか……じゃあ、何であんなに切羽詰まった感じで言ったの?」

「……1話目であわやヒロイン退場、なんて場面の真似なんか、したくないからな……」

「え?」

「どういうこと?」


あちらの主人公は振り回される側だったが。2人の疑問に答えずソラはそんな思考を捨て、真面目に考える。


「さて、どうやって解くか……規則性があるはずだ……フリス、取り敢えず地図を頼めるか?」

「良いよ〜」

「ミリアは何か気付いたことがあったら教えてくれ。ヒントがあるかもしれないから、罠以外でもだ」

「分かったわ」

「俺が先導する。魔獣が出てきた場合も俺が対処しよう」


そしてソラ達は適当に進んでいく。その途中で何度か行き止まりに当たったりもしたが、即死系の罠は無かった。流石に手元に地図が無いのに、そんな罠を仕掛けるような意地の悪いことはしないようだ。

そのため当初の予想よりは比較的安全に進めているが、1人だけ悩んでいる人物がいた。


「これ、どうして……でも……」

「ミリア、どうした?」

「何か引っかかるというか、そんな感じよ……ごめんなさい、何かは分かってないわ」

「やっぱり、何かあるの?」

「そうだろうな。休憩ついでに考え……いや、先にこっちだな」

「魔獣だね」

「ああ、こいつなら俺だけで対処できる。ミリアとフリスは迷路を解くのに集中してくれ」

「ええ」

「お願いね」


待ち構えるソラの前に出てきたのは、全高80cmほどの白い猿が5匹。ランクはCであり、そう大した相手では無い。


「サンモンキーか。余裕だな」

「ソラ君」

「油断しないでよ」

「分かってる。だが……」


サンモンキー達は跳びはねつつソラへ向かう。だがソラが動いた一瞬で5匹とも体を両断され、消え去った。


「この程度だからな」

「流石、凄いわね」

「いつも通りだろ。それで、何か分かったか?」

「いいえ、何もよ」

「違和感があるのは確実だが分からない、か……何だ?」

「それが分かったら苦労しないわよ。分かってるのは、ほんの少しの違いっていうことだけね」

「まあ、見た目に大きな違いは無いしな」


神殿らしい模様はあるが、区別ができるような違いは見当たらない。というよりも、その緻密な模様のせいで余計に見つけづらくなっていた。

そんな風に探していても、警戒は怠れない。怠らない。


「止まれ」

「どうしたの?」

「そこの角を曲がった先に魔獣がいる。数は……6か」

「ソラがここまで言うってことは……何かおかしいのね?」

「ああ、人型だ。俺より少しデカい程度のな」

「そんなのいたっけ?」

「1種だけ心当たりがある……」


角から顔を出し、3人はその先を覗いた。そこにいたのは、全身が光り輝いている人型だ。そしてその6体は、階段の前で守るように立っている。


「ライトアポストル、Aランク魔獣だ」

「光の人型ね。少し厄介……」

「あ、奥に階段があるよ」

「解く前に見付けたわね」

「どっちにしろ、解かないと永遠とこれを続けるだけだぞ。少なくとも俺は嫌だ」

「わたしもだよ。それで、どうするの?」

「3人でやればいいだろ。もう地図は意味が無いからな」

「そうね。ここまで来たら、やるだけよ」

「うん」

「そうだな。行くぞ!」


ソラを先頭に、3人は通路へ飛び出す。そしてソラ達が姿を見せた瞬間、ライトアポストル達もそれぞれ光で武器を作り出し構えた。そして駆ける。


「光くらい早いわけじゃないんだね」

「まあ、光速だったらSSランクどころの話じゃないからな」

「魔法は速いけど」

「俺がかき消してるから良いだろ」


そして一瞬でライトアポストルは半分に減った。フリスが放った火や雷が牽制し、その隙をソラとミリアが突く。放たれる光魔法は先に展開された闇に吸収されて無効化されていた。

武器を高威力にしたり、光線の数を増やしても、もう遅い。


「ラスト!」

「他には……居ないわね」

「うん。大丈夫なはずだよ」

「階段にも、罠は無いな?」

「変な魔力が無いなら、問題無いわ」

「よし、じゃあ行くか」


ライトアポストルを殲滅し終えた3人は警戒しながら階段を降りるが、ミリアの言う通り罠は無かった。


「この階も変わらないな。さっきと同じように行くぞ」


先ほどと同じく白い通路の中を進んでいく3人。遭遇した魔獣は、特に問題無く倒していく。と言っても、遭遇回数はかなり少ないのだが。


「それにしても、どこが正解なんだろうな」

「分かんないよ」

「……答え、ね……」

「分かった?」

「いいえ、まだよ。候補はあるけど、確定じゃ無いわ」

「そうか……俺としては決まった模様が多い分、分かりやすいかと思ってたがな」

「綺麗だよね。でも、そのせいで分からないのかな?」

「模様?……あ、これよ。やっと分かったわ」


十字路の真ん中でいきなり立ち止まったミリア。その目は床から2mほどの位置にある、外周直径20cmほどの模様に向けられていた。


「ミリア、どうした?」

「何かあったの?」

「ええ、多分これが迷路の答えよ」

「どこだ?」

「さっき通ってきたのも合わせて4つの通路、左右にあるマークが違うわ」

「本当だな。うっすらとだが……後ろと右、前と左が同じか」

「迷路の正解には同じマークがあるってこと?」

「きっとそうね」

「なら、階段下から見直すか。ここだと正解がよく分からない」


この程度の時間なら、迷路が変化することは無い。ソラ達は戻りつつ、模様の中に隠れたマークを記録していった。


「マークはここがこうか……」

「こっちはこれ……3つに分かれているわ」

「こことここは繋がってるね」

「全部同じマークとは限らないか?途中で切れてるぞ」

「え?……あ、本当だ」

「おかしいわね。間違ってはいないはずだし……」

「そういえば……マークは何種類あった?」

「えっと、9種類だね」

「9種類ってことは……1番から9番って番号があるのかしら?」

「多分そうだ。恐らく、交差点ごとに順番に進むんだろうな。そしてどれがどれかだが……」

「探したルートで予想はできるわ。今のところ……4種類よ」

「どれかな?」

「そうだな……ん?……模様が簡単な方が、番号は若いんじゃないか?」

「確かに……そんな感じがするわね」

「進んでみる?」

「ものは試しだ。行ってみるぞ」


そして検討した結果を試してみる。すると偶然にも、1回目で正解を見つけた。


「合ってるな……これだ」

「順調に進めてるものね」

「あ、階段だよ」

「確定か」

「良かったわね」


階段の前には1階と同じようにライトアポストルが6体いたが、瞬殺されては居ないのと同じだ。3人の歩みは止まらない。










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