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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

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第21話 光都ニーベルング①



「宗教の総本山って聞いてたからどんなものかと思ってたが……普通だな」

「3国全部に広がってる宗教は1つだけだけど、教義が厳格って訳じゃないもの。こんなものよ」

「地域宗教ってのもあるらしいけどね」

「そういうのが許されてるなら、厳格じゃないのも納得だ」


ベフィアの住民は感性がかなり日本人に近いため、こういった宗教の方が馴染みやすいのだろう。神道と同じように、生活に根付いていた。

だがそんな中で、気になる点が1つ。


「……そのままの格好で歩いている神官や修道女が多いな」

「他の町だと、着替えてるみたいだったもんね」

「ただ歩いてるってわけじゃないみたいよ」

「何がだ?」

「あそこ、見れば分かるわ」


街の中に幾つかある似た見た目の建物、そこの庭では、神官や修道女が多くの子ども達と(たわむ)れている。そして門の両脇には、純白の鎧を着た騎士が立っていた。


「神殿に関係してるのかな?」

「神殿騎士が入り口にいるもの。きっと、神殿が建てたのよ」

「保育所、にしては大きな子もいるし……孤児院か?」

「はい、そうですよ」


急に声をかけられて、3人は振り返る。するとそこには懐かしい顔がいた。


「あ、クリミさん」

「ええ、お久しぶりです」

「お久しぶりです。こちらにいるということは、栄転ですか?」

「はい。といっても、私のように階級の低い人は、2年ごとに近くの町へ移っていくんですけどね」

「大変そうだね」

「最後の方は1つの町に落ち着いている方が多いので大丈夫です。ちなみに、御三方はどうしてここへ?」

「旅の途中なのよ」

「色んな町に行ってるんだよ」

「へえ……ずっと一緒なんですか?」

「ま、まあ、ね」

「う、うん」

「まあ、夫婦になりましたし」

「あら、否定なさったのではありませんでした?」

「狙っていた、というわけでは無いですから。第一、俺はこの2人に押し倒されましたし」

「そこまで想われてるなんて、良いですね。私もそんな人に出会いたいものです」

「結婚しても大丈夫なんですか?」

「神職と言っても、結婚してはいけないわけではありませんから。地域宗教だと、駄目なところもあるそうですが」

「……ソラ?」

「ソラ君、ちょっと良い?」

「ちょ、2人とも……ではクリミさん、またどこかで」

「ええ、ではまたご縁がありましたら」


連行されていくソラを、クリミは微笑んで見送る。周りも修道女がいるためか、そこまで騒がないでくれていた。


「何であんなに言うのよ。恥ずかしいじゃない」

「知らない町で顔見知りに会ったんだから、仕方ないだろ。口が滑ったのは事実だが」

「あの人が欲しいの?」

「それは無い。断じて無いから信じてくれ」


こういう時に男の方が弱いのはどこも同じようだ。しばらく引きずられたソラは、周りの目線が痛くなってきたあたりで解放された。


「孤児院だと分かったのは良いが、何ヶ所あるんだ?」

「あそこで5つ目だね」

「今思い出したんだけど、孤児はこの町に集められるそうよ」

「そうなのか?」

「ええ。神職の移動に孤児を同行させて、集めてるらしいわ。こうやって面倒をみるためにね」

「この町は神職も多いし、個々で育てるよりは良いのか」


孤児院といった施設はあるが、雰囲気に他の町との大きな違いは無い。巡礼者だけでなく、観光客も多いようだ。


「そして荒くれ者もいる、と」

「まあ、普通はいるわよね」

「魔獣はどこにでもいるもん」


ソラ達の目の前で、ケンカをしていた男達が衛士や神殿騎士にしょっ引かれていく。この程度のことに騎士が関わるのは珍しいが、彼らはよくやるのかもしれない。手際よく連行していく。

だが、急に彼らは立ち止まった。その前には、1人の男が怪しいロザリオを持って立ち、何やら神殿騎士達と言い争っている。


「何だ?」

「……嘘よね?」

「……こんな所で出てくるなんて」

「知ってるのか?」

「魔神の信者よ。色々とやってるわ」

「破滅信仰、どこにでもあるんだな。だが……馬鹿じゃないか?」

「あれは馬鹿よ」

「馬鹿だね」

「まあ、確かにな」

「それに、今は魔神信者はほとんどいないわ。昔は闇魔法が象徴だったらしいけど……闇魔法も使う勇者が出たせいで衰退したのよ」

「事件もほとんど起こしてないしね」

「具体的には?」

「王国中で……1年に1回くらいかな」

「それなら俺達は無視しても大丈夫か」


この1団は暫く言い争っていたが、魔神信者が手を出したことで決着がついた。勿論、神殿騎士達の勝ちだ。


「捕まったか。簡単に終わったな」

「魔神信者って、弱い人が多いんだよ。でも、何でかな?」

「破滅信仰には、自分で何もできない奴がはまりやすいらしいからな。現実逃避とも言うが」

「でも、それに巻き込まれる人は災難よ」

「それはそうだろうな。あいつだって、犯罪者として扱われるんだろ?」

「多分ね。捕まえた後の話なんてほとんど聞かないけど」

「確かに、公表はしないよな……今の俺達ならどうにかなるかもしれないが」

「そうね。SSランクだもの」

「そんなことしても大丈夫なのかな?」

「公的に認められた権力だから、やっても変では無い。やらないけどな」


魔神信者とは今まで何の縁も無かったのだから、わざわざ首を突っ込む必要は無い。バラバラになっていく野次馬に紛れ、ソラ達はこの場を後にした。

もし関わることになったのなら……その時はその時だ。


「さてと、何処に行くか」

「教会は?聖堂とかもあるらしいわよ」

「行きたいとも思うんだが……行くべきじゃないとも思ってるんだよな……」

「なにそれ?」

「勘、というか……ただ、無視するのは駄目な気がする」

「はっきりしないわね」

「俺もそう思う。だが、拒否できないのがな……」


ミリアもフリスも、ソラのこういうことには慣れている。伊達に1年以上一緒にいるわけではないのだから。


「そう……じゃあ、ギルドに行きましょう。登録して損は無いんだしね」

「そうだね」

「すまないな」

「ううん、大丈夫だよ」

「いつものことじゃない。それに、私達の中心はソラだしね」

「……すまない」

「良いのよ」


そして3人は冒険者ギルドへ向かった。だが……


「……もの凄く既視感があるんだが?」

「最初にギルドに来た時もこうだったよね」

「それにしても……久しぶりね」

「なに無視してくれてんだよテメェ」


何故か、大柄な冒険者に絡まれている。周りの冒険者も新入りへの恒例行事と思っているのか、手を出そうとはしてこない。

ただ3人として、こんな低ランク(実力を見抜けない)な相手に絡まれるとは、予想外すぎた。


「はぁ……仕方ない」

「何だテ……」

「少し眠ってろ」


男にかざした手の平から膨大な魔力を出し、魔力過多で失神させる。一瞬すぎて、気付けたのはミリアとフリスだけだ。


「はい?」

「は?」

「え?」

「何があった?」


そのため周りの冒険者達は何が起こったのか分からず、戸惑っていた。そんな中でも、2人はいつも通りである。


「ソラにしては大人しいわね」

「……俺にしては、ってどういうことだ?」

「最初、どうしてたっけ?」

「……全員殴ってたな」

「その後、盗賊も全員血祭りにしてたわよね」

「冒険者狩りにもだよ」

「……確かに大人しい方だな」


実際、ソラはこういった相手を容赦なく叩き潰してきた。遠慮が無さすぎる気もするが、他に害を与えていないのだからまだ許される。というか、マトモな相手に力を振るったことがないのだから当然だ。


「まあ、そんなことはどうでも良いわね」

「そうだな。やることやっておくか」

「ソラ君、頼んで良い?」

「ああ、良いぞ」


話している内容だけを聞けば、犯罪者とみられてもおかしくないかもしれない。というか、ここにいる冒険者の一部には、強盗のように思われているようだ。


「さて、良いか?」

「な、何の用でしょうか?」


そして緊張している受付嬢、ソラは努めて無視する。大方、止めようとしなかったのを責められるとでも思ったのだろう。


「SSランク冒険者、ソラ、ミリア、フリスだ。登録を頼む」

「……はい?」

「SSランク冒険者、ソラ、ミリア、フリスだ。登録を頼む」

「え?」

「SSランク冒険者、ソラ、ミリア、フリスだ。登録を頼む」


持ってきたのはそれ以上の爆弾だったが。九官鳥のように繰り返したソラだが、聞き入れられず……


「「「「「ええぇーー!?!?!」」」」」


ここでも、ギルド中に大絶叫が響き渡った。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「これだけか」

「少ないね。ノルマには足りないよ」

「やっぱり、ハウルへ行ったのよね?」

「多分な……数が少なかったからって甘く見てたか」

「それで、どうするの?」

「手当たり次第に探して倒すしかないだろ」


ゴブリン2匹を斬り捨てたソラ。だが3人はいつも通り大量に依頼を受けたため、これだけでは全然足りない。他の場所も探すしかなかった。


「それで、どこに行くのよ?多分どこも同じでしょうけど」

「そうだな……」

『こっちだよ……』

「そうそうこっち……は?」

「今の何?」

「どうしたのよ?」


突如聞こえた謎の声。それをソラとフリスは確かに聞いたが、ミリアには何も聞こえていないようだ。


「何か声が聞こえたんだが……」

「何も聞こえないわよ?」

「でも、聞こえたよね?」

「ああ……」

『こっちこっち、きゃはは』

「また?」

「何なんだろうな」

「……2人とも大丈夫よね?」

「ああ、たぶん大丈夫だ」

『あのお姉さんは聞こえてないの?』

「うん、そうみたいだよ」

『なんだ、つまんなーい』

『だったら、お兄さんがお話してよ』

「何処かに呼んでるんじゃなかったのか?」

「……この光景、物凄く心配になるわよ」


虚空へ向けて話しかけるソラとフリス。確かに、頭がおかしくなったのかと心配になる。本人達はいたって正常だが、不安は尽きない。


「子どものような声が聞こえるんだよな……正体は分からないが」

「何なのよ、それ」

「ゴーストとか、レイスじゃないのは確かだよ」

「幻術、というか幻聴っていう可能性も低いな」

『あ、そっちじゃないよ』

「じゃあどこ?」

『君から見て右だよ』

『行きすぎ行きすぎ……そうそこそこ』

「こっちか」

『そうこっちこっち』


よく分からないが、何処かへ誘導しようとする声。そんな声の中には……


『ここだよ!ここ』

『早く早くぅ!』


こんな催促もあった。こういった声を手掛かりに歩き続けることしばらく。


「何処に行かせたいんだ?」

『すぐに分かるよ』

『もうすぐ見えるよ!』

「もうすぐって、いつ?」

『その先だよ』

「あ、森が終わる、って……何これ?」

「何よ、これ……」

「何だこれは?」


森を抜けた先、そこにはダンジョンのような、それでいて異常なほど力の出ている白い扉があった。











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