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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

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第12話 魔法都市ネイブ①


「なるほど」

「あ、そうなんだ」

「へぇ、こういうこともあるのね」


魔法都市ネイブ。研究熱心な魔法使いが多数在籍し、日夜発明と失敗が繰り返されている。また学園都市よりも魔法に重点を置いた学園が存在していた。


「あれ?何の音?」

「また実験の失敗だろ。気にするな」

「遠いし、気にしなくても大丈夫そうよ」


高価な魔法具の生産も、多くがこの町で行われ、大陸中に運ばれていく。近くのイーリアやハウルからも、よく行商人が来ているようだ。

そして研究が主軸である故に、充実しているものもある。


「なるほど、そういうことか」

「こんな魔獣もいるんだね」

「知れて良かったわ……」


図書館に置かれている本の数は各国首都に負けていなかった。また特に町の性質上、魔法や高ランク魔獣に関する書物は多い。ソラ達は熱心に読み漁っていた。


「ソラ君、よくそんな難しいのを読めるよね」

「難しいか?」

「うん。言い回しとか、表現とか」

「確かにそうかもな。俺は慣れてるが」

「それって……前の世界で、よね?」

「その通りだ」


ソラの読んでいる書物は論文系の難解な物が多い。といってもベフィア基準であり、日本の教育からすると高校生レベルなので、ソラには問題無かったりする。勿論、専門的な数式などが出てきたらお手上げなので、そういったものが無さそうな本を選んでいるが。


「やっぱりこういうのも参考になるな」

「知らないことも多いから?」

「ああ。他の属性はどうでも良かったりするが、闇と光に関しては色々ある」

「どんなのがあるの?」

「主に闇の魔法無効化と光の浄化だな。闇は他の魔法の魔力伝達を阻害することで無効化しているみたいだ。光はそれを排除する効果があり、その結果浄化の効果もついたらしい」

「へえ、そんなのもあるんだね」

「ただな……いくつか不明瞭な部分もあるし、矛盾点もあるな。これだと俺が魔力を吸収できる理由が説明できない」


ソラは理論と実感を合わせることができたため、こういった違和感も敏感に感じ取れた。とはいえ……


「理論としては間違ってないんだろうが……何かが足りないな」

「気にしても解決しないと思うわよ。使えてるんだしね」

「……それもそうか」


ミリアの言う通り、気にしたって仕方が無い。ソラは考え込むのをやめ、また新たな本を手に取った。


「次は何?」

「神話だ」

「でも何でわざわざ調べるのよ?知ったってどうにもならないわよね」

「俺が普通ならな。オリアントスに喚ばれて力を埋め込まれたんだから、こういうものの中にヒントがあってもおかしく無いだろ?」

「そうね……フリス、他も持ってくるわよ」

「はーい」

「いや、そこまでしなくても……」

「いいのよ。ソラの手助けだったら何でもするわ」

「わたし達は一通り読み終わったしね」

「分かった。じゃあ、頼む」


そうして2人が集め、机の上に積み上げられた本の山は……座っているソラの目線より高い。たった6冊なのに、だ。


「……多いな」

「これでも全部じゃないわ。同じような内容のものは持ってきて無いし、分かりやすく要約されたものばかりだもの」

「覚えてるのか?」

「全部は無理だよ。多いもん」

「そういえば、ソラって何で読まなきゃいけないのよ。知識はあるんでしょ?」

「残念ながら、神話部分はほぼ入ってないからな。どうでもいい雑談だけだ」

「ならいるわね」


多少気落ちしつつ、ソラは本を手に取って読んでいく。その5冊の内容を要約すると、以下の通りだ。


「創造神と主神が出会い、1つの世界を創り出した」


「その世界には最初何も無かったが、2柱の神は子供の神々と共に様々なものを創っていった」


「創造神が大地を、主神が人間(ヒューマン)を、長女が草木を、長男が魔獣を、他の兄弟達がエルフ、ドワーフ、獣人達を創り出した」


「全ての種族はともに栄え、神々とともに繁栄した」


「だがそんな中、長男が魔神に堕ちた」


「魔神は魔獣を率い、他の種族を襲った」


「幾多の犠牲が出た末、神々は残る種族とともに魔神との決戦に臨んだ」


「激戦の末に魔神は封じられ、生き残った神々は天界に籠るようになってしまった」


「だが魔獣は敵対をやめず、人と魔獣は相争っていく」


この間にも細かい神話はあるが、大筋には関係無い。その中で、ソラは1つのことが気になった。


「魔神、か」

「ええ。そのせいで魔獣や魔王は人と敵対するらしいわ」

「どうにも和解はできないんだって」

「その辺りは宗教家が勝手に変えた可能性もあるから微妙だが……多分無いだろうな」

「根拠があるのね?」

「ああ。オリアントスは適当に入れただけみたいたが……少なくとも神対魔人の戦いがあったことは確かだ。オリアントスは参加してないみたいだが」

「神話通りだね……」

「まあ、あいつはそんな奴だからな」


現状唯一神であるが、誘拐されたソラからすれば嫌な奴でしかない。とはいえそんなことを長く気にすることなく、6冊目を手に取る。


「次はこれか」

「初代魔王と初代勇者だね」

「それに最後ね。神話はこれで終わりよ」

「勇者が最後なんだな。これは歴史だと思ったが……ちなみに、今まで勇者って何人いたんだ?」

「えっと……12人だよね?」

「そうよ。半分はこの世界出身で、もう半分は召喚された人のはずだわ」

「意外と召喚勇者の数が多いんだな……さて、読んでいくか」


そして開き、読み進めていった。最後の1冊、その内容は次の通りだ。


「ある日、魔獣の中に魔王と呼ばれる強力な個体が出現した」


「魔王は魔獣を従え、人々を攻撃した」


「人々は争いをやめ、協力して対処したが敵わず、次々に殺されていく」


「そんな時、天啓を受けた勇者が現れる」


「勇者は聖剣を持ち、従者とともに魔獣達を次々と破っていった」


「そして勇者は魔王と対峙し、従者とともに戦う」


「激戦の末勇者は魔王を討ち取り、平和が戻った」


……普通である。


「……普通だな」

「何を期待してたのよ」

「神話の最後っていうから……余波で山脈が消し飛んだとか、海が割れたとか」

「そんなの……無いよね?」

「無かったはずよ。第一、そんな余計なことやる意味無いじゃない」

「まあそうだが……」


実際、そんな余計なことをする必要は無い。アニメなどでは派手でカッコ良いのかもしれないが、実戦では命取りになりかねないことだ。


「それで、次は何にするの?」

「そうだな……魔獣についてで良いか」

「冒険者らしいものに戻ったわね」

「まあ、元々やることなんてこれしかないし、今日だけだと読み切れなさそうだけどな」

「明日も来れば良いのよ。問題は無いわよね?」

「無かったはずだよ」

「そうだな。それじゃあ、そうするか」


そしてソラ達は本を取り、読んでいった。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「あの山の向こうだったよね?」

「ええ、そうよ」

「薬草採取なんて、もっと低いランクに頼むことだよな……」

「仕方ないじゃない。Aランクなんだもの」

「そうだけど、なっ!」


図書館で本を漁ってから数日後、ネイブから少し離れた先の森の中で、3人はその先の山を目指して進んでいた。そんな最中にソラは薄刃陽炎に風を纏わせ、進路上に出てきたブラウンウルフを群れごと斬り捨てる。後ろではフリスがゴブリンの群れを全て燃やしていた。


「聞いてたとおりだけど、多すぎるわね」

「こんな町にAランクの依頼があるなんて、おかしいと思ってたが……これなら納得か」

「普通だったら負けちゃうよね」

「いつもこうらしいっていうのも、おかしな話だけどね」

「定期的に狩ってるそうだが……繁殖が早いんだろうな」

「そうだね……何でかな?」

「考えたくも無いが……魔人が意図的に増やしてるとか……」

「……本当に嫌ね、それ……」


この前にも、そして気付かれていないものを含め、ソラ達は今も100を超える魔獣達に囲まれている。そこに魔人の手が入っていないと否定はできなかった。

とはいえ、仕事には入っていないので積極的に探したりはしない。手がかりが欠片も無いのに探すこと自体、馬鹿らしいのだが。


「山を越えて、その先の谷か。長いな」

「そうね。山道も険しいし、昼までには着けなさそうね」

「夜には戻れるって思ってたのに〜」

「普通なら往復5日だろ。これでも十分早いじゃなか」

「それに1日で帰ってこれても、日は暮れてるわよ。2日の方が良いわ」

「そっか。それもそうだね」


魔獣が多いとはいえソラ達の敵ではなく、こんな会話もできる。だがやはり、落ち着いていられる時間は少ない。


「また来たよ。前からオークと後ろからオーガが、それぞれ10ずつ」

「右からもだな。コボルトが30か」

「じゃあ、私がオークをやるわ」

「わたしがコボルトだね」

「なら俺がオーガか」


都合良く3方向から来たため、ソラ達も3方に分かれて戦う。戦闘とは呼べない、一方的な蹂躙があっただけだが。


「さて、早く行くぞ」

「血の臭いが酷いものね」

「処理をしても残るからな。ここだけに注意を向けてくれれば楽なんだが」

「それは無いよね、多分」

「そうよね。何か音も聞こえるし」

「実際集まってるからな。やり過ごせれば良いが……」


その願いは叶わず、魔獣は次々とソラ達に襲いかかっていた。結局、山道に入るまでに100以上倒しただろう。


「……結構時間がかかったな」

「でも、寄ってこなくなったよ」

「あれだけ殺せばこうもなるわよ」

「生き物なんだし、死ぬのは嫌だろうしな。楽になって良いが」

「確かに楽だけど……何か違うわよ」

「楽で良いんじゃないかな?あ、坂が終わってるし、見えるんじゃない?」


山の3合目あたりの稜線そこを越えると、漸く目的地が見えた。


「お、良い景色だな」

「川だけじゃなくて、小さな湖もあるのね」

「湖というより、泉かな。それで、あそこだよね?」

「ああ。やっと着いたか」

「覚悟はしていたけど……本当、遠かったわよ」


そこは谷というには広く浅く、底には確かに多くの草か生えている。このような場所にしか生えていないという薬草も、恐らくあるだろう。

目的地が見えて調子の上がったソラ達は進み、夕方には谷の中に辿り着いた。


「もう暮れる……今日はここで野営だな」

「そうね。じゃあ、夕食の準備をするわ」

「じゃあ、結界を張るね」

「俺もだな。ミリア、まずい場所はあるか?」

「問題無いわよ。お願いね」


そして3人は火を囲んで過ごし、夜は更けていく。









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