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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

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第11話 雷都ライデン②


「鉱山に魔獣?普通じゃないのか?」

「普段はいてもCランクまでですが……今回はカノンアントでして……」

「Sランクね。それなら私達が受けるわ」

「勝手に決めるな。まあ、受けるのは賛成だが」

「わたしも良いよ〜」

「……ありがとうございます」


感極まり泣きそうになっているギルド職員をどうにか(なだ)め、個室で依頼の確認を続けていく。

Sランク魔獣が化け物という認識はどこも同じだが、オルセクト王国で強い魔獣はほぼ出ないため、その傾向が特に強い。もしソラ達がいなかったら、より大変なことになっていただろう。


「坑道の地図を貰えるか?流石に迷いそうだ」

「は、はい!少しお待ちください!」

「……慌てすぎだよね?」

「仕方ないわよ。Sランクが町の近くに出るなんて、ここじゃ普通は無いもの」

「そうだな。命のやり取りに慣れてる冒険者ならともかく、一般人はこんなものだろ」

「そっか。じゃあ、早くしてあげた方が良いよね」

「お待たせしました!」

「見方を教えてくれるか?」

「はい!」


見方を教えてもらい、ソラ達はギルドを出る。ソラ達と違って住民は知らされていないらしく、昨日と様子は変わっていない。だが、3人には確信があった。


「昨日の音はこれだな」

「きっとそうよ。兵士の動きにも納得ね」

「早く倒しちゃおうよ」

「ああ、不安は無い方が良い。ここはリーナ達の国だしな」


特に意気込んだりもせず、3人は普通に歩いていく。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「鉱山の入り口は……あれだな」

「あの人達って、どこにいるか知ってるかな?」

「フリス、常に移動してるって言ってたわよ」

「と言っても、蟻が1匹だけなんて思えないからな……女王蟻がいないことを祈るか」


町から鉱山までは整備された専用の道がある。普段は鉱夫や屋台などで賑わっているそうだが、今は閑散としていた。そこをソラ達は歩いていく。そしてそのまま坑道へ入ろうとした。


「おいおい君達!入っちゃいけないよ」


なので当然ながら声がかかる。注意してきたのは衛兵のようで、他にも何人かいた。声をかけてきたのは経験豊富そうな男だが、ソラ達の実力が分かるほどでは無いらしい。なので……


「通してもらえないかしら?依頼で入らないといけないのよ」

「駄目だ。今日鉱山は立ち入り禁止だぞ」

「カノンアントがいるんでしょ?」

「は?どうしてそれを?」

「SSランク冒険者、ソラ、ミリア、フリス。Sランク魔獣カノンアントの討伐依頼を受注しました。通してもらえますか?」

「……は?」


こうなるのも仕方がないだろう。目の前にいるのは若い男女、それも見た目は華奢(きゃしゃ)な3人だ。普通に見たら、強いとは思わない。

だがギルドカードを見て、ようやく現実を把握したらしい。


「し、失礼いたしました!お通り下さい!」

「いえいえ、お仕事ご苦労様です」


うってかわって頭を下げた衛兵達の間を通り、ソラ達は鉱山内へ入る。普段は松明や篝火(かがりび)、電光石の灯りが灯されているのであろう坑内も、今は真っ暗だ。ただ、その幅はかなり広い。


「暗いわね」

「いつも通り、光は俺がやっておく。フリス、魔獣はどうだ?」

「弱いのなら幾つかいるね。カノンアントは……見つけたよ」

「どこだ?」

「右下の方。あっちだよ」

「俺も確認した。地図だと……この辺りか?」

「うん、その辺りに何匹か……2匹か3匹でいるよ」

「この程度なら大丈夫だな。行くぞ」

「ええ」


坑道を進んでいくソラ達。何ヶ所か分かれ道があるが、地図のおかげで迷わず目的地に近づけていた。


「左側が今も使ってる坑道で、右側が廃坑か」

「行き先は右なのよね」

「そうだよ」

「カノンアント以外にも注意しないとな」


カノンアントがいるのは廃坑となった部分なので、崩落の危険もある。魔獣のランク以前に、兵士や騎士団が対処するには厳しい場所だった。


「所々木が腐ってるか……できれば通路では戦いたく無いな」

「そうだね、って……あれ?」

「塞がってるわね」

「崩落か……あの音はここが原因だな」

「そうみたいね。ソラ、迂回路はどこかしら?」

「おいミリア、忘れたのか?」

「ソラ君ならできるんだよ」

「ああ、ごめんなさい。忘れてたわ」


ソラにかかれば崩落だろうと土を押し上げて固めるだけだ。すぐさま元に戻し、進む。そして、捉えた。


「この先だな」

「3匹だよ」

「気付かれてないなら、奇襲できるわね」

「いや、気付かれた。来るぞ!」


灯りを使っているのだから、仕方が無いだろう。カノンアントと思われる魔獣(魔力)は、ソラ達の方へ真っ直ぐ進んで来ていた。


「初弾は俺が迎撃する。その直後に行くぞ」

「ええ、任せるわ」

「お願い」


そして姿を見せたのは、全長4.5mの巨大な蟻。間違いなくカノンアントだ。そしてカノンアントは、ソラ達へ向けて口から岩の塊を高速で撃ち出した。


「行け!」


そしてソラはその岩塊を、さらに一回り以上大きな氷塊で撃ち落とす。そしてこれで、カノンアントの命運は決した。


「はぁ!」

「行って!」

「ふっ!」


1匹は全身を切り刻まれ、1匹は雷で黒焦げにされ、1匹は頭から真っ二つに両断される。町の上層部を混乱させていたSランク魔獣が、同数の人により簡単に倒された。


「こんなところか……他にも何グループかいるな」

「本当だね。行く?」

「当たり前よ。倒せるのに無視するなんて、嫌じゃない」

「ああ。行くぞ」


その後も、カノンアント2匹か3匹の集団をいくつも殲滅していく。ソラ達の歩みは順調……すぎて、逆に違和感も感じる。


「簡単すぎる……考えすぎか」

「どうしたの?」

「いや、どうにも簡単すぎる気がしたからな。多分考えすぎだろうが」

「簡単ね……どうしてそう感じたか教えてくれるかしら?」

「良いが……根拠はほぼ無いぞ?」

「それでも良いわ。ソラの勘が当たったこと、何回あると思ってるのよ?」

「分かった……カノンアントの集団、グループの動きが変に感じた」

「変って?」

「襲撃が散発的すぎる。Sランクなんだから、ある程度の知能は持ってるはずなんだがな」

「確かにそうね……何でかしら」

「それが分からないからな。何か意図があるとしても、杜撰(ずさん)すぎるし……」


色々と考えるところはあるが、そんなことを考えている暇は無かった。


「考えない方が良いかと考えてな。それで……ん?これは……」

「どうしたのよ?」

「向こうの方にもいるね」

「数が多い……27匹だな。それともう1つ、妙な魔力もある」

「そう。で、行くのよね?」

「当然だ」


魔力探知を頼りに、ソラ達はどんどん奥に進んでいく。その間にも2回ほどカノンアントの集団に遭遇したが、問題無く倒した。


「あの先だね」

「少し下に広間があるな。そこにいるぞ」

「妙な魔力っていうのも、そこにあるのよね?」

「ああ。それが真ん中にあって、カノンアントが守っている感じだな」

「守ってる?それってもしかして……」

「もうすぐ見えるよ」


縦穴の少し上の方に出たソラ達は、下を覗き込む。何故か電光石が光って明るい中、底は縦穴の底はすり鉢状となっており、その中央に白く丸い巨大な何かがあった。そしてソラの言う通り、それをカノンアント達は守っている。


「何よ、あれ……」

「もしかして……繭か?」

「それって……女王の?」

「ああ、可能性はあるな」

「危なかったわね」

「産まれた後だったら、どうなっちゃってただろう……」


Sランク魔獣の集団など、普通の町なら破滅しかない。もしその場合、蟻なので数は特に多いだろう。この段階で見つけられたのは幸運だった。


「産まれる前に倒すぞ。Sランクとはいえ蟻だ。1匹1匹は弱い」

「それでも、連携されると大変だよ?」

「連携なら俺達の方が上だろ。違うか?」

「いいえ、違わないわ」

「うん。それで作戦は?」

「そうだな……俺がまず中央の繭を壊す。その隙にこちら側から倒してくれ」

「大丈夫?」

「壊した直後に反対側に跳ぶから大丈夫だ。2人は後ろから奇襲するだけだな」

「そう……なら良いわ」

「うん、任せて」

「じゃあ行くか」


そして、ソラは跳んだ。というか飛んだ。


「ぶった斬れ!」


位置エネルギーも加わり、異常なほどのスピードで繭を斬り裂いた。そして真っ二つになっな繭から現れた蟻は、異様に腹が大きい。予想通りだ。


「間違いなく女王蟻だな。危なかった……っと、行くぞ!」


今は囲まれているので、惚けていてはリンチに遭うだけである。ソラはすぐさま反応し、1匹のカノンアントの頭の下を通ると同時に足を刈り取った。さらに奥の2匹を氷の槍で貫く。

そして全てのカノンアントの注意がソラに向いた瞬間、合図を受けた2人が動いた。


「やぁぁ!」

「貫いて!」


上から強襲し、頭を切り落とすミリア。そして幾つもの雷を放ち、黒焦げ死体を量産するフリス。何匹かは岩を放つが、すぐに全て撃ち落とされる。そして次の瞬間には首を落とされるか氷塊に潰された。

そしてそんな騒動もすぐに終わる。


「これで終わりだな」

「うん。他にはいないよ」

「結構多かったわね。何匹かしら?」

「47匹だな。これだけ広い場所を守るには少ない気もするが」

「十分多いよ」


魔獣は弱いものばかりであるはずのオルセクト王国にて、Sランク魔獣がここまで多くいるのはおかしい。何かある、とソラは感じていた。


「それにしても、何でこんなところに繭があったんだろうな」

「そういえば……似たようなことなら、前にもあったわね」

「あの時は蜘蛛の子どもだったよね?」

「ああ。あれと同じ原因か?」

「原因っていっても、何も分かってないけどね」

「まあそうだが。それでも関連がある……しっ!」


突如飛来した影をソラが打ち落す。それは3本のクナイ、1人ずつ頭を狙われていた。こんなことをする相手、できる相手、3人には1人しか思い浮かんでいない。


「……またお前か」

「お久しぶりですね」

「……こんなところで会いたくなかったわよ」

「おや、お嬢さんもお話になるのですか」

「あの時は驚いて固まってただけだもん。2回目なら、大丈夫だよ」

「足、震えてますよ?」

「くっ……」

「う……」

「俺の嫁を虐めるな。それで、何か用か?」

「ただ見ていただけですよ。知らずの内に罠を破っていたのは驚きでしたが」

「罠だ?」

「あの蟻達は、女王の卵を囮にしていたんですよ。あの広間に入った瞬間、全方位から攻撃して一網打尽という算段です」

「俺達に各個撃破されたのが誤算だったわけか。それで、他には?」

「ありませんね」

「なら帰ってくれ。誰かに見られたら説明が面倒だ」

「敵、と言えばよろしいでしょう?これだけ殺気を向け合っているのですから」

「それでも、だ。未知の相手についての説明、お前が魔王にする時も面倒に思うんじゃないか?」

「さて、どうでしょうね。それではまた」

「こっちはもう会いたくねえよ」


ゴアクは背を向け、暗闇へ進んでいく。だが追撃はできなかった。


「はぁ……ミリア、フリス、大丈夫か?」

「ええ、でも……やっぱり怖いわ」

「死んだかも、って思っちゃったもん……ソラ君はよく大丈夫だね」

「殺気の向け合いには慣れてるからな。主に稽古で」

「……平和だったのよね?」

「稽古で殺気を向けちゃいけないなんて決まりは無かったからな」

「何それ……」


3人はしばし休憩し、元来た道を戻っていく。ダンジョンでは無く地図もあるので、帰るのは簡単だ。


「何だか疲れた……」

「まあ、最後にあいつが出てきたからな」

「それにしても、何の目的があるのよ。出できただけじゃない」

「町を狙ってたりするのかな?」

「流石にそれは無いだろ。というかそのつもりなら、俺達を殺してる」

「そうね。目撃者は消すでしょうし……本当に分からないわ」

「何だろうな……」


3人は町に着いた後、カノンアントは殲滅したとだけ報告した。数が多かったことは言ったが、ゴアクのことは一切言わない。

そして数日後、ソラ達はライデンを旅立った。









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