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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

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第9話 海都シーア③



「美味しいね。面白いし」

「こんな料理もあるのね」

「まあ確かに。こういうのは聞いたこと無いな。それで、だ……」


机の上には調味料を一切使わない、素材を組み合わせただけだが、香辛料のような海藻のおかげで美味い、そんな料理が多数並んでいる。


「何でまた宴会をやってるんだ?しかも今度は陸で」

「今さらだよね?」

「今さらね」

「まあそうだが……」


3人は村の一部の人魚達に囲まれ、海岸で宴会をしていた。人魚達の料理も海の中でなければ普通に食べられるらしく、ソラ達もいくつか口にしている。……1人だけ大量に食べていたが。

なおこの机、主にソラが魔法で岩を操って作り出したものだ。人魚の中にも土魔法の使い手はいるが、ソラの練度には敵わない。というか、この程度なら並列処理で100個だろうと一気に作れた。


「人数は少ないけど、活気は変わらないわ」

「主賓の俺達が楽しめてるのもあるだろうな。前は何も口にできなくて、フリスに関わりづらかっただろ?」

「確かにそうかもしれないわね。今日はフリスが笑顔だから」

「そんなこと無いもん!」

「すまんすまん。それにしても、人魚って足にもなるんだな」

「びっくりしたよね」

「これは人魚独特の能力で、調べることが好きな人からすると、幻術みたいなものだそうです。感覚はあるんですけどね」

「それは何と言うか……専門家じゃないから分からないな」


今はエルザ、それだけでなく他の人魚達も、下半身は人間(ヒューマン)のように2本足になっている。というか、この状態だと人間と区別がつかない。

ただし人魚達は男も女も、下半身にスカートのようなものを履いている。おそらくはそういうことなのだろう。


「というか、近くにいた冒険者まで巻き込んでるんだな」

「お酒を呑んだりして、一緒に騒いでるね」

「むしろお酒があったことに驚きよ」

「お酒といっても、地上の人達のように液体ではありません。海藻の1つですよ」

「海中で飲み物なんて無理だから、当然か。まあ、あの辺りは酒盛りをやってるみたいだが」

「シーアに行った人の楽しみでもありますから。私も少し嗜んでいますし」


エルザの目線の先にあるのは丸い球体、果実のようにカラフルな海藻の実と、種族に関係無く酔っ払っている集団だ。

後者は無視してソラは海藻の実を1つ取り、口に入れてみた。


「……結構美味いな」

「そうなの?」

「普通の酒に比べれば甘みが強いが……海の中で食べるには丁度良いか。果実酒みたいなものだな」

「本当ね。美味しいわ」

「たくさん食べれそうだね」

「接待する側ですけど……私もいただきます」

「食い過ぎるなよ。一応、酒なんだからな」

「はーい」


酒も入り、多少口も軽くなった4人。内3人は女性なのだから……そういう会話にもなる。


「あの……お2人って……」

「ん?」

「ソラさんと……結婚……してるんですよね……」

「うん。そうだよ」

「でも親には何も言ってないから、婚約者って言った方が正しいのかもしれないけどね」

「……良いなぁ」

「ねえ、エルザちゃんには良い人いないの?」

「え?いや、いませんけど……」

「へえ、じゃあどんな人が好きなのよ?」


そしてどうせ2対1になるのだから、こうなるのは仕方が無いだろう。孤立した1、エルザはソラに助けを求めたが……


「……ほどほどにしておけよ」

「はーい」


その視線は無視された。というかこの2人、年下を弄るのが好きらしい。ソラも止められないのは分かっているので、助けにはいけない。

まあ話の種が少なかったのが幸いか、話題はすぐ別のものに移った。


「そういえばエルザちゃんって、どんな風に戦うの?」

「接近戦は護身術程度で、ほぼ魔法を使います」

「完全な後衛の魔法使いだな。属性は?」

「水と雷をよく使っています。後は闇を少々……」

「へえ、良い属性を持ってるじゃないか」

「良い属性、ですか?」

「ああ。水中では水魔法が主だし、雷魔法は速い上に高威力だ。闇魔法は魔法の無効化に便利だしな」

「ソラ君、よく使ってるもんね」

「使わないとフリスには勝てないしな」


ソラ達は普通のことのように語るが、エルザには疑問しか無かった。大群を一掃していたフリスに、一体全体どうやって勝ったのだろうかと。ソラやミリアの活躍も見ていれば別だったかもしれないが、フリス1人しか見ていないのだから当然なのかもしれない。


「えっと……どうやってですか?」

「何がだ?」

「どうやってフリスさんに勝ったんですか?」

「どうやっても何も、普通に魔法の撃ち合いをしただけだぞ?」

「ソラ君はミリちゃんと戦いながらだけどね」

「……へ?」

「まあ2人も上手くなって、2対1だとだいぶキツくなってるけどな」

「それ、毎回言ってるわよね?」

「ま、毎回?」

「何回かは忘れちゃったけど、模擬戦は全部ソラ君が勝ってるよ」

「ぜ、全部……?」

「ああ。技と魔法の使い方で勝っているようなものだけどな」

「…………」

「エルザちゃん?大丈夫?」

「…………」

「ダメだな。固まってる」

「びっくりしすぎたかな」

「それどころじゃないわよ。フリスよりも強いって時点でね」

「まあそうか。この辺りの魔獣なんて、1万いようと俺達は殺せないしな」


ここで自分達が常識外れだと出てこないというのも、何かおかしい気もするが……ソラを含めて、そのあたりの感覚がマヒしているのかもしれない。


「あ、またやってるよ」

「格闘技か。また参加するのも良いかもな」

「行ってくれば良いわよ?私達も見ていて楽しかったし」

「そうか?なら、面白くなるように戦ってくるか」

「いってらっしゃーい」


2人の意図することには気付かず、ソラはその人垣に向かう。繰り広げられる光景は……以前とあまり変わりがなかった。


「楽しそうだね」

「そうね」

「はっ、私は何を」

「あ、エルザちゃんが戻った」

「遅かったわね」


宴会は続く。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「この町でも、色々あったな」

「そうね。巻き込まれすぎとも思ったけど」

「エルザちゃん達とも仲良くなれたしね」


早朝、少しずつ人が出てきたシーアを歩いていく3人。旅の準備はできる時にやっているため、普通前日は休むのだが……疲れを溜めないという考えは、3人(特に2人)の中には無かった。


「まさか最後の最後に、また海水浴をするなんて思わなかったが」

「最後なんだもん」

「途中で何回もやっただろ。というか、あの水着外でも使うつもりだったんだな」

「当たり前よ。何のために勝ったのか分からないじゃない」

「他にも使ってる人がいたから良いものを。あんな服装した人の連れは大変なんだからな?」

「そうなの?」

「……ベフィアだとそうでもないか」


ベフィアにはそういう文化の元が無いため、少し奇抜という印象しか持たれていない。ソラの心配は的外れだった。

そんな風に話をしながら歩いていく3人。そして、門の近くに見慣れた人影を見つけた。


「あれ?」

「エルザだな。どうしたんだ?」

「私達の見送りって考えは無いのね。伝えてたじゃない」

「村にも行ったし、流石に1人は……ありえるか」


ちょうど昨日、ソラ達は海水浴の後に人魚の村に行き、シーアを離れるという話をしたのだ。そして送別会のような宴会が行われたが、最初の1人としては個別に話もしたいだろう。


「ソラさん」

「エルザ、見送りか?」

「はい。お世話になりました」

「お世話になったのはこっちよ。人魚と親しいってことで、いくつか依頼をもらえたもの」

「といっても、元から俺達に来そうな依頼だったけどな」


アルネーラの影響で北の方にいる水棲魔獣が南下してきたらしく、ソラ達は高ランクの魔獣を何種類も倒してきた。指名依頼となると報酬も良いので、3人にとっては良い臨時収入だった。

……もう既に下手な貴族よりも貯蓄があるのだが。


「……やっぱり凄いです」

「どうしたの?」

「ソラさん達、やっぱり凄いんですね」

「そうか?好き勝手やってたようなものだが」

「それでもです。私……」


エルザにとって、ソラ達は別次元の存在だった。そしてそれ故に、思うこともあった。


「私……ソラさん達に憧れてたんだろうって思います。村長の娘ですけど、何もできることが無いので……何でもできるソラさん達に憧れたんです」

「村の危機に無力な自分は関われず、本来無関係な俺達が解決したからか?」

「ちよっと違いますけど……だいたい合ってます。私にはできないことをしてくれたから……」

「強さに憧れたの?」

「はい。結局、弱い自分を許せなかったんでしょうけど……」


強き者に憧れる。戦いの続くベフィアでは普通の感覚だ。そしてそれに必要なもの、それは地球と変わらない。


「……()せば()る」

「何ですか?」

「古い言葉の1つだ。何かを為そうとする強い意志があれば、それは確実に結果として現れる」

「でもそれって……」

「エルザ、強い意志を持っていれば、絶対にできる。才能がありそうだからな」

「え?」

「確実とは言えないが……エルザの魔力は相当なものだ。自信を持って良いぞ」

「……本当、ですか?」

「ああ」

「わたしもそう思うよ」

「……ありがとうございます!」


実際、ソラが感じ取るエルザの保有魔力は多く体内循環も活発だ。これからの修練次第ではあるが、強くなる保証はできる。


「じゃあ、この辺りで良いか?」

「はい、ありがとうございました」

「そうじゃないわよ。また会いましょうね」

「またね〜」

「分かりました。また会える日を楽しみ待っています」

「ああ、またな」


門を少し過ぎたあたりでエルザと別れ、ソラ達は歩いていく。旅を始めて1年半となるが、ソラ達にはようやくここまで来たという感じだった。


「さて、次の町は国も変わるんだったな」

「やっと王国に戻れるのね」

「ついでに里帰りでもするか?」

「じゃあ、ソラ君は挨拶しないとね」

「……そういえばそうだな」

「ふふ、まだ良いわよ。バレたって邪魔されないしね」

「そうだね。普通に楽しく旅をしようよ」

「ああ。それじゃあ、次の町に行くか」


3人の旅路は、まだまだ続く。







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