表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/217

第7話 人魚姫②


「おっしゃー!」

「バンザーイ!」

「あいつらの(かたき)が討てたぜ」

「討ってもらっただけどな」


人魚の村は、お祭り状態となっていた。まあ、見つかったばかりのSランク魔獣が討伐されたとなれば、騒ぎたくもなるだろう。

そういった場合、為した本人はかえって冷静だったりするものだ。


「馬鹿騒ぎだな、本当に」

「仕方ないわよ。私達みたいにあういう相手と戦い慣れてるわけじゃないもの」

「俺達だって、こうなったのは最近だけどな」

「でも、いろんなことに巻き込まれたのはソラ君と会ってからだよ?」

「俺にだってあれは予想外だ」


このお祭り、村の各所にある住居を自由に使っていた。村長の部屋を含め幾つかある集会所が主な会場だ。


「ありがとうありがとう……」

「息子の敵討ちをしてくれて、感謝する」


最初ソラ達は村長の部屋の中で、感謝されていた。特に、犠牲となった2人の親族は長い。多少の慣れがあっても、大変なのに代わりはないだろう。

またそれがひと段落しても、次はまた別の相手が来る。


「どうぞどうぞ、お食べください」

「美味しいですよ」

「いただきます」

「美味しそうだね」

「あ、2人とも待った方が……」


今度はまだマシ。というか好意に甘えればいいだけなので、ミリアとフリスは勧められるままに人魚独特の料理を口に運ぶ。ソラは嫌な予感がして止めたのだが……


「んぐ⁉︎」「んん⁉︎」


止まらなかった。そして予想通りの結果となった。2人は苦しそうにもがきつつも、何とか飲み込む。


「何よこれ!塩辛いにも程があるわよ!」

「口の中がヒリヒリする……」

「やっぱりか……まあ、海の中だしな……」

「え?何で?」

「塩漬けと同じだ。海水の中に入ってるんだから、それだけ濃い味になる」

「それって、つまり……」

「ああ、ここでは何も食べられない」

「そんなぁ……」


食べることが好きなフリスにとって、これは辛いだろう。これは主催の人魚側もそうで、話を聞いたエルザはすぐにやってきた。


「今まで気付かなかったんですか?」

「水は必要な時に俺が魔法で作ってるし、食事は小船の上だったからな。気付かないのも無理は無いか」

「分かってたなら教えてよ……」

「すまん。気付いたのがついさっきだった」

「う〜……」


人魚達は好きな料理を好きなだけ食べている中、主賓は1つとして口にできない。約1名、特に恨めしそうな目をしていた。ソラもそんな状態で放置はできない。


「……他の所に行くか?」

「……うん」

「まあ、ここにいるのは少し辛いわね」

「申し訳ありません」

「いいわ。エルザのせいじゃないもの」

「ああ。俺達が知らなかったのが悪い」


多少の挨拶をしつつ、ソラ達は部屋を出て行く。他の集会所をいくつか冷やかしたりもしたが、3人はとある場所に惹かれていった。


「あれ?何の音かな?」

「あそこだな。人が集まってる」

「お祭りではよくあるけど、何をやってるのかは気になるわね」


ある場所まで来ると、人が争っている音が聞こえる。だがそれと同時に、「やれー!」だの「負けるなー!」だの聞こえてくるため、問題は無いのだろう。

ソラ達は進んでいき集まった人魚達の壁を抜けると、2人の男の人魚が取っ組み合いをしていた。


「格闘技か」

「人魚だと少し違って新鮮ね」

「やるの?」

「混ざるのも面白そうだな。行くか」


ソラは近くにいた、まとめ役らしき4人の人魚に話しかける。どうやら彼らが審判らしく、1人から詳しいルールを聞いた。

8つの灯りにより立方体ができており、そこがフィールドらしい。立方体から出たり、降参したり、継続不可能だと審判が判断したら負けだそうだ。また相手を殺したり怪我を負わせてはいけない、武器を使ってはいけない、怪我をしかねない魔法を使ってはいけない、降参させた相手を攻撃してはいけないなど。スポーツとしての面がとても強いものだった。

説明が終わった直後に今の試合が終わり、ソラはフィールドに入る。


「お、オレの相手は英雄さんか」

「英雄なんて呼び方はやめてくれ。知ってるかもしれないが、ソラだ」

「分かったぜ、俺はバーフェスだ。相手が誰だろうが容赦はしないぞ」

「それはこっちのセリフだ」


互いに構え、審判の合図を待つ。


「始め!」

「しゃぁ!」

「来い」


そしてその瞬間、バーフェスが突っ込んだ。ソラは待ち構え、組み付く。そしてそのまま力比べとなった。


「はっ、俺は村一番の力持ちだぞ?このまま押しつぶしてやる」

「俺に対して力比べ……本当に良いのか?」

「何?」


水中を泳ぐ人魚と水中で踏ん張れるソラ、どちらの方が力を入れやすいかは明白だ。


「お、おおぉぉぉ!!」


バーフェスは投げ飛ばされ、外の(人魚)垣の中に突っ込んでいく。


「しょ、勝者、ソラ!」

「よし次だ。来い」


ソラの技量、その一端を見た人魚達は盛り上がった。そして当然、挑もうとする者も出てくる。ソラが手加減するわけないが。


「なら俺が!」


スピードファイターであろう細身の男は……


「オワァァァ!」


腕を取られ、背負い投げもどきで投げ飛ばされた。


「じゃあ、私が」


水魔法で押し出そうとしてきた女性は……


「キャァァァ!」


逆に莫大な水量に圧倒され、押し出される。


「さあ、どんどん来い!」


次第にソラものってきて、3人同時や5人同時などもやりだした。もっとも、素手での戦いならソラに分がありすぎる。無双しか起こらなかった。


「楽しんでるわね」

「本当だね。あんなに笑ってるソラ君、久しぶりかも」

「……もしかしたら、前の世界のことを考えてるのかもしれないわよ。バルクさんといた時も、あんな感じだったしね」

「そういえば言ってたもんね。こんな風に大人数相手に、教えてたって」

「私達相手も楽しいのかもしれないけど、懐かしいのはこっちなのかもね」

「聞く?」

「やめた方が良いと思うわ。ソラは前を向いて考えてるんだし、私達が思い出させるのは駄目でしょ?」

「そうだね」


しばらくすると、周りも飽きたのか自然と人魚同士に戻る。それに合わせてソラも2人の所に戻ってきた。


「あんなの久しぶりにやったな……どうした、2人とも?」

「ううん、何でもないよ」

「ええ、たわいの無いおしゃべりよ」

「そうか」


格闘技の他、踊りや楽器など様々な催し物がある。3人はどこでも歓迎され、楽しんだ。


「良い所だな」

「ソラさんにそう言ってもらえると嬉しいです」

「エルザか。あの部屋から出れるんだな」

「お父様もただのまとめ役ですから。地上の貴族の人達ほど忙しいわけではありません。それにしてもソラさん、何で驚いてくれなかったんですか?」

「あの程度だと隠れてるとは言わないぞ。気配も分かったし、水の流れも感じたからな」

「無理よ、そんなことは。魔力探知無しでも、知覚能力は化け物なんだから」

「そんな言い方は無いだろ」

「殺気だけで反応してるのに、それを普通なんて言えないわよ」

「……そうか」


宴はその後も続いていく。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「すっかり暗くなってるか」

「町に入れるかな?」

「多分無理よね。港で野宿だと思うわ」

「そうなるだろうな。他の町だって同じなんだし、ここだけ別とは思えない」


人魚の村での歓待を終え、小船へ戻ってきたソラ達。頭上には満月と星が輝いており、かなり夜遅い時間帯だということがわかる。


「できたわよ。魚を取る時間が無くて、保存食になっちゃったけどね」

「美味しいよ?」

「夜の漁は慣れがいるらしいし、これで良いさ。フリスの言う通り、美味いからな」

「そう?ありがと」


3人とも遅い食事を取りながら、かつ村での話をしながらだったため、小船の進みは遅い。行きの3倍近い時間をかけて、漸く港まで着いた。


「やっぱり、人はいないんだな」

「壁の上の見張りの衛兵の人くらいね」

「そうだね……あれ?」

「……殺気?何でこんな時間に」

「何かいるのね。場所は?」

「向こうだ」「あっちだよ」

「……行きましょ」

「ああ」


ソラ達が進んだ先にいたのは、全身黒ずくめの3人組。港の外れ、草むらの中に潜んでいた。


「おいお前ら、こんな時間に何をやってる」

「なっ⁉︎何故人が!」

「お前は先に行け。ここは任せろ」

「はっ!」

「ミリア、フリス、ここは任せた」

「うん」

「ええ、任せなさい」


姿と現状だけでも怪しかったが、これで確定だ。ミリアとフリスは残った2人を牽制し、その間にソラが逃げた1人を追う。


「女2人か……悪いが容赦しないぞ」

「我らの主がため、死んでもらおう」

「フリス」

「うん」


黒ずくめ達の不幸は、前衛後衛が1人ずつだったことか。


「死ねぇ!」

「はぁ!」

「なっ⁉︎がっ」


前衛は振るった長剣ごとミリアに切り刻まれ、


「燃えよ!」

「行って!」

「ウソ、が……」


後衛は放った火球をフリスに防がれ、風で首を飛ばされた。


「まったく。相手を知らないで挑むなんてね」

「気付かなかったのとは違うんじゃないかな?多分、あの人を逃すためだよね?」

「確かに……そうかもしれないわね。でも、こんな風に命を捨てられるものかしら?」

「何か持ってるんじゃないかな?少なくとも仕事道具とかは」

「そうね……え?」

「あれ?」

「これって……」


暗闇で黒ずくめを相手にしていたため分からなかったが、2人はあることに気付く。

一方、ソラも黒ずくめを追い詰めた。


「くっ、逃げ道は無いか……」

「ああそうだ。何を企んでるかは知らないが、おとなしくしておいた方が身のためだぞ?」


城壁のそばまで逃げてきた黒ずくめだが、ソラの魔法により周囲を岩の槍で囲われ、逃げ場が無い。

こういった相手がおとなしくすることは……無い。


「こんなところで……人なんかにぃぃ!」

「はぁ……ふっ!」


ナイフを両手に持ち、破れかぶれの突撃をする黒ずくめ。だがソラにより、一瞬で両腕を斬り飛ばされた。


「な、あ、う、腕がぁぁぁ!」

「うるさい」

「がっ!」


そして居合の勢いそのままに、ソラは薄刃陽炎で心臓を貫く。


「追い詰められて特攻なんて定番だけどな……ん?」


相手を知りたいと思うのは当然だろう。詳しいことは門外漢とはいえ、気にならないわけがない。


「こいつは……」


そう考えて黒ずくめの死体を観察していたソラだが、こちらもあることに気付いた。


「「「魔人?」」」


そう、魔人。黒ずくめなのは全身が黒い肌で黒い服を着ていたためだった。ソラの方は女で、こめかみの所に黒い羊の角が生えている。ミリアとフリスの方は黒い肌の男だが、それぞれ黒い1本と2本、鬼のような角が生えていた。


「魔人の女か……ミリアとフリスの方もそうか?」

「ソラ君!」

「そっちも終わったか。どうだった?」

「魔人だったわ」

「やっぱりか……町に入るつもりだったみたいだな」

「何で?」

「ここが逃げた先だが、城壁のそばだろ?」

「……もしかしてここを乗り越えて?」

「ありえるな……すぐに衛兵に知らせよう。町に被害は出なかったが、問題に代わりはない」


なお見張りに報告したことで町の中に入れたのは良いものの、事情聴取が朝まで続いてしまった。翌日3人は泥のように寝たという。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ