1-9
しばらく走り続けた。追手はまだ諦めていない。
「まだ終わらないのか?」
「弓月しだいよ!あの子が私にちゃんと味方してくれているならもうすぐなのだけれど」
……何があったんだ。
ふと顔に冷たいものを感じた。
雨が降り始めている。体に何か違和感を感じ、次の瞬間には体が動かなくなっていた。
「朔君!大丈夫!?」
蓬が声をかけてくるが口を動かすことが出来ない。
そしてそのまま俺は意識を失っていった。
目が覚めた時、蓬が俺を見下ろしていた。
「大丈夫だった?起き上れる?」
言われ体を起こす。違和感はもう無くなっていた。体は問題なく動く。
「大丈夫みたいだね。現状を簡単に説明するとここは弓月のセーフハウス。
朔君が気を失った時、私たちを追いかけていた人たちも一斉に気を失って倒れていったの。
それで弓月と合流してあなたをここまで運んできたの」
蓬が少女を連れてきた。
「この子が弓月」
「……弓月と言います。よろしく」
「ああ、こちらこそ。俺は久慈川朔だ、よろしく」
無愛想な子だ。
「説明を続けるね?朔君を運ぶのを優先したからあの人たちを操っていた術者は始末できてないの。多分連盟に戻って私と弓月のことを報告してる頃合いだと思う。それと朔君のことも」
蓬が俺にいい笑顔を向けてくる。
「これで晴れて朔君もお尋ね者だね!」
「おい待て、お前こうなること分かっていたのか?」
「……偶然だよ。偶然」
「俺の目を見てもう一回言ってもらおうか」
どうやら俺のことを連盟に伝えて逃げれなくするのが目的だったみたいだ。
「蓬さん」
それまで黙っていた弓月が声をかけると、蓬が立ち上がる。
「それじゃあ、私たちのこれからについて話をしようか」