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世界の終わり、小さな逃避行  作者: 澪標
ワールドエンド
5/13

1-5

説明回 会話大目 神メンタル蓬

 家に着いた。蓬は荷物を降ろしてくつろいでいる。さっきまで泣いていたのに元気なことだ。

「朔君、お茶とか出してくれないんですか?」

「さっきまで泣いていた奴がよく言う。もうちょっとおとなしくしていてくれ」


 停電はまだ続いている。携帯を見ても圏外のままだ。机の上に蝋燭を置いて明かりは確保しているが暗い。


「電話会社の交換所が破壊されているので電話はもう使えませんよ。 今日中にはガス水道等のライフラインも全て止まるでしょう。ラジオとかありませんか?」


 携帯のラジオ機能をつける。AM、FMどちらにしても、相当な混乱があるようだ。雑音の中に少しだけ助けを求める声が聞こえてくる。


「やっぱり、もう駄目ですね。ラジオ局は実効占拠されました。自分の力だけで逃げるしか無いですか」

「……そろそろ説明してくれ、一体何がどうなっているんだ?」


 そういうと姿勢を正してこちらに向き直る。

「まず私たちが逃げなければいけない、『組織』とは何かについてお話します」

「俺が巻き込まれるのは確定なのか」


 俺の発言を無視して、蓬は口を開く。

「陰陽師や呪術師、といった名前を聞いたことはありますよね?日本においてそれらは古代から重要な役目を果たしてきました。例えば雨乞い、これは元寇での神風を作り、外敵を排除しました。」

「ほかにも平将門公の乱の平定、玉藻前の封印など、霊的にこの国を守護してきました。しかし、時は移り超常的な力を使わなければ制御できなかったものを科学の力で、誰もが扱うことが出来るようになりました」

 蓬の説明は続く。

「組織、……古式能力者連盟とは今の世で居場所を失い始めた呪術師たちが集い、互助を目的とした集団でした。しかし彼らは古の時代の特権を忘れることができませんでした」

「彼らはそれを取り戻そうとしたのです。その方法はこの世界を未曾有の脅威に陥らせて、その後世界の救済を行い、社会での立場をこの上なく高いものへとしようとしたのです」


 そこで一度俺に「疑問点は?」と聞いてくる。

 しかしこんなトンデモを聞かされてもどういう反応をしたらいいのか分からない。

 ただ一つだけ、蓬は俺に誠意をもって説明している。それだけは分かる。


「大丈夫だ。続けてくれ」

「……では、霊的なものが存在するという前提で話を進めます。彼らがこの世界を脅威に晒そうとした。その方法について」

「彼らは国の中枢に働きかけ、世界が終わると大衆に信じ込ませました。そして今日、いわゆる世界の終わりを始めようとしたのです」

「どうして国は連盟とやらの行動を認めたんだ?」

「国が彼らの暴挙を許容したのは、組織が自らの有用性を前々から披露していたことと、彼らの目的が果たされたとき、この国が国際社会において有利な立場を得ることができるからです」


 その結果が今の状況か。この国の腐り方も大概だな。


「そして彼らは三日前からの世界滅亡の報道を経て、今日実行しようとしたのです。

 実行するのは私、その方法はこの世界の管理者を殺害し、天災を引き起こすというもの。連盟はそのさなかに現れ、大衆の支持を得るために動こうとしたのです」


 今、こいつはとんでもないことをさらっと言いやがった気がする。


「世界の管理者……、連盟が神と呼ぶ存在は私に言いました。この世界を連盟の思うが侭にさせるわけにはいかないと、そのために自分を殺し世界に変革をもたらせと。

 神は私に祝福を授けました。そして世界が変わりゆく様を見届けてくれとそう言って、死を選んだのです」

「俺が見たあの男が神なんだな?」

 蓬が頷く。

 ただ自殺をしただけでは連盟の思うつぼのはずだ。世界の管理者が死ぬことで行われる世界の変革とはなんなのか。そしてそもそも蓬は連盟の所属ではなかったのか。


 そんなことを考えていると蓬が

「私が(・)この世界にもたらす変革とは、これまで神が保有してきた管理者権限をすべての人間に分配することです。それにより世界中の人間は連盟の助けがなくても、あらゆる問題を解決できるようになるでしょう」

「……待て、待ってくれ。……そんなことをしたら世界はただ神を殺しただけの状態からさらに酷い状態になってしまうのではないのか?それにそもそもお前は連盟の人間ではないのか?連盟の神の殺害計画の実行はお前だって自分で言ってたじゃないか!」

 蓬は悲しそうに頷き、

「私を拾ってくれた連盟に恩義を感じていないわけではありません。しかし、私はもう後には引けないのです!

 神の祝福を受けた時から、この世界に絶望したとしても、私は見届けなければいけないんです!!それなら少しでも良くなる可能性がある方へと……」

 そう言って泣き出してしまった。


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