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日付が変わった。特に何か変わったことはない。世界は終わらなかったのだろう。家に帰り、テレビを見ようと考える。しかし人がいない。ゴーストタウンになってしまったようにも感じる。
世界が終わり、自分だけが残ってしまった。そんな小説もあったなと思いつつ家に着く。
『………………………………………………………………………………………………………』
どうやら停電しているようだ。テレビは何も映していない。携帯をみると圏外になっている。何があったのか、再び外に出ることにした。
近所の家から「どうなってんだよこれ!」という叫び声が聞こえる。どうやらこの世界に俺しかいないということは回避されたようだ。
蓬と話した路地裏に再び足を運ぶ。
するとそこには蓬がいた。
「来ると思って待ってたんだ、朔君のこと。これから世界に神を実感させなきゃならない、それが終わったらまた話をしよう」
そういって悲しそうに笑って
彼女の後ろに縛られていた男を
持っていた拳銃で
撃ち殺した
男が口から血を流しながら言う。
「変われ、世界よ、誰もが変えられるように。世界を手中に収めようとする者たちよ、自らの業によって死ね。……蓬よ、全てを見届けてくれ」
そう言って男は笑いながら死んでいった。
蓬が泣きながら俺に近づいてくる。
「あの人は笑いながら死んでいった。私はあの人を殺したのに、あの人は私に、気にするなって言って死んでいったの」
俺が声をかけるのをためらっていると
「大丈夫です。少し移動しましょう」
そう言って、歩き出した。俺はそのすこし後をついていく。目の前で人が死んだのに、蓬が殺したのに、俺は蓬の後をただただ着いていく。
どこに向かおうとしているのかを聞こうとしたとき、蓬は近くのビルの中に入っていく。
「少し待っていてください。荷物を取ってきます」
2、3分で蓬は出てきた。
「朔君の家に連れて行ってください、落ち着いて話がしたいので」
そう言われて、今度は俺が前に立って歩き出す。
色々聞きたいことはあるが、俺の家に着いたら話してくれるのだろう。そう思い、無言で歩く。すると蓬の方から口を開いた。
「今日の朝、日が昇ったら世界は神を実感します。それまでに事情を理解してもらい、私の手伝いをしてもらいます」
「手伝いって、蓬は何をするつもりなんだ?」
「昨日、一昨日、日本中の報道機関をジャックした組織からの逃亡です」
とんでもないことを言いだした。
何を言っているのかわからないという俺の心情を見透かしたかのように、
「全部まとめて話します。ただ、あなたはもう巻き込まれてしまっている、そのことを覚悟してください」
とそういった。