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世界の終わり、小さな逃避行  作者: 澪標
ワールドエンド
2/13

1-2

 世界が終わるまであと二日、今日もテレビはそのことばかり映している。都市部ではこの報道に乗じて強盗に及ぶ人間が出てきているらしい。

 テレビでは今日の晩に全国の放送局が一斉に重要な放送をするので、必ず見るようにとか言っている。

「兄さん、父さんが呼んでる。大事な話があるんだとか」

 妹が俺を呼んでいる。両親から話があるようだ。


 居間に行くと父さんが待っていた。母さんは部屋で何かをしているようだ。

「朔、澪、父さんと母さんは仕事で遠出しなくてはならなくなった。世間がこんな状況だからお前たちも連れて行こうと思っている。すぐに用意してきなさい」

 父さんは貿易関係の会社でそこそこの地位にいるらしい。父さんとはほとんど話をしないからそんなこともおれは知らない。

 澪が不思議そうに「こんな状況なのに仕事なの?」と聞いている

「うちの会社のお偉いさんは世界なんて終わるわけがないんだ。と言っててな、まるで終わらないと知っているような話しぶりだった。こんな状況だからこそ儲けがでるのだとか」

 母さんがまとめた荷物を持って居間にやってくる。

「澪、朔も早く用意してきなさい。今日中には向こうについてなくちゃいけないんだから」

 母さんの言葉を聞き流しながら物思いにふける。蓬は明後日に何かが起こると確信していた。父さんの会社の上役は世界は終わらないと知っているようだった。どういうことなのか、蓬に再び会うことが出来れば何かが分かるのだろうか。そう思い、口を開く。

「父さん、俺は家に残るよ。こんな状況だからこそだれかが家に残ってる方がいいだろうし、それに世界が終わるにしても終わらないにしてもどこにいても一緒だから」

 父さんは少し迷ってから頷いて

「お前も子供ではないしな、分かった。何事も無くても四日ほどかかるからな、その間この家を頼んだぞ」

 と言って自分の部屋に戻って行った。


 澪が心配そうに俺を見てくる。

「兄さん大丈夫?家事とか一人でできる?家に女の子連れ込んだりしない?」

「大丈夫だって。気にするなよ。それより早く用意をしてきた方がいいんじゃないか?今日中に出なきゃいけないんだろ」

 母さんが俺をにらみ始めていたのでそう言って澪の意識を逸らして、部屋に戻る。


 しばらくして澪が俺に一声かけるだけで皆行ってしまった。


 晩、重要な放送とやらを見るためにテレビをつける。テレビでは青一色の画面に字幕が流れている。そして次第に俺の耳に喋っている内容が入ってくる。


『世界の滅びは神がこの世界を見捨てたことにより発生したものである。世界の滅びを回避するには、新たな神が誕生しそして見捨てられたこの世界にもう一度慈悲を与えることが必要となる。……そして、新たな神は誕生した。世界の滅びは回避された』


 言ってることが宗教臭い。神がどうだの、慈悲がどうだの。しかし、蓬が言っていたことはなんだ?『神はいますよ。三日後、世界中の人たちが実感することになります』

 神はいる。その前提で考えよう。だが、神が変わり世界の滅びが回避されたというのなら、三日後、世界中の人たちが実感することになるとはどういうことなのか

 新たな神が全世界の人間の前に姿を現すということか?

 ……いや、たしか蓬は三日後神が殺されて世界は終わるとも言っていた。ならば新たな神はまだ生まれてはいないはずだ。この世界を見捨てたという神はまだ生きている。ならば世界の滅びは回避されていないということではないのか。


『新たな神は言われた。古き神がこの世界を見捨てたのは人々が自らの手で滅びへと進んでいこうとしたからである。滅びは進化の終着点、人は神の支配から逃れようとしたため、神は世界を滅ぼそうとした』


 どういうことだ?

 そもそも神の死が世界の滅びを引き起こすというのなら、新たな神というものが生まれるというのもおかしな話だ。

 神は死んではいない。神は生まれてもいない。世界は終わる。世界は終わらない。

 何がどうなっているのだ?


 そこまで考えてふと思い返す。どうして俺は蓬の言った言葉をすべて正しいと前提したうえで考えていたのか。

 そのことを考えようとした瞬間に俺は眠りに誘われていった。


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