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図書館司書は流される

やられた。

完全に退路を塞がれた。


「シュリエラ、目を閉じなさい!アイラインは失敗したらやり直すのが大変ですわ。」


「アイラインなんてしなきゃい……失礼。」


本音がただ漏れのシュリエラを、アイラの綺麗な顔が睨む。

美人が睨むと怖い。


夜会を諦めなかったルディーノは、なんとアイラにシュリエラを連れ出すよう要請したのだ。

そしてアイラは目を輝かせ、化粧道具とアクセサリーケースを引っつかんでシュリエラの元に突入した。


シュリエラは資料を読む邪魔をされるわ夜会に出されるわ(しかもその準備は長いわ)で不機嫌が最高潮に達している。

アイラに八つ当たりするほど幼い精神年齢でもなく、ただ溜息をつくばかりだ。


「シュリエラはせっかく殿方を瞬殺できる容貌をしているのに、夜会に出ないなんてもったいないですわ。」


アイラはむくれた顔でシュリエラの化粧をどんどん完成させていく。


「これでどこかの貴族の出だったら、嫁にと引く手数多でしょうに。」


「育ちが悪くてよかったと思う日が来るなんてな。」


けっ、とシュリエラは吐き捨てる様に言った。

アイラは目を伏せる。


「まぁ、生まれがいいとか悪いとか、そんなもので伴侶を選ぶ男なんて私は願い下げですけれど。」


アイラは逆に身分が高過ぎて苦労した女だった。

さっさと嫁ぐことを周囲に強制され、研究者になる夢を壊されそうになった為に家とは縁を切っている。

そして、自らで選んだ恋人もいた。


アイラの恋人の顔を思い出し、シュリエラはふと気付いた。


「あー…そういやこないだノルディード殴って気絶させたわ。アイラ、一応謝っとく。」

「構わないわ。ちゃんと休みをとるようになったし、むしろ感謝したいくらいですわ。」


薬学研究室の華かつ研究主任の恋人は魔導研究室の研究主任だ。

各研究室及び図書館司書兼責任者のシュリエラが一同に会した会議の終わり、なんとユリウスは発言の許可を得てからアイラに告白したのだ。

あの時のアイラの驚いた真っ赤な顔が今でも忘れられない。

シュリエラはにやっと笑った。


「ノルディードかわいそうだな。」

「あら、私が休めといつも言っていたのを無視し続けてくださった報いですもの。シュリエラに怒りを抱くのはお門違いでわなくて?」

「確かに私これっぽっちも悪いと思ってねぇしな。」

「それでも謝る義理堅さが流石シュリエラってところかしら。」



シュリエラの顔をなぞっていた化粧ブラシが離れた。


「さぁ、終わりましたわ。」




その時、部屋の扉の向こう側で誰かがくしゃみをして、それからノックの音が聞こえた。


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