図書館司書は妬まれる
「頼む!このとおり!な!」
「やだね。他あたりな。」
必死に頼み込む王子を取り付く島もなく一蹴するシュリエラ。
彼女が頑なに拒んでいるもの、それは。
「そんなこと言わないでさぁ。君はこの国ただ一人の大事な王宮図書館司書で、位もそこらの貴族より高いし、作法や言葉遣いも意識すればちゃんと直る。しかも完璧だ。拒む理由が見当たらないよ。」
夜会という、貴族達の腹の底で煮えているどろどろとした醜い部分が見え隠れする場だ。
シュリエラは今でこそ貴族に名を連ねているが、出身は最下民層だ。
ありえない成り行きと勢いで権力を掴み取った彼女を良く思っていない者はそう少なくなく、そういった人に絡まれるのが面倒だと夜会に出るのを頑なに拒む。
だが、王子はしつこかった。
「男女同伴が原則の夜会で、王子ともあろう者が寂しく一人ポツンと酒を煽っている訳にはいかないだろう。」
「モテねぇ男共の間で親近感沸いて大人気になるだろ、良かったな。」
割と人の出入りの多い図書館で王子がそんなことを言っているのが問題だと、王子は気付いていない。
王子とシュリエラのやり取りを聞いていた学者が数人、肩を震わせて笑いを噛み殺していた。