図書館は本日休み
各研究室の勤務時間に制限がついた。
図書館に来る研究者達は皆、研究に掛けられる時間が減ったと言って嘆いていたが、時間を越えて働くと減給、顔色が優れないと判断されれば強制退出という厳しい規律により、それぞれ休息を取っていた。
そして、この男も。
「よぉ、随分顔色良くなったな。」
「誰かさんが鳩尾に一発かましてくれたおかげで、ぐっすり気絶できた。感謝する。」
「研究の効率、変わんなかっただろ?」
「全くもって悔しいことだが、確かに進度に影響は出ていない……むしろ効率は上がった。」
「そいつはなにより。健康第一だからな。」
シュリエラはユリウスからレポートを受け取る。
ユリウスは苦々しい顔だ。
「私達に注意するのはいいが……レオネイド、貴様こそ休んでいるのか?」
「休んでいないと言えば、ボディーブロー飛ばされるのかな。」
ニヤリと笑ったシュリエラの目の下には、うっすらとではあるが、クマが見えている。
ユリウスは不機嫌そうな顔だ。
「そうされても文句は言えないだろう。」
シュリエラは小さく声を出して笑った。
「そうかもな……ま、私は余り眠れないようだったら薬を使う。大丈夫だ、心配ありがとさん。」
「……そうか。」
ユリウスが去るその背中に、シュリエラはため息をついた。
シュリエラは眠らないのではない。眠れないのだ。
夢を見るのが怖いから。
……薬学研究室、行くか。
またあそこの研究主任には叱られるだろうか。
そう思いながら、シュリエラは図書館を閉めた。