図書館司書と父とお茶
受験も終わり、ようやく投稿。よろしくお願いします。
ルディーノは兄の様な存在だ。
では、この男は。
そう問われれば、シュリエラは間違いなく父と答える。
「暇か。暇なのか、ジジィ。何の用だ?」
「おぉ、シュリエラ!息災かの?」
「……聞いてんのか?」
ジジィ……白髪に、長い口髭。前図書館司書、タロット=レオネイド。シュリエラの義父であった。
「いゃ〜、ちぃ〜とシュリエラの様子を見ようと思うたんだかの〜……ここには興味深い資料がたぁんとあるからつい……」
「私がトイレに行ってる間に防御魔法を解除して入ってかけ直して奥に隠れたはいいが興味深い上の方の資料を引っ張って落ちてきた資料の数々に埋もれた、と。そのまま紙の海で死ねたら本望だな、ジジィ。」
口ではそう言いながら、シュリエラは資料を避けてタロットを救出する。
タロットはそうだのぉ、と朗らかに笑った。
「そういえば聞いたぞシュリエラ。ついに夜会に出たとか。」
「……出ざるを得なくなったんだよ。」
シュリエラは義父の体に付着した埃を払ってやりながら、ため息をつく。
そして、落ちた資料を整理し始めた。
落とした張本人も手伝いを始め、暫く無言の時間が続く。
「嬉しかったんだがのぉ……。漸くシュリエラが結婚相手を見つける気になったのかと舞い上がってしもぉた……。」
空気にとけるような呟きだった。
シュリエラは目を伏せる。
「……ジジィがあと50歳若けりゃ良かったのにな。」
「ホッホッホッ……儂ほどのイイオトコはおらんじゃろうの……。こりゃあ結婚はまだまだ先か。」
「そういうこった。さて。」
全てを整理し、元の棚に戻し終えてからシュリエラはタロットの方を向き直った。
「茶でも飲むか、ジジィ。アイラがいい茶をくれたんだ。」
ずいぶん明るい、綺麗な娘になった。
タロットは娘の成長を見て、眩しそうに目を細めた。
「やはり、暫くは嫁にやりたくないのぉ……。」
儂を越えるイイオトコ、が現れるまでは。