本を愛する彼女の日々
王宮には、大量にある貴重な本を厳重に保管する『図書館』が存在している。
その中の本はどれをとっても一冊で1年遊んで暮らせるほどの価値があり、それゆえに入ることのできる者は限られ、許可を取らねば持ち出しも不可である。
そして。
「おいそこのアンタ。」
図書館唯一の出入り口である扉の前にいた、学者のように見える男がビクリと震えた。
扉に影が写り、揺らめく。男に、後ろに誰かがいることを知らせた。
男は顔色を蒼白にし、恐る恐る後ろを見る。
眼鏡を掛けた若い女が、笑みを湛えてそこにいた。しかし、その目元は全く笑っていない。それどころか、怒りさえ滲んでいる。
「確かに私はアンタに入館許可は出した……。が、その懐の『魔導術書零ノ巻』……誰に許可貰ってその本持ち出そうとしてんだコラアァァ!!」
顔面に回し蹴りを決められて、青かった顔色を赤く変えて気絶した。
図書館司書。図書館の中にある24万の本と資料を記憶し、たった一人で管理する。此処では、彼女が戒律だ。
「研究熱心なのは素晴らしいがなぁ……決められた手順きっちり踏めや。」
最早その言葉は届いていない彼に、彼女はそう吐き捨てて図書館の外に放り投げた。