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正義=  作者: きゅ~ぶ
第一節 異端者狩り編
4/4

三章 =なんか嫌だから

.




一。




「殺すぞ」


2人の間に張り詰めた空気が流れる。


「んな事言われても……」


一義の後ろに回って服の裾をキュッと握ったまま、例の女の子は怯えた表情で震えていた。それを一義は後ろ目で確認する。


念力(テレキネシス)だかなんだか知らねぇけど、ここは隙を見て切り抜けるか)


そんな風に考えながら、スッと一歩踏み込もうとした。



瞬間。


「ガッ!」


またしても、何かが高速で打ち出され、今度は一義の額に当たり激痛が走る。

深見の足元にあったアルミ缶が、念力によって飛ばされたのだ。

頭部への突然の衝撃に、体は若干仰け反り視界もぐらつき、かろうじて立っている状態の一義に対して、深見は攻撃の手を止めなかった。


ポケットからビー玉を3つ取り出したかと思うと、すぐにそれを打ち出す。

正確には、投げつけたビー玉を念力で極端に加速させたのだが、そこまで理解する時間も与えずに一義の腹部にめり込んでいく。


「ーーーーーッ!!」

「これで!」


声にならない程の痛みに顔を歪ませる一義。彼の鳩尾に、追い打ちをかけるため一気に距離を詰めてくる深見の蹴りが、吸い込まれるように入った。


「ゴフ」


肺の中の空気が全部吐き出された。

意識は遠退き足も(もつ)れ、当然のようにバランスを崩して情けなく尻餅をつく。


この間たった3秒。



それでも立ち上がった相手に、後退して距離をとる深見。

一瞬で全身をボロボロにされた少年は、乱れた呼吸を不器用に整えながら、それでも目線を一点に絞って見つめる。


「……わっけわかんねぇよ、なんだよ今の」

「こっちの台詞だ。なんで立ち上がる」

「なんでってそりゃあ……」


少し離れていた女の子がすぐに後ろに回ってきたのを見てから、視線をもう一度念力少女に向ける。


「なんか嫌だからに決まってんだろ」


念力少女はというと、そのワガママな発言に呆れ顏をする。


なんか嫌だから、少年は続ける。


「こんな小さな子が、怯えながら見ず知らずの俺なんかを頼ってんだよ。そんぐらい追い詰められてるってのに、そう簡単にこの子の期待を裏切れるわけねぇだろ!」


それに、さっきのゴロツキもこいつも、女の子を『渡せ』なんて物扱いしているのが納得いかなかった。ワガママだとは分かっているが、それでも嫌なものは嫌だ。


目に揺らぎはない。

呆れた表情をしていた深見も、すぐに顔が強張った。


「そうか、お前がそんなに熱血野郎だったとわな。でも、まぁ、そういう事ならーーーー殺すか」


深見の眼光がより一層鋭くなる。


「まだまだ人生楽しみたいからな、そう簡単には殺されたくねぇよ」


そんな事気にせず、おんぶするためしゃがみ込む一義。それを見て女の子がすぐに背中に乗り込んだのを確認して、よいしょっと立ち上がる。

少し首を捻じって背中をみた。


「お前、名前なんて言うんだ」

「……マオ。周防(すおう)マオ」

「んじゃ飛ばすからな。マオ、しっかり掴まっとけよ」

「……うん!」


そういうと、視線を殺気立つ念力少女の元へと戻す。何故かズボンを履いている彼女は、ゆっくりとした動きでポケットからビー玉を取り出した。


今度は2つ。


「行くぞ!」


うぉぉおお!!と叫び声をあげながら狭い路地を一直線に駆ける一義を見て、深見も力による攻撃を繰り出すべく構えた。


念力という謎の力に立ち向かうのに、1人の女児を抱えてる一義にとって明らかに不利な状況ではあったが、少なからずとも勝算はあった。


(さっきの空きカンにしろビー玉にしろ、物体を飛ばしてきただけだった。あの場で俺本体に念力を使わなかったって事は、人には作用しないって事だろ。だったら近接に持ち込めば問題ないはず!)


それには相手が反応できる前に近づく必要があった。そのための全力疾走だ。が、そう簡単にはいかない。近づくどころか体を動かした途端に、深見の右手から弾丸の如くビー玉が打ち出された。

青のポリバケツが転がり、太陽からの光を一切入ってこない路地裏の狭い道。避ける術もない。もはやふ2つの弾丸が一義に直撃するのは必須だった。


(これで追いかけっこもおしまいにしよう!)


深見の狙い通り、ビー玉が一義の右肩と左太腿の付け根を貫通し、見事な血飛沫をあげ、背負っていた周防マオもろとも倒れこむ。





はずだった。


「なっ!?」


狙い通りそれぞれの肩と太腿に当たったはずのビー玉は、スルリと一義の体をすり抜けていく。

ゴロツキの拳をすり抜けた時と同じように。


「ど、どうなって……、ってまずい!」


間合いはそれ程なかったため、距離はすぐに詰められていた。

道が狭く避ける術がないのは深見も同じ。歯を食いしばり身構えていたが、一義はそこに全速力でぶつかっていき、またしても体が『すり抜けた』。


(違う!)


否定。


(すり抜けたんじゃなくて、単に避けただけだったのか!?)


そう、避けただけ。


文字通り『目にも止まらぬ速さ』で。


深見にぶつかる寸前まで近づき、細かくステップを踏んで体を捻じりながら方向転換。かわすのに必要最低限の動きで、最短距離を最高速で縫うようにして避けただけ。


『疫病神』と呼ばれる体質上、毎日事件や事故に巻き込まれていた一義は、その全てを逃げるか避けるかしてなんとかやり過ごしているうちに、超人的な反射神経と避けに関する知識と動き方が身についてしまっていた。それはもう、生身で銃声の飛び交う戦場に立たされても、避けの実力だけで生きて帰って来られるレベルにまで達していた。

本人曰く、一日一回のペースで頭上から花瓶が落ちてくる生活をしていると、嫌でもそれぐらいにはなるらしい。



「くそ!逃がすか!!」

「もうそいつは当たんねぇよ!」


まんまと立ちはだかる深見を避け切り、後ろからのビー玉の追撃も目もやらずに避けて、大通りに向かって真っ直ぐ走った。


(これでやっと……!)


そこの十字を抜けた先の道には、緋の西日がさしている。2時間ちょっとかけてやっと外に出られる!


しかしまぁ、疫病神な彼の思う通りに事が運ぶわけもなく。


「くっ!」

「ごめんね、ここは行き止まりだよ」


染めた感じのない鮮やかな茶髪の男が、道にひょこっと現れて塞ぐ。


「あぁ、もう!なんなんだよしつけぇな!」

「だから最初に謝ったじゃないか。ごめんね♪」


茶髪の男は至極爽やかな口調で、ニコリとこれまた爽やかに微笑みながら飄々と続けた。


「でも。僕の場合、用があるのは周防マオじゃなくて、君の方なんだよね、坂上一義君♪」

「は?なんだそれ」

「待て坂上!ーーーって栗原さんじゃないですか!?」


少し足止めを受けている間に、すぐ深見が追いついてきて言った。

栗原と呼ばれた男は、自分に好意の視線を向ける彼女の姿も見ずに、一義の顔をジッと眺めてからもう一言。


「話があるんだ。家まで案内してくれるかい?」



意味深な言葉を聞いて顔を歪ませる少年の背中から、イヤ~な汗が吹き出しているのを、マオは気付いた。








二。



いつもの帰り道。

今日に限ってマフラーを忘れたせいで首元はいつもより寒いが、それもいつも通り。



ただ隣を歩く3つの影を除いては。

いや、まぁ、ひとつは背中に乗ったままなのだが。


「なんでこうなってんだよ……はぁ」


今日の一義自身もいつもと違ってため息が多い。


「それにしても、マオは随分と君の事が気に入ったようだね」

「……うん」


栗原亮平と名乗る男の言葉に、マオは小さく頷いた。

一義はというと、なんで俺の名前知ってんだよとボヤいてみたが、栗原はこっちを見てムカつくほど爽やかに微笑むだけで、答えを返そうとしない。


そういえば、マオはこの怪しい男に対しては怯えた様子は見せない。3人はどういう関係なのか少し気になったが、まぁどうでもいいけどと考えるのをやめた。



そうこうしているうちに、特にこれといった話もないまま坂上家に着いた。

住宅地に建つ、薄茶色の外装に身を包んだノーマルな2階建ての一軒家。

一義は何を思ったのか数秒硬直してから、大きく深呼吸をして玄関を開け放った。


「た、ただいま」

「おっかえりぃー!」


目の前に伸びる一本の廊下の向こう側の扉、リビングの方からドタドタと音を立てながら、何故だかハイテンションな母、坂上涼が姿を表す。

とりあえず服を着ている事にホッと安心した一義だった。


「風邪引いちゃったのよねぇ」

「朝っぱらからあんな格好してるからだろうが」

「あら?後ろにいるのはお友達かな?」

「お邪魔します」


話なんか聞いちゃいない。

一義に続いて深見が無愛想に挨拶をしながら、玄関に入ってきた。

おんぶされたままのマオがその会話でひょこっと顔を出した。それを見た涼は、ゆっくりと、ただゆっくりと顔が劇画チックになっていき、表情が受けた衝撃の大きさを表していく。

後ろには初めて家に連れてきた女の子の友達。

そして背中には見知らぬ幼女。


これはまずい。


一義がそう気付いた時にはすでに涼の口が開かれていた。


「一義、あ、あなたまさか……!?」

「いや、これは!そういうんじゃなくて!」


かと思うと、涼の顔からなんというか感情が消えた。


「ナンダ私ノ子カ」

「現実逃避やめろ!ってか逃げる先間違ってるから!!おかしな事になってるから!!」

「変わったお母さんなんだな」

「お、お義母さ、ん……!?」

「あぁもう、なんでそうなんだよ!!くっそこれだから嫌だったんだよッ!」


構わず目を塞ぐ一義に助け舟を出したのは栗原だった。


「お久しぶりですね、涼さん」

「はい?」


そう言い玄関に入ってくる栗原。彼を見た途端少し冷静さを取り戻したのか、涼は疑問符を浮かべながらも答えた。


「えっと、確か……栗、原君?」

「えぇ、お元気そうで何よりです♪」


この2人知り合いだったのか、驚いた様子で一義もすぐ落ち着きを取り戻す。

しばらく沈黙が流れた後、何かを察した涼がなるほどと呟いて、玄関先に立つ3人を手招きする。


「それじゃあ入って。リビングでお話ししましょう」

「えぇ♪」

「お邪魔します」


4人(マオはおんぶのままだが)して涼に連れられる形でリビングへと向かった。






とりあえず幼女書きたかったから書いた。


これで俺も勝ち組。



異論は認めない。(キリッ





それはそうと、あぁもうどうしようかな。


ホントはリビングでの会話まで書いて世界観を明白にして行きたかったんですけど、変なとこで切っちゃったよ泣けるよてか泣いてるよ。



それと、挿絵は今回はお休みさせて貰います。


これも泣けるポイント。


次は大丈夫。

ちゃんと付けます。


幼女書けたので今度は描くつもりです。



次話も宜しくお願いします。


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