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正義=  作者: きゅ~ぶ
第一節 異端者狩り編
1/4

序章 =忙しくなる

.




"異能及び異能者に関する調査報告"




先日行われた、警視庁異能捜査課(以下、異捜とする)を総動員した大規模な調査の結果、全国の異能者数は5万人、判明している異能は20種類以上、それらによる被害件数は3000件にも及ぶことが確認された。


17年前に異能者の存在を確認してから、その数は増幅の一途を辿っている。彼等の能力はとても危険なモノが多く、存在するだけで市民に危害を加える恐れがある。特に過激派と呼ばれるグループの行動が著しく目立ってきている。



異捜では異能の存在そのものを危険なモノとして、厳しく取り締まることに決断が下った。異能・異能者の出現が確認され次第確保に移る。


機密情報の流出を防ぐため、異能者の確保に関しては、いかなる状況下にあったとしても異捜の特権とし、他の課の手に渡らないこと。





尚、この際の生死は問わないものとする。














深夜2時。


高級感あふるる革製のソファに腰掛けながら、一人の男が数十枚ものA4コピー用紙の文書を流し読んでいた。


「異能者の無差別確保。しかも殺しても良いなんて変な条件まで付けてくるか……」


実に爽やかで透き通るような音は、誰に聞かすでもない単なる独り言だった。


2、3ページは彼の言うようなバカげた内容の文字列が並ぶ紙切れで、それからは現在確認されている異能者のリストになっている。

そんなあきらかに国家機密レベルの文書をペラペラとめくっていき、男は最後のページにあった自分の名前を見て動きを止めた。


栗原亮平(くりはらりょうへい)』。

もちろん偽名らしい。


「う~ん、なるほど」


そういうと栗原は、今まで読んでいたそれをソファの座っている横に放り投げ置いた。


すると、


「おいおい、大切に扱えっての!そんな紙切れ入手するだけでどんだけ時間かけてると思ってんだよ」


もう一つ男の声がする。こっちは栗原とは違って荒っぽい口調だ。


が、姿は見えない。


いや、それ以前にこの空間自体少し変わっていた。

どこかのマンションの一室の様だが家具らしい家具は置いてなく、あってもせいぜい栗原の座っているソファぐらいな物で、見渡せば白塗りの壁しか目に入ってこないような場所。しかも、2時という時間にも関わらず照明すら付いていない薄暗い状態だ。


「これでも感謝はしているさ、ご苦労様♪」


栗原は誰もいない虚空に対して、ムカついてくる程に爽やかな声をかける。

すると、『納得いかねぇ』と不貞腐れた声がやはり誰もいない虚空から聞こえた。


「おっと、そうだった。いろいろ調べまわった結果、良い知らせと悪い知らせがあるんだがどっちから先に聞きたい?」


声だけの男が問いかける。


「どっちでもいいんだけど、僕は晩ご飯の時は必ずハンバーグを最後まで残していく派だよ」

「……いちいち回りくどいんだよひねくれ野郎が」


要は良い知らせは最後に聞かせて欲しいとの事だろう。

理解するのに時間がかかったのか、返事が返ってくるのに若干の間があった。


「んじゃ、とりあえず悪い知らせから。そこにある異能者のリストは一部にすぎない。過激派の奴ら以外にも、異能を一度でも使用した奴は徹底的に調べあげられてる」

「へぇ~。すごいな、そんな規模の調査を一斉に行ったっていうのに、一般人にはその片鱗すら見せていないんだろ?まるで異能でも使ってるみたいじゃないか」

「そう、そこなんだよ」

「え?」


突然の切り返しに少し驚いた表情をみせる栗原。男の声はさっきより低いトーンで続けた。


警察側(あっち)にも異能者がいる。悪い知らせってのは、あいつらが異能者をつかって異能者を狩ろうとしてるって事なんだよ」

「なるほどね……」


一瞬、


栗原の顔から表情がなくなったかと思うと、すぐにニコッといつもの爽やかフェイスにかわる。


「異能者をもって異能者を狩る。その異能者もまた異能者狩りに使う。断った奴らは当然皆殺しってわけか」


随分と下衆なマネしてくれるじゃないかと吐き捨てて、口元に気味の悪い弧を浮かべる。

男曰く、異捜の話になると決まって表情が歪んでいくらしい。そこまで異捜に対して嫌悪感を抱いているのか、それとも……。


「で、良い知らせってのがーーーーーー」


気にせず男は続けた。


「ーーーまだ鍵の存在については気付かれてねぇみたいだ」

「それは好都合だね。より一層やる気が出るよ」

「それは、よかった」


栗原は腕時計を見て時間を確認する。


深夜2時38分。


「それじゃあ、『鍵』の捜索を急いでくれ。政府の犬共(かれら)よりも先に確保するんだ」

「りょ~かい」


声と同時に男の気配がなくなった。




「さぁーってと、」


栗原は体をねじってソファの上で横になて、ふぁ~っと大きく欠伸をした。


「僕はそろそろ寝るとしようか。明日からはもっと忙しくなるからね♪」


『忙しくなる』。


その言葉の本当の意味を知る者は、口にした本人を含めて1人としていなかった。




今、それぞれの正義がぶつかり合おうとしている。










東京異端審問 http://allegro.tudura.com/inou.html#q60 の世界観に、ちょっとオリジナル設定を加えて小説を書いてみたったー( ・´ー・`)


ってなわけで不定期更新だけど書いていくZE

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