万全の弟子、不安の師匠
おそらくここ以外で出てくることはない、懐かしのマニア外国人選手がチラホラ出てきます(笑)。
95年のメガバトルトーナメントは、久方ぶりにネットワーク内の選手だけが出場。ジャパン3、ロシア4、オランダ3、グルジア5、ブルガリア1の計16選手がエントリーした。
これまでよりも人数が少ない分、一回戦突破で翌年のランキング入りが確定するだけに、これまでなかなかそれに縁のなかった選手たちは大いに張り切った。ただ、大会自体は大きな波乱なく優勝候補がトントン拍子に勝ち上がっていった。過去3大会ではどこかしらで波乱が起きていただけに、語弊があるが特に一回戦に関しては拍子抜け感が否めなかった。
ただその中にあって前田日明はその4日前に肘の軟骨除去手術を受けての出場。リングドクターの安藤氏曰く「選手生活で最悪のコンディション」と漏らすほど。初戦のディック・フライ戦は蹴り足をとってのレッグロックで逆転勝ちしたものの、ダウンはとられ、タックルにキレはなく、フライがもう少し試合巧者ならば初戦敗退もあり得ていた。この幸運は二回戦も続いた。次はランキング一位のビターゼ・タリエルであったが、タリエルはインターバル中に出場した極心空手の世界大会で手を負傷し、得意の正拳や掌底を使えない。前田と同様、もしくはそれ以上に戦えない状態のタリエルを前田は労せずして仕留め、辛うじて準決勝に駒を進めた。
一方で愛弟子の山本宣久は磐石の戦いぶりだった。
一回戦でタリエルの弟ビターゼ・アミランを瞬殺すると、二回戦では先輩の長井満也と8カ月ぶりのリターンマッチ。互いに維持をぶつけ合う好勝負は「なんとしても頂点に立つ!」と決意する山本が、長井が一回戦で痛めていた膝を狙い打ったアキレス腱固めでリベンジ。安定した戦いぶりで準決勝に進出した。
そして前年覇者のヴォルク・ハン、躍進目覚ましいハンス・ナイマンも期待通りの勝ちっぷり。ハンは一回戦で格下ピーター・ウラの腕をひしぎ、二回戦でライバルのアンドレィ・コピィロフの膝を固めた。ナイマンは約2年間欠場していたグルジアのブザリアシビリ・ラマジをラッシュで追い詰めて戦意を奪い、二回戦ではニコライ・ズーエフを破って赤丸急上昇のイリューヒン・ミーシャを関節をとられるかわりにボコりにボコってTKO。ベスト4は去年と同じ面子になり、山本はハン、前田はナイマンと戦うことになった。