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餓えた狼

日本のマットに旋風を巻き起こし、リングスで確固たる地位を築いているヴォルク・ハン。

ところが、過去2度のトーナメントでは、表彰台どころか、ベスト8すらない。


これは、ハンが勝負弱いのではなく、つくづく相手に恵まれていないからだ。


前々回は1回戦でいきなり前田とぶつかりKO負け。前回は2回戦で苦手ズーエフに惜敗。

勝利に対して誰よりも貪欲なハンにとって、今回のトーナメントは優勝しか頭になかった。

トーナメント直前のランキングが2位だったため、1位の前田とともに1、2回戦を免除された。優勝する上で有利な条件が揃う中、3回戦の有明を前に福岡のメインイベントで、ライバルのコピィロフと相まみえたのだが、結果はアームロックで逆転負けを喫し出鼻をくじかれた恰好となった。


しかし、コピィロフへの敗北は、ハンにとっていい方向に働いた。ハン自身この試合を、自分のコンディションのチェックとしており、なにより精神的にリフレッシュ出来たことで、トーナメントは悠々と決勝に駒を進めた。


そして迎えた前田との決勝戦。


両者コンディションは万全なのか、試合前のWOWOWのインタビューでは笑顔を見せていた。

前田は気力が漲っているからか、「俺がハンに勝てないのは、ロシア語ぐらいだよ」とジョークを飛ばした。


一方、ハンも笑顔で答えていたが、不気味な言葉を残した。


「膝を狙うときがきたら、ゴメンナサイだね」




試合が始まった。

試合前の二人がそのままリングでも暴れた。互角の展開が続くが、前田がポイントで優位に立ち、ダウンも奪う。

だが、試合が9分を回った頃、ハンが勝つための戦いを始める。露骨に前田の膝を狙いはじめたのだ。


絶叫する前田。ロープエスケープで逃げるが、明らかにダメージは大きい。手術し、回復したと入っても完治したわけではない。ひざ固めの集中砲火は前田を追い込んでいく。


そして14分ごろ、ハンはついに前田を追い詰める。武道館全体で前田コールが沸き起こる中、懸命にひざ固めに耐える前田。だが、痛みが我慢の限界に達したとき、苦痛の表情をうかべながら必死にタップしていた。


勝利の決まった瞬間、ハンは歓喜のバンザイ。そのまま仰向けに倒れた。



「戦場の狼」の、優勝への執念が実った瞬間だった。



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