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第二話





 昨日のことを迷ったけど家族に話したらとても心配されて、できるだけ一人にならないと約束し、防犯ブザーやなんやら持たされた。

 たくさん心配かけちゃったから、自分自身もいつも以上に注意する。

 そう改めて決意し、家のドアを開けたら目の前に葉山くんが。


 「おはよ」

 「えっ、おっおはよう」

 「途中まで一緒に行こう」

 「えっあっう、うん」


 想像していなかった光景にしどろもどろになりながら反射的に頷いてしまう。


 「昨日あの後寝れた?」

 「うん、大丈夫。昨日は本当に助かった。家族も葉山くんに感謝してたよ。本当にありがとう」

 「無事で本当によかったよ。でも暫くは不安だろうからいつも以上に注意しといて」

 「うん。ありがとう」


 もう何年も大して話してなかったけど、やっぱり葉山くんは優しい。

 電車の中もまだお互いぎこちなさは残っているけど、葉山くんが話しかけてくれる。

 駅について千佳と合流するから、葉山くんとは駅でお別れ。

 「何かあったらすぐ連絡!」と散々言うので、何かあったら連絡すると約束した。

 千佳と合流して、昨日の話をしたらきっと千佳は自分のこと責めるかもしれないと思ったけど、千佳にも危険があったら大変だから正直に話した。

 実際どこからつけられていたかなんて、わからないから。

 そしたらものすごく謝られて、お互いできるだけ一人にならないよう、気をつけようと誓った。

 


 授業が終わり、駅まで歩き始めていたとき


 「星名!」


 急に名前を呼ばれてビクッと振り返ると


 「葉山くん?!」


 走ってこっちにやってくる。

 息を切らしてきた葉山くんは私の前で止まり

 

 「迎えに行くから待っててって連絡したんだけど、スマホ見なかった?」

 「ごめん、見てなかった。わざわざここまで来てくれたの?」

 「うん。間に合ってよかった。暫くは帰りも一緒に帰ろう」


 思いっきり走ってきたのだろう。

 若干汗をかいていて、息が少し上がってる。

 

 「えっいやそこまでは。そこまで葉山くんにしてもらうのは悪いし、私は大丈夫だよ?」

 「俺がしたくてしてることだから。それとも嫌? 嫌なら考えるけど」

 「っ、嫌じゃないけど、」

 「なら暫くは一緒に登下校しよう」


 少しぶっきらぼうだけど、優しいところは変わらない。

 気づいたら無意識に頷いていた。

 申し訳無さでいっぱいなのに、嬉しさが湧いてくる気持ちはどうしても消せない。

 一緒に歩いていた友達はニヤニヤし、「教室に忘れ物しちゃった!」となんともベタなことを言うから、顔から火が出そうで。

 葉山くんまで「邪魔しちゃってごめんね、ありがとう」とわざわざ友達に言うからもうキャパオーバーになりそう。

 明日いろいろと聞かれるのが、ものすごく怖い。

 心なしか少し嬉しそうにしている葉山くんを横目で見て、羨ましく思うしかなかった。


 

 それから暫くは葉山くんと一緒に登下校をしてもらっている。

 家族も葉山くんと登下校していることを伝えると、少し安堵してくれた。

 最初は怖くて仕方なかったけど、あれから全然不審者に会うこともなく、平穏な日々が続いている。

 このままでいいのかな……そう何度も考えるけど、一緒に過ごす時間が嬉しくてどうしても甘えてしまう。

 こんな感情なんてもう持ちたくなかったのに。

 持ちたくないから逃げたのに。

 たまたま遭遇しただけで、葉山くんは一応幼馴染の私を気を遣っているだけで、優しさに漬け込もうとしている私は最低だ。

 いつまでも葉山くんにお世話になっているわけにはいかない。

 いつまでも甘えてちゃいけない。

 彼女でもなんでもないんだから。

 なんのために葉山くんから逃げたのかを思い出して。

 だからもうそろそろ葉山くんとの今の関係を解消しよう。


 


 いつも通り葉山くんが迎えに来て、一緒に帰っている途中、私は意を決して


 「あのね、あれから随分経つけどもう不審者には出くわさないから、その、そろそろお互い前みたいに別々に登下校しない?たくさん葉山くんに助けてもらったことすごく感謝してるの。でもいつまでも葉山くんの時間を私に使わせるのは申し訳なくて、本当に今までありがとう」


 言い切った。

 カバンの紐を強く握るからしわくちゃだ。

 ドキドキしながら待つ。

 (あれ……?反応なし?もしかして聞こえてない?)

 何も言わない葉山くんのことが気になって、葉山くんの方へゆっくり振り向くと──

 (……? フリーズしてる?)


 「あの、葉山くん……?」


 ハッとした葉山くんは


 「そっそうだよな。気づかなくてごめん」  

 「全然葉山くんが謝ることじゃないよ!寧ろ私がごめんだよ。本当に今までありがとう」 


 私は今できる精一杯の笑顔でお礼を言う。

 これで今日を持って一緒に登下校することは終わりに。

 葉山くんがどんな風に私の背中を見つめていたかは知らない。

 傷つくのが怖いから目を背けた。

 これは葉山くんと私の平穏な日常のため。

 彼氏でもないのに毎回一緒に登下校してるのは、周りに彼氏なの?いい感じなの?と恋愛を絡めて聞かれ、毎回違うよ!って言うけど、なんだか周りは納得していない感じで。

 私たちが恋愛に発展することなんてないんだから、葉山くんのためにも周りに変な誤解はしてほしくない。

 次の日から葉山くんとは別々に登下校。

 朝電車のホームで会うと挨拶はするけど、それだけ。本当にそれだけ。

 これでよかったの。よかったんだよ。

 そう自分に何度も言い聞かせた。

 

 ──切なそうにこちら見つめる葉山くんに、私は気づかなかった。




 


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