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王妃教育の謎 ~謎を解いたら王朝が終焉しました~  作者: 柚屋志宇
第1章 王妃教育の謎

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04話 王妃教育の真実

(ガイヤール辺境伯領のブルーベリーは、つい最近の王妃教育で、王妃様に提出した課題だわ。実際にガイヤール辺境伯を招いた晩餐会が行われていたの?)


 モヤモヤしながら、私は言いました。


「ガイヤール辺境伯領のブルーベリーを知っているかどうかは、聡明さとは、関係がない話ではありませんか?」

「我が家は軍事で期待されておりますので、農業開発についてはあまり知られておりません。ですが王妃様はご存知でいらっしゃった。王妃様はとてもご聡明なお方です」


 ガイヤール辺境伯令嬢ブランシュ様のその言葉に、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様は満足そうに頷きながら相槌を打ちました。


「ブランシュ様のおっしゃるとおりですわ。王妃様は本当に地域のことをよくご存知で、お心を砕いてくださっている。聡明なお方です。ルシアン殿下も王妃様の聡明さを受け継いでいらっしゃるわ」


 はて?

 学院の成績が転落しつづけているルシアン殿下が、ご聡明?


「ルシアン殿下のご聡明さは、学院の成績には反映されていらっしゃらないようですが?」


「学院の成績など問題ではありませんわ。ルシアン殿下は政治がお出来になるのですもの!」

「まあ、政治が?」

「フェリシア様はルシアン殿下のご婚約者だというのに、ルシアン殿下のご功績をご存知ありませんの?」


 私は勉強にばかり時間をとられているので、世事には疎いのです。


「ええ、存じません。ぜひ教えていただきたいわ」

「ルシアン殿下は、我がラルベル公爵領を救ってくださったのです。水害で大打撃を受けた我が領に、国家事業として、国費による堤防の建設をご提案くださったのです!」


 水害のあったラルベル公爵領に、堤防の建設を国費で援助……。

 先月、私が、王妃教育の課題で提出しましたわね……。


「水害で職を失った領民たちも救われました!」

「領民が、堤防建設の作業員として雇用されたのね?」

「そうです!」


「……」


 王妃様とルシアン殿下の、聡明の理由が……。

 私が王妃教育で提出した課題に、似すぎているのですが……。


「ガイヤール辺境伯領のブルーベリーの品種改良も、ラルベル公爵領の復興案も、私が王妃教育で提出したものと全く同じですわ」


「王妃教育でお知りになったの? それなら王妃様のご聡明さはご存知なのではなくて?」

「いいえ、王妃様からは何も教わっておりません。王妃教育では課題が出題されるだけです。回答は私が考えたものです」

「ご自分も、王妃様やルシアン殿下と同じことを考えたとおっしゃりたいの?」


「いえ、元は私が考えたもので、それを王妃様とルシアン殿下が流用なさっている気がするのです……」


 私がそう言うと、ラルベル公爵令嬢セリーヌ様とガイヤール辺境伯令嬢ブランシュ様は、ますます眉をつり上げて怒気を露わにしました。


「王妃様とルシアン殿下の手柄に便乗するなんて、虚栄心が強すぎてよ!」

「後からなら、いくらでも言えますものね!」


 セリーヌ様とブランシュ様が私をそう糾弾していると。

 一人の男子生徒が、足早にこちらに近付いて来ました。


「セリーヌ嬢、何を騒いでいるんです」


 ヴェルニエ公爵令息ユベール様です。

 私の記憶が正しければ、セリーヌ様のご婚約者です。


「フェリシア嬢、セリーヌ嬢が無礼を働いたようで申し訳ありません。どうか許してやってください」


 ユベール様は、私にそう謝罪しました。

 セリーヌ様の行いを謝罪なさるのですから、やはりお二人はご婚約者同士ですよね?


「無礼なのはフェリシア様です!」


 セリーヌ様はそう声を上げ、ユベール様につっかかりました。


「王妃様とルシアン殿下に対して、フェリシア様が不敬を働いているのです!」

「セリーヌ嬢、フェリシア嬢に無礼な事を言うのはやめたまえ」


 ユベール様は眉をひそめて、セリーヌ様を窘めました。


 でも、不敬ですって。

 それ何だか、良い感じですわね。


 もっと言えば、不敬で、婚約破棄できるかしら?


「王妃様とルシアン殿下は、私の案を流用なさっているのです!」


 私が念を押すようにそう言うと、セリーヌ様はキッと鋭い視線で私を睨みつけました。


「不敬ですわ!」


 セリーヌ様は淑女らしからぬ金切声を上げ、まくしたてはじめました。


「ルシアン殿下はご聡明でご立派なお方です! フェリシア様のような不出来なご令嬢には勿体ないお方です! ご自分の成績が芳しくないからといって、ルシアン殿下の功績を盗もうとなさるなんて浅ましいですわ! ご自分の力でお勉強なさってくださいませ!」


「セリーヌ嬢、いい加減にしたまえ……!」


 ユベール様は不愉快そうにそう言うと、私とセリーヌ様との間に入りました。

 そしてユベール様は私を背にして、セリーヌ様を追い込むように前に出て移動を促しました。


「セリーヌ嬢、あちらで少し話をしよう」

「退いてよ! 悪いのはフェリシア様よ!」


 喚いているセリーヌ様を無視して、ユベール様は背にしている私を振り向くと言いました。


「フェリシア嬢、申し訳ありません。謝罪は後日改めて」


(この場から離れろということね)


「解りました。では、ごきげんよう」


 私はユベール様のご厚意に甘えて、その場を離れました。

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