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王妃教育の謎から始まる溺愛 ~ 王子と婚約破棄?大歓迎です!  作者: 柚屋志宇
第2章 婚約者の溺愛

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17話 ガイヤール辺境伯の疑惑

「フェリシア嬢、授業が終わったら今日も図書室で勉強会をしますか? それともカフェに行きますか?」

「ユベール様が一緒ならどちらでも」


 その日も学院で、私がユベール様とじゃれあっていると……。


「恐れ入ります、フェリシア様」

「あら、ブランシュ様、ごきげんよう」


 深刻そうなお顔をしたガイヤール辺境伯令嬢ブランシュ様がいらっしゃいました。


「フェリシア様、お願いがあります」

「まあ、何かしら?」


 私は笑顔で答えました。


「ブランシュ様は、私とルシアン王子の婚約破棄を後押ししてくださった恩人ですもの。遠慮なくおっしゃって」


「……そ、そのことは、心より申し訳なく思っております……」


 どうやらブランシュ様は、私の言葉を皮肉と受け取っていらっしゃるようです。

 私は誤解を解くために説明をしました。


「私はルシアン殿下と婚約破棄したかったのです。だからブランシュ様には本当に心から感謝をしているのよ。ブランシュ様が後押ししてくださったおかげで、無事に婚約破棄できて、今では……」


 私はちらりとユベール様を見ました。

 ユベール様がにっこりと笑顔を返してくださいました。


「こうして、ユベール様と婚約できたのですもの」


 私は気恥ずかしさにモジモジしながら、そう説明したのですが、ブランシュ様はますます顔色を悪くなさいました。


「申し訳ございませんでした。お許しください……」


「ブランシュ様が謝罪する必要はありませんことよ。それよりブランシュ様のお願いって何かしら?」

「はい……、あの……」


 ブランシュ様は俯いたままで、おずおずと言いました。


「我が領のブルーベリーのことです……。王妃様がフリアデル王国の特使様に、晩餐会で、我が領のブルーベリーを宣伝してくださって、それで……」


 ああ、あの件ですか。


 作法上、薦められたら拒否ができない晩餐会という場で。

 王妃様は、フリアデル王国の特使様に、事実上の押し売りをしました。

 押し売りをした品物は、ガイヤール産ブルーベリーです。


 王妃様による王妃教育の課題で、私はガイヤール産ブルーベリーについて書いていました。

 王妃様が一番間近に読んだレポートが、そのレポートだったので、王妃様はガイヤール産ブルーベリーを覚えていて話題に出したのでしょう。


 要は、二番煎じです。

 ガイヤール辺境伯をもてなす晩餐会で出したブルーベリーの話題を、王妃様は使い回したのです。


 ですが、二番煎じをやったのが、フリアデル王国の特使様をもてなす晩餐会だったので問題になりました。

 外国に、我が国の特産品を買ってもらうことは、貿易問題になるからです。


 国内の貴族しかいない場だったなら、貴族たちより立場が上である王妃という地位を使って、失態を収めることができたかもしれませんが。

 外国の特使には通用しません。


 それだけでも大失態でしたが、その失態にはさらに副作用がありました。

 ガイヤール辺境伯が、フリアデル王国にブルーベリーの輸出をしたくて、それで王妃様に頼んだのではないかと疑われました。


 直前に、ガイヤール辺境伯をもてなす晩餐会があって、そこで王妃様がガイヤール産ブルーベリーを褒めたことも、何か裏取引があってのことだったのではないかと遡って疑われました。


 少なくとも外務を担う外務卿は、ガイヤール辺境伯に疑惑を持っているようです。


「それで、我が家が疑われているのです。王妃様に賄賂を贈ったのではないかと。フェリシア様、何とかならないでしょうか」


「何とかって……。噂を払拭なさりたいという意味かしら?」


「そうです。王妃様に我が領のブルーベリーを教えたのはフェリシア様なのですよね。王妃様のお言葉は、フェリシア様が書かれた台本だということを、皆様に知らせて欲しいのです」


「フリアデル王国の特使様をおもてなしする晩餐会については、私は関与していなくてよ。あの晩餐会での王妃様のお言葉は、王妃様ご自身のものよ」


「で、でも、我が領のブルーベリーのことを王妃様にお教えしたのはフェリシア様なのですよね。そのことをもっと大勢の人に広まるように言っていただけませんか。フェリシア様が王妃様に教えたことだと解れば、我が家と王妃様が裏取引したことではないと皆さん理解してくださると思うのです」


「それは王妃様にお願いすべきことではないかしら?」


 ブランシュ様は恩人ですので、出来ることならお力になって差し上げたいです。

 しかし私にも、出来ることと出来ないことがあります。


「私はモンフォール公爵の娘でしかありませんので、貴族の皆様に意見できる立場ではありませんわ。ブランシュ様も貴族の娘の立場をお解りでしょう。私などより、王妃様にお願いすべきことです」


「そこを何とか……」


「そもそも娘の立場では、宮廷の行事には招待されませんので、貴族の皆様にお会いする機会もありませんわ」


 私がそう説明すると、ブランシュ様は黙ってしまいました。


「ガイヤール辺境伯令嬢……」


 私の隣で話を聞いていたユベール様が、ブランシュ様に言いました。


「貴女は以前、フェリシア嬢の言うことを信じずに、王妃様をご聡明だと賞賛していらっしゃいましたよね」


「あ、あのときは……申し訳ありませんでした」


「謝罪を求めているのではありません。ガイヤール辺境伯令嬢がご自身で、王妃様はご聡明だと喧伝して、ブルーベリーの件も王妃様の言葉だと主張していらっしゃったでしょう」


「はい。大変失礼をいたしました……」


「ご自身が間違ったことを宣伝しておきながら、フェリシア嬢にその後始末を頼むというのは、あまりにも傲慢なのではりませんか?」


 ユベール様は厳しい表情でブランシュ様に言いました。


「まずはご自身が主張した間違いを、皆に訂正するところから始められてはいかがでしょう。王妃様がご聡明ではないことや、王妃様がフェリシア嬢の案を流用していたことを、ご自身が皆に説明すれば良いでしょう」


「そ、そんな……」


「ご自身が出来ないことをフェリシア嬢に頼むのは卑怯です」


 ユベール様の言葉に、ブランシュ様は悲愴なお顔をなさいました。


 ブランシュ様は、あの王妃様をご聡明だと称えていらっしゃいましたが。

 王妃様のやらかしでお家が苦しい立場に追いやられているというのに、ブランシュ様はまだ王妃様のことを尊敬していらっしゃるのでしょうか。

 変わったご趣味です。


「ブランシュ様はよほど王妃様を崇拝していらっしゃるのね……」


 私は残念な気持ちになりながらブランシュ様に言いました。


「私にはブランシュ様のご趣味は理解できません……」


「別に、趣味では……」


「崇拝する王妃様に言いにくいのであれば、ルシアン殿下にお願いしてみてはいかがかしら。ルシアン殿下は王太子ですから貴族の皆様に意見できます。ブランシュ様と仲良しのセリーヌ様は、ルシアン殿下と仲睦まじくていらっしゃるから、セリーヌ様に協力していただいたら上手くいくのではなくて?」


 思い付きですが、我ながら名案です。


「はい……。ありがとうございます……」


 ブランシュ様はそうお返事をなさると、去って行きました。

 成功をお祈りしております。

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