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洒落込む3人と、1人の下僕 side ユリアーナ

 アルは、初めて会った時から何を考えているのか分からない大人だったんだ。

まぁ、最近は少し分かるようになったけどな!


でも、父さんや母さん、村の大人ほどじゃない。


だから、今のアルが何をしたいのかが分かんない。


「ユリアーナ」


「何?」


「なんで服屋? まぁ、ヒルバルに行くなら少しは身綺麗にしとかないとなぁ」


ミーセスおじさんは慣れてるのかな?

いろいろ触って体に合わせてるけどさ……僕はこんなに綺麗な布、見たことも触ったこともないから、触っちゃいけない気分なのに。


「分かんない。アルが突然『ここに入るぞ』って」


「ふーん」


お店の中はとっても綺麗だから、僕たち四人はまるで似合ってない。

ちょっと恥ずかしくて、僕はミーセスおじさんの背後をついて回った。


「ユリアーナ」


声をかけてきたアルの手には、たくさんの服がある。

あんなに買うのか⁉︎

そんなお金あるなら、お菓子買ってくれよ!


「……何?」


「これを着てみろ」


「えぇ……」


僕が触ったら汚れそうで触りたくないのに、これ着ろって言うのか⁉︎


そんなふうに思っていたら、お店の人が布で仕切られた部屋に僕を連れて行ってくれた。


「お兄さん、僕……着たくないよ」


「え?」


髪の長いお兄さんはアルを見たけど、アルは首を振っていて、『着ろ』って怖い顔するから……僕はお兄さんが可哀想になっちゃったよ。


「……これ、どうやって着たらいいの?」


「あ、うん。まず着てる服を脱ごうか?」


お兄さんに服を脱ぐのを手伝ってもらった。

僕は気にしないけど、女だって分かったお兄さんは慌てて部屋の布を閉めてしまった。


「お、女の子じゃないですかっ!」


「そうだが」


「いやっ、そうだが!じゃないですよっ! 女の子なんですよ⁉︎ こんな、男の子みたいな格好させるなんて! しかも私に着替えをさせるなんて、可哀想じゃないですかっ! それにっ、皆さん何なんですかっ!」


急に怒り出したお兄さんに、僕は布の隙間から顔を出してみたけど、みんな訳が分からないって顔をしていて、僕も分かんないから、きっと同じ顔をしてたと思う。


「……私に、すべて、お任せくださいますか?」


アルとどっこいなくらい怖い顔のお兄さんに、僕たちは頷くしかなかったんだ。だって、すっごく怖かったんだもん!


で、僕たちはお兄さんの人形になったんだ。



「素晴らしいっ! よくお似合いですよっ!」


僕たちはみんな四着も五着も服を着た。

すっごく疲れたけど、僕はとっても嬉しかった!

だって、アルがとっても格好いいんだもん!


真っ白なシャツに後ろが長いローブみたいな上着、それに普段のゆるゆる・ぴらぴらしたズボンじゃなくて、ピタッとしたズボン。

それに少し先が尖った革靴が素敵だっ!


あと、いつもいろいろな物がぶら下がってる皮のベルトじゃなくて、ピカピカの留め具が付いたベルトや、袖をまくって留める小さなベルトも格好いい!


「アルじゃないみたいだっ! 格好いい!」


「……そうか」


アルも嬉しそうだ! んふふっ!

頭撫でてくれるのも増えて、僕も嬉しい!


「ユリアーナちゃーん、俺は?」


ミーセスのおじさんは……うん。なんかアバルトお兄ちゃんみたいなんだけど……なんだろう。

象牙色の上着に濃い青色の薄いセーター……似合ってるけど、似合ってない。


「んー……ミーセスのおじさんはもっと……カチってした服が似合うと思う……なんか女の人が……騙されそうで可哀想」


「「ぶっ‼︎」」


アルとラディが笑ってたけど、ラディ……ラディッツもなかなか酷いと思うんだけどな。


「ラディも……なんか……ふわふわしてるね。その真っ白な織物ってポンチョ? 上着? なんかお花の柄がいっぱい……」


「これは花々を刺繍したレース生地のローブですよ。ラディッツ様は妖艶な雰囲気をお持ちですが、お顔立ちは幼顔でいらっしゃるので、明るく柔らかな装いがよろしいかと」


お兄さんの説明は、分かるようで分かんない。

だって何度も殴られて喜ぶ変態なんだよ?

なんか教会とか神殿にあるような天使の像が着てそうだからさ、ゾワゾワしちゃうよ。


「奴隷に服は必要ない……」


アル……まだ機嫌悪いなぁ。

確かにね、嫌なこといっぱいしたのに……ごめんってしたからって、全部は許せないよな。


「アルベルトォー! 俺可愛いだろ? ご主人様と一緒に可愛がってくれよーー!」


あぁーあ。

これ、殴られるぞ……ほら、やっぱりな。


「でも、いちばんはユリアーナだなぁ! 可愛いぞーー!」


僕はなんだか……足元がスースーして嫌だ。


「よくお似合いですよ! ヒルバルで流行っている白のボンボンスリーブのシャツワンピースに、フリルの付いたレイヤードエプロンスカート! この水色の生地が軽やかでいて、裾のブラウンが締め色で素敵でしょう?」


リボンやポンポンの付いた真っ白な靴下や、ピカピカの黒い靴。

全部が僕に似合うとは思えないんだけど。


「髪も、前髪からサイドを編み込んでリボンのカチューシャ。本当にかわいいですよ!」


みんなウンウン言ってるけど……僕はこれ……買わないからなっ!



「皆様、お洒落でございますよ!」


ニコニコ嬉しそうだなお兄さん……。

でも僕は、ズボンが履きたいよ。


「気に入らないか?」


そんな顔されたら「気に入らない」なんて言えないよ。

でも、僕が女だってバレていいのかな?


「女だってバレていいのか?」


「ヒルバルには女として入ろう。そして、お前はこれからずっと……女の子として生きていくんだ……もう、男の真似はしなくていい。するな」


なんでそんなに悲しい顔をするんだろう?

僕は仕方なく男の振りをしてたわけじゃないんだよ?

楽だったし、走ったり地べたに座っても怒られないし。


「お前は……これから大きくなる。そうしたら、男だと言っても通じない……だから、少しずつ慣れていけ」


そうか。僕は……大きくなったら街の女の人みたいになるのか。なれるかな?

僕はどんな大人になったって気にしないけど、アルは気にするのかな。


「……アルはこっちの僕のほうが好きか?」


「どんな姿でもお前はお前だ。だが、今のユリアーナはとても……か、可愛らしいと思うぞ」


なんでアルが恥ずかしそうなんだよっ!

僕のほうがもっと恥ずかしいんだぞ⁉︎


結局、大興奮したラディが全部買っちゃって。

アルは怒るし、ミーセスおじさんは追加でリボンとか靴とか買っちゃうしで大変だった。


お店を出て、僕は慣れないスカートでちょこちょことしか歩けなかった。


ひょい。


「?」


「ユリアーナ、これは俺からお前にだ」


僕を抱き上げたアルは嬉しそうで、手渡された袋の中を見たら、今着ているスカートの色違いがあった。


真っ赤なスカート。そして銀色のリボン帯。


「赤いスーリ(サンダル)に合うだろうか」


泣きそうになっちゃった。

本当はスカートなんて履きたくない。

でも、僕の宝物のスーリに似合う服は持ってない。

このスカートなら、僕の宝物がもっと素敵になるはずだ!


「アルッ‼︎ ありがとう!」




▶︎次話 またね、ごめんな、待っている

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