表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/79

ルシュケールの貨幣と換金 2


「こんにちわ」


高めの受付台に、用紙とレーク金貨の入った袋を置いたユリアーナ。その小さな手だけが台の上に現れ、受付の男性は驚いたように身を乗り出した。


「君が両替するのかな?」


あくまでも丁寧に、だが子供相手と柔らかな笑みを浮かべる男性。ユリアーナは緊張から顔をこわばらせていたが、強く頷いた。


「1人?」


「違うよ」


振り返り、指を指した方向にアルベルトとミーセスがいた。2人はじっとユリアーナを見ていて、男性はその姿におかしそうに笑いつつ会釈した。


「初めての両替かな?」


「う、うん!難しい?」


「大丈夫だよ。僕が教えてあげるからね」


「ありがとうお兄ちゃん!」


安心した様に笑うユリアーナ。だが、ユリアーナの言葉に、ミーセスとアルベルトはピクリと眉を動かし――次の瞬間、受付の男性の近くに無言でにじり寄った。


「頼むぜ、兄ちゃん。うちの子の初めてのお使いだ…ナメたマネしたら《リリク》が動くからな…暴かれたくねぇもんあるなら親切丁寧に、あくまでも客として扱えよ?」


「いいか、コイツはまだガキで男だ…変な目で見るなよ」


なんて過保護な親だろうか。

そう受付男性は苦笑いしつつ頷き、待合のソファに手を向けた。


「あちらでお待ちください、()()()()()()


「俺がお父様だ」「いや、お前は兄だろう」そんな事を言い合いながら2人は渋々移動する。その光景をユリアーナはポカンとして見ていた。



「優しいお父さんとお兄さんだね」


「ん?違うよ?2人とも父さんでも兄さんでもないよ?」


「え?」


冗談を真顔で返され、受付男性は一瞬言葉に詰まったが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。


「僕は今アルおじさんに商人の仕方を教わってるんだ。今はお金の事習ってるんだ」


「…そうか。あの2人から教わるなんて羨ましいね」


「2人の事知ってるの?」


「まぁ、()()と有名だからね。リリクのミーセス•ガラムハットさんに、元エッケルフェリアのアルベルトさんでしょ?まぁ、彼方は僕の事なんて知らないだろうけど」


何だかよく分からないけれど、あの人が羨ましがるほど、自分の保護者はすごい“有名人”らしい。

それがなんだか誇らしくて、ユリアーナは思わず笑った。


「君も、僕だったからいいけど…綺麗な顔をしているから、2人から絶対に離れたらだめだよ?この国は決して良い国ではないから…悲しいけどね」


「ありがとうお兄ちゃん。アルおじさんから僕はなれないよ」


「うん。—さ、両替してみようか」


「うん!」



 ルシュケールで使用されているのはルク貨幣。1聖金貨は700ルク金貨程度。そして1レーク金貨は364ルク金貨と小国ながら商人が集まり、両替商が数多く集まるこの地の換金レートは悪く無かった。


「どのお金に換えるか分かるかい?」


「んとね、レーク金貨をここのお金に換えたいんだ!」


「そっか。なら、今は季節変動で換金率がいいから…150レーク金貨はルク金貨55枚と銀貨70枚だね」


「……」


ユリアーナは分からない言葉ばかりな事にショックを受け、泣きそうな顔で男性を見つめた。それを見て、男性はさらに詳しく説明をしてくれた。


「詳しく聞くかい?」


「…… う゛ん゛っ…グスッ」


「泣かないで、大丈夫だよ。きっとお2人が分からなかったら何度でも教えてくれるよ…なら言葉からいこうか」


男性はアバルトと言う名だと教えてくれた。

そして、少し迷ったがユリアーナも名を教えた。


「ユリアーナ?女の子だったのか」


「…違うよ…逆さ名」


女だと言うべきなのか。

しかし、アルベルト達がそれを公言していない以上、言うわけにはいかないとユリアーナは目を伏せた。


「そっか。お父さん達は君を守りたかったんだね」


「……うん」


優しい人だとユリアーナは思った。けれど、アルベルトを見ていて、直感は決断の時に信じる物だと知った。故に真実を曝け出すのはアルベルトの判断に任せる。そうユリアーナは決めていた。


「…アバルトお兄ちゃん」


話を逸らす様にアバルトの書いた金額にユリアーナは眉を顰めた。


「ん?」


「何でお金…減っちゃうの?」


「減る?」


「だって150枚の金貨が55枚になっちゃったよ?」


「そうだね」


「この金額なら何もしなくても生きていけるって言ってたのに…55枚になったらどうしよう…アルおじさん困っちゃうよ」


「ふふっ、そうだなぁ。困っちゃうな」


「どうする?」


「どうしよっか?」


ユリアーナの反応が可愛らしく、アバルトはクスクスと笑うと頭を撫でた。それを見ていたアルベルトが近寄り、紙を取り上げた。


「季節変動か…換金率は?」


「レークが8%で1980、ルクが5%の735ですね」


「良いだろう。手数料は5%位か?」


「はい。ですが…アルベルトさんとお近付きになれるのでしたら4%は如何ですか?」


その言葉にアルベルトは訝しげな顔をしたが、アバルトの小指に嵌められた指輪の紋章に、中央特区、総合商会から派遣された人物である事を理解した。


「……借りは作らない主義だが…」


「ユリアーナ君のお勉強の為ですね?良いですよ…これは僕からのお小遣いです」


アルベルトはアバルトの撫でた跡に、「触れるな」とでも言いたげに手を滑らせ、頷いた


「では、今すぐ換金を?それとも、もう少しお勉強してからにします?」


「…ユリアーナには俺が教える」


「アルおじさんっ!僕、アバルトお兄ちゃんと勉強したいっ!」



ミーセスはその時の事を一生忘れないだろうと思った。

あのアルベルトが懇願する様に「何故だっ!」と叫んだからだ。






▶︎次話 ルシュケールの貨幣と換金 3






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ