表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/79

ルシュケールの貨幣と換金 1

 

 夜を駆け、星々をしるべに、灯りを目指して夜を駆ける幌馬車が砂丘を行く。そして明けが近付き、御者を担うミーセスを照らし始めた。


「ふーんふふーん、ふーん」


鼻歌が風に紛れて眠っていたユリアーナを起こした。


「オッサン」


「起きたか」


「隣座っていーい?」


「気をつけろ。馬を今は止めらんねぇからな」


御者台に這って上がるユリアーナ。その手には、お菓子がわりにと買ってもらったハーブを煮固めた物があった。


「ん」


「…セーブルキャスティか」


「?」


「草飴だ。食い過ぎると腹くだすからなぁ~1日2個で我慢しとけよ?」


「えぇー僕、もう2つ食べちゃったよ」


シュンとしたユリアーナに、ミーセスは上着のポケットから板状の物が入ったケースを取り出した。


「一枚食ってみろ。あ、食っても騒ぐなよ?アルベルトが起きっから」


「ん」


ワクワクしながらユリアーナはケースの蓋を開けて一枚舌の上に乗せた。


「‼︎‼︎‼︎」


「美味いか?」


ブンブンと頭を振るユリアーナにミーセスは笑う。

そしてタバコに火をつけ煙を吐き出した。


「噛むなよ。溶かして食うんだ」


「甘ーい!美味しいっ!これ何んだ?」


「バッガスロート」


「ばっがす、ろーと?」


「酒を作り終わると、酒の素になった花蜜と蜜蝋とか諸々溜まるんだよ。それを加熱して蜜を加えて飴にしたやつだな」


「お高い?金貨?」


「くくっ、いや。これは胃薬の代わりだ。1ケース聖銅貨2枚だ」


「お安いのか?」


「まぁな。子供でも好きな奴は駄賃持って買う程度だ。大人にゃ手軽な薬代わり、子供には贅沢品だな」


「そっかぁぁ!贅沢っ!」


張り付かない様に、まぶされた粉にまみれた指をユリアーナは嬉しそうにしゃぶる。その姿にミーセスは笑った。


「美味いか?」


「ん?さっきも美味いって言ったよ?」


「はっ!……そうだな」


子供が美味いとはしゃぐ姿に、喜びを知ったミーセスは、その後も事あるごとに『美味いか』と聞き、ついにはユリアーナに無視されてしまった。



 日が昇り、ルシュケールの関門間近になってアルベルトがミーセスに御者を代わると声を掛けた。


「……」


「寝てっからこのまま俺がやるよ」


ミーセスの膝枕ですやすやと眠るユリアーナ。それを目にしたアルベルトは似合わぬ事を言い出した。


「……俺が代わる」


「いや、止めらんねーんだからこのままでいいだろ」


しかし、アルベルトは御者台に乗り込むと、ユリアーナをさっと抱えて膝の上に抱いてミーセスから手綱を奪った。


「……まじかよ」


「何だ」


「……いーや。別に」


ミーセスは荷台に移りながらアルベルトをチラリと盗み見た。


まさか嫉妬?

あのアルベルトが、そんな感情を?

……いや、あいつは家族を、愛したものを後生大事にする男だった。



「……」


微かに目元が緩むアルベルトの姿に、何故かジワリと涙が込み上げた。そして幌を少し開けて目元を手で覆うミーセス。彼は初めて考える。


亡くなった自分の子供達は誰に愛を貰っていたのだろうか、いや、貰えていたのだろうかと。



 ユリアーナが目覚めると、既にルシュケールに到着していて、馬貸家の厩舎に仮泊めされていた。


「アルおじさん」


「何だ」


「何で僕を抱っこしてるんだ?」


「お前が膝の上で寝ていたからだ」


「……そうだっけ?確かオッサンと話してて」


「行くぞ」


話を遮る様に御者台から降りたアルベルト。そして荷物持ちをさせられているミーセスは笑いを噛み殺しながら、その後ろを着いてあるいた。


「ユリアーナ、両替をしてみるか」


突然の提案に、道に降ろされたユリアーナは首を傾げ答えた。


「レーク金貨をここのお金に変えるのか?」


「そうだ」


「やってみたい!」


 3人は関門近くの両替商に入った。

賑わう店内、色々な国の商人達にユリアーナは目を丸くした。


「わぁっ!見てよ、あの人肩に猿乗せてる!可愛いっ!」


「あれはヒルバルの商人だな。履いてんのはズボンじゃねぇぞ。大きな腰布を股下で交差させてそれっぽく見せてんだ」


「オッサン!よく知ってんな!」


「なぁ、そろそろさ、そのオッサン呼びやめねぇか?」


30だが、見た目年齢に自信があるミーセスはユリアーナにニコニコ笑って圧を掛けた。


「えー。でもオッサンがいい」


「そうだな。勘違い団長にはオッサンで良いだろう」


「ね!アルおじさん!」


「ちょっ!アルベルト!お前もおじさん呼びやめさせろや!」


アルベルトに必死な形相を見せるミーセス。そして、アルベルトも考え込んで一言。


「……そうだな」


何気に気にしているのか、嫌だったのか呼び名の変更をユリアーナに求めた。


「え″?…何、2人とも…いーじゃん別に」


「可愛くさー、ミーセスさん!とか、セスお兄ちゃん!とか言ってみ?俺は優しくするぜぇ?」


「やだよっ!街の女みたいに媚びてる感じでさっ!」


それが何故駄目なんだ。

そんな胡乱な目を2人はユリアーナに向けた。


「女心は分からんな」


「いや、女心じゃねーからな、アルベルト」


「もー!そんな事より両替!」


前を歩くユリアーナとミーセス。

アルベルトは2人を見守りつつ、周囲の目を警戒した。


「アルおじさんも早く!」


「…あぁ。今行く」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ