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トワの奏弦士  作者: 苫古。
◆第4章◆ 悪魔と魔法使いの演劇
37/57

* 咏 ***


 ――――信じられなかった。





 頬を染め、幸せそうに瞳を輝かせるあの子。


 そして、あの子が腕を絡め寄り添っているのは―――――彼。




 微笑んでくれたその瞳は伏せられ、髪を優しく梳いてくれた手は固く握られて。

 その声はもう、私の名を呼んではくれない。



「ラティカナが、あんまり泣いて可哀想だから」



 彼が好きだと、彼が欲しいと、あの子は父様と母様の前で涙を流した。

 どのみち、私たちのどちらでも良かったのだからと、父様は言った。



「お前は強い娘だから、大丈夫だね? レイファーナ」



 彼を見た。

 彼は俯いたまま、何も言ってくれない。

 私は、黙って頷いた。

 頷くことしか、出来なかった。



「姉さまは優しいから」



 あの子はそう言って、私を抱しめた。









 花々が狂い咲く、春の園。 


 彼が花をさしてくれたその場所で、私は赤い花を見つけた。

 花弁を捥ぐと、花の汁が指先を紅く汚した。



 ―――――私は、素直に涙を流せない子供だった。




 大人になってもそうだった。


 でも…………、







 私の頬を、涙が伝った―――――――――――。





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