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トワの奏弦士  作者: 苫古。
◆第3章◆ 月と涙と壊れた鳥籠
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31/57

* 迂汰 *** 

 姉さまは微笑っていた。


 今までに見たことがないほど、幸せそうに。

 花が咲くわと笑った、あの時よりも。




 姉さまが微笑みかけるのは、あの男。

 父さまが連れて来た、あの男。


「優しいおまえじゃ、かわいそうだから」


 そう、こっそりと。

 わたくしにそうい言って、父さまは姉さまに、あの男を引き合わせた。

 



 ―――姉さまを、わたくしから盗るものは嫌い。


 ―――姉さまの一番が、わたくしじゃないのは大嫌い。






 わたくしと姉さまは、同じだった。


 同じ顔、同じ髪。同じ瞳、同じ声。


 姉さまが微笑めば、わたくしも微笑む。

 姉さまが(うつむ)けば、わたくしも俯く。


 姉さまは、わたしくと同じ。


 少しだけ違ったのは、わたくしが妹で。

 少しだけ違ったのは、姉さまが姉さまで。


 違ったのは、わたくしの一番は姉さまで。

 姉さまの一番はわたくしじゃなくて。


 もう一つだけ違ったのは、父さまや母さまは、姉さまよりもわたくしの方に甘くて。





 ―――ねえ、姉さま。


 ほんとはわたくしより、姉さまの方が優しいってこと、わたくしだけは知っているの。




 ―――だから、ねえ、姉さま?


 姉さまは、きっとまた

 





 許してくれるわね?


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