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* 迂汰 ***
姉さまは微笑っていた。
今までに見たことがないほど、幸せそうに。
花が咲くわと笑った、あの時よりも。
姉さまが微笑みかけるのは、あの男。
父さまが連れて来た、あの男。
「優しいおまえじゃ、かわいそうだから」
そう、こっそりと。
わたくしにそうい言って、父さまは姉さまに、あの男を引き合わせた。
―――姉さまを、わたくしから盗るものは嫌い。
―――姉さまの一番が、わたくしじゃないのは大嫌い。
わたくしと姉さまは、同じだった。
同じ顔、同じ髪。同じ瞳、同じ声。
姉さまが微笑めば、わたくしも微笑む。
姉さまが俯けば、わたくしも俯く。
姉さまは、わたしくと同じ。
少しだけ違ったのは、わたくしが妹で。
少しだけ違ったのは、姉さまが姉さまで。
違ったのは、わたくしの一番は姉さまで。
姉さまの一番はわたくしじゃなくて。
もう一つだけ違ったのは、父さまや母さまは、姉さまよりもわたくしの方に甘くて。
―――ねえ、姉さま。
ほんとはわたくしより、姉さまの方が優しいってこと、わたくしだけは知っているの。
―――だから、ねえ、姉さま?
姉さまは、きっとまた
許してくれるわね?




