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* 謌 ***
華の季節に、私はウタウ。
美しい花のウタを、私はウタウ。
―――その花が、どんなに愛らしかったかを。
―――その花が、どんなふうに捥がれたかを。
―――その花が、どんなふうに腐っていったかを。
捥がれた花と、同じように。
腐っていった花弁と、同じように。
花を手折ったあの子の首を捥ぎ、腐り崩れゆく様を見守りましょう。
春の園で、私はウタウ。
花無き花に、日陰のウタを。
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マーセルは、自分が目を覚ましていることに気付き、震える肺で大きく息を吐き出した。
身を起こし、汗で濡れた夜着の胸元を握る。
「……また、なの?」