09. 沈黙の愚者
最近、ヒロインとヒーローの絡みがちっともございません。トホホイ。
今は物語の土台をせっせと積み上げているところですので、どうぞ、呆れずにお付き合いのほどを!!
「愚かしい」
辺りに漂う臭気に眉を顰め、少女はそう吐き捨てた。
暗い路地。夜の闇の中、人影が無い静まり返った狭い裏路地に、それは打ち捨てられていた。
こんな形になってから、三日程は経過しているだろう。もはやそれは、人形と例える事もままならぬほどに、元の型を失ってしまっている。
清らかなる地の片隅に放置された、穢れた骸。どうやら、聖地の番人は、庭の掃除すら出来ないらしい。
赤い衣裳に流れる金糸の髪。その天使のような容貌に似つかわしくない、暗く薄汚れた路地で、少女は嘲笑を浮かべた。
「ほんとうに、最後の最後まで醜いですわね、貴方」
もう一度そう呟き、彼女は雪のように白い腕を虚空へ伸ばす。
―――後に残る物は、消しておかねばならない。
「これじゃ、予備の『部品』にも使えませんもの」
少女の指先から、紅い光で描かれた、幾何学模様の紋様が零れた。繊細な光線で構成されたそれは、まるで空中に描かれた、一枚の立体的な絵画の様。
少女は、静寂の水面に触れるかのように、模様の中心に手を翳す。
「おいでませ」
金色の音と共に、円陣が弾けた。
同時に、腹に響くような低い振動が大気を揺らし、熱を伴う風が孤を描くように駆け抜ける。
目の前の屍を、一瞬で呑み込んだ紅蓮の炎。
少女の艶やかな金髪が、熱風に舞う。あっという間に燃え崩れていくその様を、硝子玉のような碧眼は、ただ冷淡に映した。
唐突に炎が消え失せ、生じた風が灰を巻き上げる。
それが霧散するのを見届けてから、少女は衣裳の裾を翻し、ゆっくりと歩き始めた。
路地から出るため、適当な出口を探す。しばらく歩くと、大通りに面した場所に出た。
何でも、もうすぐ大きな祭があるらしい。そのせいか街の人間に加え、他所からやって来た旅人たちが大勢、通りを行き交っている。夕食時の今、その人塵の密度は並ではない。
長い溜息を吐き、形の良い眉を顰める。
「まったく、イヤになりますわね」
あの人込みの中から、あの人を探すのは至難の業。それにこれ以上歩くと、靴が傷んでしまう。
お気に入りの黒い靴を見下ろしながら、少女はしばらく考え込んだ後、
「まあ、いいでしょう」
もし傷んでも、主人に新しいのを買わせればいいわと思い直し、少女は通りへ向き直った。
いつも読んで下さっている皆様! 初めての皆様!! ありがとうございますッ☆ 拙い文章をコッソリと書いてきた身の上としては、誰かが読んでくれているんだなぁと実感できることが、そこはかとなく感激ものです。
次の物語で、ようやく第1章も終了。
なんだか、すごーーーーーーーーく長い物語になりそうな予感、な本作ですが、呆れずにどうか云付き合いくださいますよう☆
ご意見・ご感想などがあれば、宜しくお願いいたします!




