夜の孤供
ご訪問ありがとうございます。
小説を書くのも、何方かに読んで頂くのも初めてで、何が何やらです。
稚拙な文章なりに気張っていきますので、楽しんで頂ければ幸いです☆
この文章を読んで下さる皆さまに、幾億の感謝を。
憐れんで欲しかったのでもなく、赦されたかったわけでもない。
ただ、分け与えて欲しかった。
ほんの、少しだけ。
頭上を仰いだ。
覆うように見下ろしてくるのは、闇色に塗りつぶされたの無数の影。取り囲むように居並ぶ、見知らぬ人間たちに戸惑いを見せることもなく、少年は視線を巡らせた。
最期に、自らの手元に視線を落とす。
――――目隠し。
幼い手にあるのは、つい先ほど解くことを許されたばかりの、白い布の目隠しだった。
「……こんなに……幼い子供が?」
影の一つが、重い静寂を破る。他の視線が、その影に集まる気配。だが、どの人影もそれに答えはしない。
少年は虚ろな目で、影らを見つめた。
長いとも思われる沈黙の後、痩せ細った首を傾けながら、問う。
「―――おじさんたちも、ころしにきたの?」
「なにを……」
「ころしたいから、ボクのところに来たんでしょう? みんなそうだから。いつも、みんな最期には、ボクをころしたがるんだよ。―――さっきの、おじさんの友達みたいにね」
「…………」
初めは優しげに差し伸べられる、大人たちの手。だが皆一様に、少年の力を目の当たりにした瞬間、微笑みの表情を恐怖、憎悪へと変える。
彼の頭を撫でた、その同じ手で振り下ろされる鈍色の刃を、幾度見上げてきただろう。
「だけど結局、誰もボクをころしてくれやしないんだ」
何度も、何度も、何度も、何度も、同じことの繰り返し。
いつも生き残り――――また、独りになる。
少年はもう一度、己の手を見つめた。
べっとりと赤く濡れた、乾ききっていないその手。
数え切れないほど自分を殴った男から、壊れるように溢れたこの液体は、主の怨念のように纏わりつき、こびり付いて剥がれない。
静かに差し込む冷たい月明かりの中、それは少年の手に握られた純白の目隠しをも、じわじわと侵してゆく。
「……お前は、死にたいのか?」
男の問いに、少年はわからないと、緩慢に首を振った。
少年の硝子玉のような夜の双眸は、此処にあるもの全てを吸うように深い。
遠く、過ぎ去ったものへ注がれるかのような視線。それは、子供であることを、〈世界〉に許されなかった者の目。
虫の音が響く。
痛いほどの沈黙に鳴る微かな虫の歌が、銀色に闇を震わせる。
男は、すっと手を差し出した。それに気付いた少年が、訝しげに眉を顰める。
「この手を取るか、取らぬかはお前の自由だ」
風が大気を撫でゆき、重く頭上を覆う黒雲を掻き乱した。
「取らぬのならば、私たちはお前を……お前に連なるものを、すべて消し去らねばならぬ。だが……」
遮られていた月光が、一気に辺りを照らし出した。影の差した男の顔が、青白い光に浮かぶ。
「お前がこの手を取るのなら、我等はお前に居場所を与えよう」
少年の目が見開かれる。
「―――お前に、生きる場所を」
「ボクに……」
唱えるように呟き、大きく開ききった目で、少年は男の差し出す手を見つめ―――……。
腕を、伸ばした。




