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ノアの星旅  作者: たか
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序章2

「大丈夫かい?」

ロバートが声をかけると、少女はビクッと身体を震わせ、涙目でこちらを見つめた。

「あの……助けてくださって、ありがとうございます……」

「君の名前は?」

アリシアが優しく問いかけると、少女は小さな声で答えた。

「ミラ、と申します」

「私はアリシア。こっちはロバートとジョーカーよ」

アリシアが自己紹介すると、ミラはコクンと頷いた。

「そういえば、ミラはどうしてこんな所にいたの?」

ロバートが尋ねると、ミラは泣きそうな表情で話し始めた。

「実は、私は科学者の助手をしていて、研究資料を運んでいました」


「でも、突然爆発があって……。

避難していたら、反応炉の起動音が聞こえてしまって止めようと……」

「それで、停止操作していたのね」

アリシアが同情的に言うと、ミラは首を振った。

「私が不注意だったせいで、もう少しで反応炉を止められていたのに……」

落ち込むミラに、ジョーカーが声をかける。

「お前さんが責任感強いのは分かったよ。だけど、自分を大事にしないとダメだ」

ジョーカーの言葉に、ロバートも頷いた。

「そうだな。それに、君の持ってきた資料が役立つかもしれない。是非協力してほしい」

「ありがとうございます! 私、精一杯頑張ります!」

ミラは笑顔で返事をした。

「あの、これ資料のデータです!」

「ありがとう、すぐに読み込ませるわ」

アリシアはそういいながら携帯端末にデータを読み込ませた。

「じゃあ、ノアの修復を始めるぞ。俺たちには時間がねえんだ」

ジョーカーが指示を出し、三人は行動を開始する。

「アリシア、お前は反応炉のチェックを頼む。ロバートは船内の調査だ。ミラは、持ってきた資料を整理してくれ」

「了解」

「分かりました」

三人は散らばり、各々の作業に取り掛かった。

アリシアは反応炉の前に立ち、ディスプレイを見つめる。

古く劣化したパネルが目に映るが、今はそんなことよりも修復作業だ。

(どうやって修復するかな……。必要な部品はあるかしら?)

アリシアはポケットから携帯端末を取り出した。

宇宙戦艦ノアの整備コンピューターと接続してあるので、破損状態が分かる。

(あった! 反応炉の一部が破損してるわ。代替品を探さなきゃ)

アリシアは手帳にメモを書き込むと、携帯端末を閉じた。次に、近くの倉庫へ向かうことにする。

倉庫内には様々な物資が置かれており、使えそうな部品が見つかるかもしれない。

期待に胸を膨らませながら、アリシアは倉庫の中を歩き回った。

「ねぇ、ロバート。何か変わったものは見つかった?」

無線機を通して、アリシアはロバートに声をかけた。

「今のところ、特に目立ったものは見つかっていないよ」

ロバートの返事を聞き、アリシアは落胆する。

予想以上に被害が大きく、必要な部品が全て失われている可能性が高い。

「……分かった。私は部品探しを続けるから、何かあったら連絡して」

「了解だよ」

無線機からはロバートの声が消えた。

アリシアは再び携帯端末を取り出し、修復方法を検討する。

他の部品を流用して、代替品を作成する案も考えた。

しかし、それでは根本的な解決には至らない。

やはり、必要な部品を見つけるしかない。

焦燥感に駆られる。バッテリーの容量は限られており、急がなければ手遅れになる。


ふと、視界の片隅に光る物体が映った。

近づいてみると、それは小さなカプセル状の物体だった。中には金属板が入っている。

「これは……?」


アリシアは持ち上げ、カプセルを開封した。

金属板を取り出し、ディスプレイにかざす。表面には何か文字が書かれていた。

『プロトタイプ 反応炉用触媒』

「触媒!」

アリシアは目を輝かせ、反応炉へと駆け寄った。早速、手に入れた触媒を使ってみようと思ったが、反応炉内部の状態を確認しなければならない。

(私一人じゃ無理ね。ミラを呼んできましょう)

アリシアは、無線機を取り出した。

「ミラ、聞こえる? 反応炉の中を見てほしいのだけど」

「はい、聞こえます。今どこにいますか?」

「反応炉よ。すぐそばにいるわ」

「了解です。今行きます」

通話が終わると同時に、足音が近づいてくる。やがて、ミラが現れた。

「どうしたんですか?」

「触媒が見つかったの。これを使って反応炉を直せるかもしれない」

アリシアはカプセルをミラに見せた。ミラもディスプレイにかざし、文字を読む。

「反応炉用触媒……これって、本物なんですか!?」

「分からないけど、可能性はあるわ。早速試してみましょう」

二人は手分けして準備を始める。触媒を反応炉へ挿入し、操作パネルに触媒の番号を打ち込んだ。スクリーンに表示されたエラーコードを確認し、何度も試行錯誤を繰り返す。

「ダメです、番号が違います」

「元の設定が違ってるのかもしれないわね」

「わかりました、私は制御プログラムを精査して見ます」

ミラは端末を操作し、プログラムを解析する。

一方のアリシアは、触媒交換口のネジを外そうと試みた。

だが、長い年月によって錆びついており、中々回らない。

「くっ……! 無理そうね」

焦燥感に苛まれるアリシアの目前で、ミラが叫んだ。画面上で何かに気付いたようだ。

「アリシアさん、ちょっとこっち来てください!」

呼ばれたアリシアが近寄ると、スクリーンを指した。

そこには、反応炉用触媒の取り扱いに関するデータが表示されていた。

「これ、本物です! 正確には、旧式の触媒ですけど、旧式の設定なら合うはずです!」

「ほんとう!?」

喜ぶアリシアだが、問題はもう一つ残っている。ネジが回らないのだ。

「あっ! そうだわ、レーザーカッターがあったじゃない!」

二人は急いでレーザーカッターを取りに行き、切断作業に移る。

ブーンという音を立てながら、金属同士が削れる鈍い音が響く。やがて、ネジは外れ、触媒交換口が開いた。

「これで準備完了ですね!」

「ええ、早速挿入するわよ」

再び二人は触媒を持ち、反応炉へと挿入した。

数分後、スクリーン上のエラーコードが消えた。成功したのだ。

「やったわ! 動いたわよミラ!」

アリシアは手を取り合って喜び合った。だが、まだ油断はできない。

反応炉が正常に稼働するかどうか、試運転が必要なのだ。

「触媒の効果が安定するまで、しばらくは様子見ね」

「はい、それでも本当に良かったです」

二人は笑顔で頷き合った。未知の宇宙でのサバイバル生活は始まったばかりだ。

しかし、希望を掴んだ二人に不安は無かった。



(※次回以降、試運転中に発生する事件などを描写予定)

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